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リーダーは先頭にいるとは限らない①— 絶滅危惧種 Lycaon pictus に学ぶ —

1972年、私はアフリカでテレビ記録映画の制作に携わっていた。
ケニア・ナイロビに小さな拠点を置き、サバンナで動物たちを追う日々だった。

その中で出会ったのが、リカオン・ピクタス(African Wild Dogs)である。

サバンナで、私は一つの「思い込み」を手放すことになった。

十五頭ほどの群れが、乾いた大地を一直線に駆けていく。
当然のように、私は「先頭の個体が群れを率いている」と考えた。

だが違った。

意思決定の中心は、先頭ではなく、群れの中ほどにいた。

その個体がわずかに進路を変えた瞬間、前を走っていた個体たちまでもが、迷いなく軌道を修正する。
声も、合図もない。背中越しの「理解」だけで、群れ全体が一つの意思として動く。

それは統率ではなかった。
信頼による「同調(アライメント)」だった。

後年、大学のWritingクラスでこの体験を英語エッセイにまとめた。
その中で私はこう書いている。

“ This was not control. It was alignment. ”

リカオンの社会は、支配ではなく協働によって成り立っている。
傷ついた仲間は見捨てられず、子どもは優先して守られる。
生存は、個の強さではなく、関係の強さに依存している。

この構造は、現代の組織に対して静かな問いを投げかける。

私たちはいまだに、
「リーダーは先頭に立つものだ」と思い込んでいないだろうか。

だがリカオンは違う。

リーダーは前に立たない。
群れの中に身を置きながら、全体の流れを感じ、最小の動きで最大の変化を生む。

五十年以上前、セレンゲティで見たこの光景は、当時はただの驚きに過ぎなかった。
しかし今振り返ると、それは一つの問いだったのだと思う。

——あなたは、前に立っているか。
それとも、全体を動かしているか。

リーダーシップとは、位置ではなく、関係である。

…..

リカオンの群れが、なぜあのように動けるのか。
その理由は、観察した当時の私にはわからなかった。

しかし今になって、ようやく一つの仮説にたどり着いている。

次回は、その核心に踏み込みたい。

——なぜ“見えない位置のリーダー”に、群れは従えるのか。

※本シリーズは英語版(再構成)も別途掲載します。
英語で読みたい方は、以下もご覧ください。
→ Leadership Series (English Edition)

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