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本雑綱目 60 山本笑月 明治世相百話

今回の本は山本笑月著『明治世相百話』です。
中公文庫、ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4122045729。
NDC分類では210、歴史>日本史に分類しています。

これは乱数メーカーを用いて手元にある約5000冊の本から1冊を選んで読んでみる、ついでに小説に使えるかとか考えてみようという雑な企画です。

★図書分類順索引

1.読前印象
 江戸から明治、大正昭和への変化というものは異世界転生したばりに政治も文化も常識も移り変わった時期と認識している。明治のころの世相や新聞のまとめの本は結構持っているんだけど、楽しみ感。

2.目次と前書きチェック
 前書きはなく、目次は『文化』、『演芸界』、『風俗』、『趣味・娯楽』、『名所・名物』、『書画・骨董』、『文人・墨客』にわかれ、それぞれ各1~3頁単位でたくさんのコラムがぶらさがっている。墨客って今はあんまり聞かない言葉だなあ。
 『文化』と『風俗』を読んでみようと思います。サイズ的には新聞コラムとかを集めたんだろうか。そんな話が多い。

3.中身
『文化』について。
 勧工場、乗合馬車、ガスランプ点灯業者など、短い期間で現れて、そして消えていったものやその変遷などが興味深い。多くの文化や技術が泡沫のように浮かび上がって弾けて消える様はカンブリア大爆発のようで、時代の流れが随分早くて様々な業種が次々とスタイルを変えていく様子が描かれる。
 多くが著者の体験を語っている(多分)ものなので、リアリティがあるというか雰囲気がよく伝わる。弁士のような語り口調も気安い。陸軍が採用した葉巻型気球が揚力に耐えきれず飛んでいったとかなんとなくおおらかな時代感を感じるけれど、この頃は貧富の差がとても大きかったから貧の方の暮しだとまた大分見方が違うんだろうなと思う。ググってみると、明治8年生まれのお金持ちの息子で朝日新聞で文芸部と社会部の部長をした人らしい。さもありなん。当時でも珍しい経験をしたタイプの人間だと思う。

『風俗』について。
 大川(隅田川下流)には白魚がいて明治二十年頃までは永代橋から佃にかけてたくさんの白魚船がいたがやがて白魚がいなくなり、明治末には水が油臭くなって江戸前の鯉も鰻もいなくなった、のがつまらないとある。この辺は今だと環境団体がでてくるなぁと思いつつ、物事の捉え方自体が全く異なることに文化差を感じる。その他にも祭りの風景や縁日、菓子の流行り廃りなど。水菓子や食べ物などについては今は果物が入るが、昔はそれもなくつまらなかったというものが多い。
 『文化』との違いはおそらく、西洋文化の流入等のきっかけによって生まれた技術的なものは『文化』にいれ、それとはあまり関係のない流行の流行り廃りを『風俗』に入れたのかと思うが、その境目は今から見ると曖昧だ。続く『趣味・娯楽』も読んでみたけれど、パノラマや映画なんかがあって面白かったかも。

 全体的に、2頁程度の切り貼りなので全体像がよくわからないものの、さまざなものがあっという間に移り変わっていく様はなかなか興味深い。少し注意の必要なのが、著者の生まれが明治8年ということだ。この本には生まれる前の話まで生き生きと書かれている。それは当時を知る者なり文なりから得た情報なのだけど、それが他の実際経験したと思しき話と同様のリアリティをもって描かれていることと、記載自体が一場面を切り取ったような様子なので、この文章から想像する風景がどの程度当時の情景と合致するのかは別途注意しないといけない気がする。
 それから昭和初期に亡くなった方なので、昭和初期までの文物を前提に記載されている。当然昭和初期にあって現代にないものも多いため、知らない単語も多い。そして恐らく、現代と異なる意味合いで使われている単語もあると思われる。なので明治から昭和の始めまでの民俗にあまり詳しくない場合は辞書が必要かもしれない。知らなくても読めるほど軽妙な文章ではあるけれど。
 小説に使えるかというと、とても悩ましい。それぞれ挙げられている事実はとても面白く興味深いものの、あまりに短期間に移り変わるのでもし東京を舞台とするならピンポイントで考慮しないと5年の差で廃れたりまだ始まってなかったりするだろう。これが田舎とかだと流行りが入ってくるのに時間的な余裕をもたせることができるが、そもそも都市外に出ない文化も多そうだから、そのへんの判断は難しいかもしれない。でもこういう視点を入れられると背景に膨らみが出るよね。

4.結び
 この2頁コラムスタイルって僕的に目が滑って読みにくい。完全に好みの問題だけど。それでこれ、青空文庫にあるんだよね。横書きで読んだほうが圧倒的に読みやすかった。途中で横書きで読もうかと思ったけど、出た本を読む企画なので縦書きでよんだけど。
 次回は山口夢著『明治日本の産業革命遺産』、です。
 ではまた明日! 多分!

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