見出し画像

アイデア#片思い文芸部


「私、絵本作りたいんだよね」

放課後の図書室。窓際の席で、先輩はぽつりと呟いた。
その声が、なぜか耳に残って離れなかった。

キミは3年生で美術部で、俺は2年生でただの図書委員。
接点なんて、たまたま図書室で隣り合ったことくらいだった。

でもその日から、俺の中にひとつのアイデアが生まれた。

先輩の絵に、俺が物語をつける。

話しかける勇気はなかった。
でも、ノートに言葉を綴った。
先輩の描く静かな森の絵に合わせて、優しい動物たちの物語を作った。
それを図書室の返却棚に、そっと挟んでおいた。

次の日、先輩の席にあったノートがなくなっていた。

返事なんて期待してなかった。
けど、一週間後。
返却棚に、新しい絵と、短い言葉があった。

「続き、楽しみにしてる」

それから、何度もやりとりした。
顔を合わせなくても、
言葉と絵で、少しずつ心が近づいていくような気がした。

でも、ある日、返却棚に置かれていた最後の紙には、こう書かれていた。

「ありがとう。あなたの言葉、大好きでした。
でも、本当は、ずっと別の誰かに、気づいてほしかったの。」

春になって、先輩は卒業した。
返却棚は、もう何も語らない。

でも今も、俺はページをめくるたび、キミの絵を思い出す。

切なさを初めて知った出来事だから。




いいなと思ったら応援しよう!

てみ いつもありがとうございます。よろしければ応援をお願いします。これからも分かりやすい記事の投稿に努めてまいります。