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本雑綱目 73 落合淳思 甲骨文字に歴史をよむ

今回は落合淳思『甲骨文字に歴史をよむ』です。
ちくま新書。ISBN-13 ‏ : ‎978-4480064318。
NDC分類では222。歴史>中国。

これは乱数メーカーを用いて手元にある約5000冊の本から1冊を選んで読んでみる、ついでに小説に使えるかとか考えてみようという雑な企画です。

★図書分類順索引

1.読前印象

 古代中国が続きますね。持ってる冊数も多いので不思議ではないんだけど。
 甲骨文字は殷中期から周当初に現れる占いに用いられた甲骨(亀の甲羅や牛の肩甲骨)に刻まれた占いの内容を解説した文字ですが、いろいろな本を読んで年代によってフォントが違うのを最近知った。それはそれとして、僕が知りたいのは殷墟から発掘された紂王まわりの文献と、それより前の炎帝、黄帝、饕餮あたりのトーテム的な戦いの部分だ。書いてるといいな。
 表紙に殷末では占いの改ざんが行われていたと書いてある。このころは強固な呪術社会で、占いというのは当たらねばならないものだった。甲骨については想定のものが出るように骨の裏側に線を引いたりくぼみを作ったりしていたようだけど、占い自体をさかのぼって当てるには時期の改ざんが必要だろう。そして改ざんをするという行為自体が天の権威の凋落を示し、だからこそ易姓革命によって周という神ではなく人の世界になっていく、過程がとてもダイナミックだと思うやつ。
 とりあえず開いてみよう~。

2.目次と前書きチェック

 はじめにを読むと、甲骨文字はすでに漢字の原型であるのと、漢文より文の決まりが少なくて読みやすいと書いてある。これは案外その通りで、繁体字または日本語漢字にチェンジしたものがあれば半端な古典より読みやすいのは確かなのだ。問題は繁体字漢字にチェンジされてないことなんですけどね。
 綿引先生の甲骨辞典も持ってはいるんだけどさ、難易度高い。原型ってあくまで原型であって漢字とはちょっと遠いと思うよ……(例えば示す編は『示』のままだけど9割くらいはぱっと見違う。穴かんむりは門に見えるし)。あ、でも簡体字と比べれば、わからなさ加減はあんまりかわらないかもしれない。だから北京あたりの人が古典籍読むのって大変だろうなと思う。そんな中でこの本は、甲骨文字を読むための本だそうです。
 目次は『甲骨文字とはなにか』、『入門書 文字を読む』、『中級編 難しい文字を読む』、『文法編 甲骨文字の文章のしくみ』、『応用編 文章の解読』です。
 おおっと。歴史を読むではなく甲骨文字を読む本だった。いや、確かに原典に当たりたい僕としては甲骨文字は読みたい。けれど甲骨文字自体がまとまって存在しなくて、中国から研究資料として断片的に入っているイメージなので、そもそも訳されたものを読んだほうがいいのでは……費用対効果的に。
 くだを巻いても仕方がないので、歴史にかかわりのありそうな『甲骨文字とはなにか』と簡単そうな『入門書 文字を読む』を読むことにします。

3.中身

『甲骨文字とはなにか』について。
 殷墟の広さが藤原京と同じくらいってめっちゃわかりやすいな。そして現在でも雲南の少数民族では羊の肩甲骨での占卜が続いていて、トンパ文字等の独自の象形文字を用いているし、日本でも江戸時代や現代でも一部神社で行われているそうだ。
 政策や戦争についてはあらかじめ良い方向に誘導するよう改ざんし、天候等は問いかけの内容を改ざんして記した。なるほど。占いが当たったかどうかの結果を甲骨に刻むので、その時に日付と問いかけを変えればよいといわれれば確かに改ざん可能。是非を問うなら是と非を入れ替えればいいのか(戦争は良いかという問いを悪いかという風に変更)。
 発見当初は史記と甲骨文字の記述の間には一見矛盾はみあたらなかったが、細かく見ると名前等のズレがある。そのため史記の絶対視についてこの本は警鐘を鳴らしている。同様に説文解字についても同じ指摘がある。
 甲骨文字は現存最古の出土文字ではあるがすでに体系だっており、文字としては最古ではないという。僕が読んだ他の本でも、当時は甲骨以外にも竹簡もあったけどそれらは経年によって失われたとあった記憶がある。
 全体的に知っている知識は多かったけれど、なんか頭の中がすっきりした。

『入門書 文字を読む』について。
 甲骨文字の判別方法について、①文字の意味から辿る方法(字義解読)と②形から辿る方法(字形解読)がある。甲骨文字では意味と形状で変化の少ない方を採用するのが良い。この章は入門編に字形変化が少ないものを取り上げる。まあ、大とか田とか。
 多数は三にまとめられ、細長いものは一本線、特徴部分は拡大強調される。異体字は現代より殷代のほうが多いという説明から始まり、あとはクイズ形式。①の原型の形(象形文字)から推測したほうがいいものと②の現在の漢字の形から推測したほうがいいものがあるが、いずれにしても、これは見ればわかるというレベルのメタモルフォーゼじゃなくて、やはり語学としての学習が必要だと思える。
 左右の漢字のナは親指と小指の線と手の形を指し、親指と小指を指す線を先に書くので右ではノ、左は一からの書き順、というのは長年の疑問が解消された気分。

 全体的に、甲骨文字を学ぶのは漢字と象形という前後があるため、全く新しい言語を学ぶよりは簡単な気はしなくもない。パターンもあるし、きっと一度読み方を覚えれば連想しやすいので多の言語よりは習得は簡単なような気は、する。しかし甲骨文字はあくまで現在使われていない文字で、本邦を掘っても出てこないわけで、それなら中国で掘り出されたのを誰かに漢字を当ててもらった方が楽なような……? 発掘に行く人ならまだしも。
 小説に使えるかというと、使えない、なぁ。原典にあたるってこれじゃない感。1枚(単位?)ずつ読んでもそれは1つの占い結果なわけだし。

4.結び

 ガチめに『甲骨文字を読んでみよう!』で歴史の話はあまりなかった。そういえばヒエログリフの読み方の本ももってるんだけどさ、あっちはまんま絵文字なんだ。そう考えると合理化してある漢字って便利だなと思う。
 次回は海老沢有道『キリシタン南蛮文学入門』です。
 と思うのだけど、読書ストックが減ってきたので別のエッセイを投げ込むかもしれませんが、あしからず。
 ではまた明日! 多分!

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