【物語】あるカフェの本棚に phase01_3 竹の宿の本棚
phase01_3 竹の宿の本棚
あるカフェの本棚から始まった
刻々と変わる地域の過去~未来の物語
この町には古くから温泉郷があり、450年はさかのぼるそうです。スキー場まで程々の距離にあるので、冬は観光客で賑わうみたいです。でも、一時のスキーブームも去り、温泉郷もなんとなく寂しさを感じるようになりました。宿の数は最盛期の3分の1。今年ものれんを畳む宿が新聞の記事になっていました。
あのルーバー棚のある宿は、仕事場から車のエンジンが温まる程度の近い距離にあります。温泉郷らしい森の中です。宿に続く道路は車がすれ違うのもやっとで、観光バスなんて通れないほどの狭さです。
竹で装飾されたちょっと幻想的な雰囲気のエントランス。建物自体はホテルのような近代建築ですけど、和を重んじたデザインにリニューアルされ小綺麗です。若い女性支配人がカウンター越しから出迎えてくれます。
チェックインをしつつ見回してみると、もうそこにはあのルーバー棚のあるラウンジも見えます。ゆったりとした緑色のソファが相性良く場に溶け込んでいます。森の中で読書をするような感覚にもなります。
荷物を部屋に置き、本が並ぶルーバー棚へと向かいます。丁度良いタイミングで若い女性支配人がラウンジの日本酒試飲コーナーを整えています。
「この本棚って?」
「ゆかりのある本を揃えているんですよ」
この町にはきれいな水を求め移転してきたばかりの酒蔵があります。県内最古で250年ほどの歴史があるそうです。本棚にも、日本酒の本が3冊ありました。もちろん、試飲コーナーにも置いてあります。
本格地ビールの醸造所が隣町にあります。こちらは100年以上も前の設備を備え、やはり歴史があります。缶ビールの部門だけこの町にやってきたのも最近のことです。ルーバー棚にはビールの本も1冊あります。
隣町はある世界でも有名なメディアで一度は訪れたい町の2位に選ばれ、海外からの観光客が一気に押し寄せた町。そんな隣町にはホームスパンという全国でも唯一産業として残った伝統工芸があります。この本棚で初めて知った歴史です。
気づくと日本酒片手に10冊ほど流し読みしていました。もう外は真っ暗闇でですが、装飾された竹の中のLEDスタンドが柔らかい光で包んでくれています。
phase01_4 11/15 へ続く
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