(ショートショート)おばあちゃんの引き出しはおもちゃ箱
日曜日、ママは用事があるからと、由実はおばあちゃんの家にあずけられた。
テレビはなんだかつまらないし、おばあちゃんは台所でお味噌汁をあたためている。することがなくて、由実は畳の部屋をうろうろした。
ふと、古いタンスが目に入る。
一番下の引き出し。
なんとなく、そっと引いてみた。
「わあ……!」
思わず声が出た。
中には、色とりどりの糸がぎっしり入った裁縫箱。赤、青、黄色、深い緑。きらきらしたボタンが小さな缶に山ほど入っている。
「何してるの?」
いつの間にか、おばあちゃんがのぞきこんでいた。
「これ、全部おばあちゃんの?」
「そうよ。ボタンはね、取れたらまた付けるの。昔は何でも大事に使ったのよ」
由実は丸いボタンを一つつまみ上げた。つるつるして、あめ玉みたい。
「それね、由実のお父さんのコートについてたの」
「えっ、パパの?」
パパにも子どものころがあったなんて。ランドセルを背負ったパパを想像して、由実はくすっと笑った。
その奥には、くるくる巻かれたリボンの紐。
「なんでこんなにあるの?」
「プレゼントについてたの。きれいだったからね」
よく見ると、その中に見覚えのあるピンクのリボンがある。
「あっ、これ、由実があげたハンカチの!」
「うれしかったから、とってあるのよ」
おばあちゃんは、少し照れくさそうに笑った。
さらに小さな箱を見つける。ふたを開けると、きらり、と光った。
「指輪!」
「それはね、おじいちゃんにもらったの」
「本物?」
「本物よ。でもね、若いころは指がもっと細かったの」
そう言って、自分の指を見て首をかしげるおばあちゃん。
由実は、思わず吹き出した。
「今は?」
「今は、努力中かしら」
二人で声を立てて笑った。
引き出しの中は、古いものばかりなのに、なんだかきらきらして見えた。
「おばあちゃんの引き出しって、おもちゃ箱みたい!」
由実が言うと、おばあちゃんは目を丸くした。
「おもちゃ?」
「うん、宝物箱!」
帰る時間になって、由実が靴をはいていると、おばあちゃんが呼び止めた。
「由実、これあげる」
手のひらに乗せられたのは、小さな白いボタン。
「それね、由実が小さいとき、転んで泣いた日に取れちゃったの。大事にしまっておいたのよ」
そんなこと、由実はすっかり忘れていた。
でも、胸の奥があたたかくなる。
由実はボタンをぎゅっとにぎった。
おばあちゃんの引き出しは、
なんでも入っているわけじゃない。
たいせつな時間が、ちゃんとしまってある。
そして今日、
由実の時間も、ひとつ増えた。
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