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本雑綱目 68 大熊喜邦 江戸建築叢話

今回は大熊喜邦著『江戸建築叢話』です。
中公文庫、ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4122009943。
NDC分類では521、技術. 工学>日本の建築に分類しています。

これは乱数メーカーを用いて手元にある約5000冊の本から1冊を選んで読んでみる、ついでに小説に使えるかとか考えてみようという雑な企画です。

★図書分類順索引

1.読前印象
 江戸の建築は寺社仏閣や城郭等のいわゆる特殊建築を除き、火事に備えて壊しやすさが重視されていると聞いたことがある。江戸の火事対策、つまり消火は火を消すのではなく燃やすものをなくすことを優先とし、火が収まった後は焼けた規模にもよるけれど倒壊させた建物は一日で復元(組み立て)され、焼けた部分については例えば秋葉原周辺等が材木場になっていて予め木材のストックが有り、そこから運ばれて建築された、ような。
 銀座が大火で本格的な石造りの街としてプロモートされるのは明治時代なので、江戸というとやはり木造建築についてだろう。表紙をみると城っぽさが見えるけれど、とりあえず開いてみよう~。

2.目次と前書きチェック
 短い序を読めば、著者は建築に関する文が相当数あり、これをまとめた本であること、趣味的なものや論文めいたものが混ざっていて、新資料(といってもこの本の発刊が1983年だが)としての各種古図があると書かれている。
 目次は『江戸の三十六見附』で江戸城、『大岡越前守の南町奉行所』で町奉行、『江戸のマーケット』で江戸橋広小路市場、『江戸の四宿』で宿場町、『交通から見た街道の茶屋と休所』で各地の茶屋等、『東海の御関所』、『伊万里の陶器蔵屋敷と津和野の紙蔵屋敷』、『大阪南難波村百文銭吹立書』、『家作に関する物価労銀と店賃地代の抑制』、『日光東照宮の造営』になる。
 様々な種類の江戸時代の建物について分類されているようで興味深いが、主に小説の舞台となる民家等は含まれていないようだ。小説で使えそうな『江戸のマーケット』と『江戸の四宿』、特殊建築っぽい『伊万里の陶器蔵屋敷と津和野の紙蔵屋敷』と『家作に関する物価労銀と店賃地代の抑制』を読みます。

3.中身
『江戸のマーケット』について。
 明暦大火がきっかけに広小路に市場が作られた。江戸橋近辺にはたくさんの煮売屋(飲食店)があったり紀州からみかんを運ぶみかん小屋があったりするのは既にわかっていたが、新しい古地図でその配置や間口等も発見された。明暦大火を教訓として往来(道路)を広げて火除地や石積の土手蔵を設けて防火対策とした。
 淡々と市場の店の配置などが述べられている。自分があまり市場の業種に興味がないことに気がついたけど、市場を書くには良い資料と思う。

『江戸の四宿』について。
 東海・東山道の整備が行われ、参勤交代が定められてから宿駅はますます整頓された。四宿はそれぞれ風習に違いが有り、遊女や間口の広さ等に制限が加えられた。
 各宿wiki。各宿場について面積や人口、旅籠屋や水茶屋等の店舗の種類と数等が記載されている。

『伊万里の陶器蔵屋敷と津和野の紙蔵屋敷』について。
 消費的な江戸と商売的な大阪では物資の集積についての考え方が異なる。
 陶器蔵屋敷も紙蔵屋敷も屋敷自体の構造についてではなく、筆者が有した配置図に基づく考察で、桟橋がかけられているとか戸前の数が少ないとか外形的な説明。現物の説明であり、特に建材の話とか防火等の工夫の話はない。

『家作に関する物価労銀と店賃地代の抑制』について。
 明暦大火は江戸の55%を焼き、幕府は道路拡張・火除地(防火空地)を設置し復興を急がせたが、労力不足とそれによる労銀高騰が起こる。その補填と救済のために、労銀の最高値を定め、日用品の値下げ、賃料の引き下げ(従前価格)を断行した。文化文政時、物価が高騰し庶民(中間層)の生活が苦しかったため、天保の勤倹節約が奨励され、多角的な取締がなされる。

 全体的に、想像していたのと違った。建築ではなく都市計画、都市計画というよりは過去の図面から都市計画を推し量る本だと思う。記載には数字が並び、どうにも目が滑る。品川宿の人口が何人、といわれてもあまりピンとこないんだよな。読んだのは一部だけれど、他の部分はそれぞれのゾーンに何が建築されてどう配置されたみたいな話なんじゃないかな。
 小説に使えるかというと、江戸時代を書くならざっと読んでもいいかもしれない。広小路市場や四宿についてのデータがあるんだけど、これを膨らませるには江戸時代の庶民生活の知識が必要(この本にはかかれていない)で、すでに江戸時代に詳しい人のプラスαとして使うには良いかもしれない。

4.結び
 淡々とした辞書的な本で、人の暮しが浮かばない本だった。辞書的な本は嫌いではないけれど、多分著者のベースは古地図なのだ。図面から浮かぶ内容が前提になっているので、そこに暮らす人間の生活は挿絵のような付属的な扱いなのだろう。それが良い悪いという問題ではなくて、つまり読む目的が違ったったって話。
 次回は稲垣耕一郎監『図説中国文明史 2 殷周 文明の原点』です。
 と思うのだけど、読書ストックが減ってきたので別のエッセイを投げ込むかもしれませんが、あしからず。
 ではまた明日! 多分!

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