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オーディオブック紹介 「ツミデミック」

おはようございます。
2025年10月8日 水曜日です。

一穂ミチ 『ツミデミック』

大学を中退し、夜の街で客引きのバイトをしている優斗。
ある日、バイト中にはなしかけてきた大阪弁の女は、中学時代に死んだはずの同級生の名を名乗った。
過去の記憶と目の前の女の話に戸惑う優斗は
ーー「違う羽の鳥」

調理師の職を失った恭一は家に籠もりがちで、働く妻の態度も心なしか冷たい。
ある日、小一の息子・隼が遊びから帰ってくると、聖徳太子の描かれた旧一万円札を持っていた。
近隣の一軒家に住む老人からもらったという。
隼からそれを奪い、たばこを買うのに使ってしまった恭一は、翌日得意の澄まし汁を作って老人宅を訪れるが
ーー「特別縁故者」 

先の見えない禍にのまれた人生は、思いもよらない場所に辿り着く。
稀代のストーリーテラーによる心揺さぶる全6話。

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コロナ禍が照らし出す、人生の予期せぬ分岐点

直木賞受賞作『ツミデミック』は、パンデミックという時代の禍に翻弄される人々を描いた、全6編の連作短編集です。

本作の最大の特徴は、そのタイトルが示す通り、「罪(ツミ)」と「パンデミック」を掛け合わせた世界観にあります。
コロナ禍という誰もが経験した非日常が、人々の人生にどのような亀裂を生み、どんな選択を迫ったのか。一穂ミチは鋭い観察眼で、その光景を切り取っていきます。

収録作の「違う羽の鳥」では、大学を中退し夜の街で客引きをする優斗が主人公。
バイト中に声をかけてきた大阪弁の女性が、中学時代に死んだはずの同級生の名を名乗ったことから物語が動き出します。
過去と現在、記憶と現実が交錯する中で、優斗の心は激しく揺さぶられていきます。

「特別縁故者」では、調理師の職を失い家に引きこもる恭一と、小学一年生の息子・隼との関係が描かれます。
隼が近所の老人からもらった聖徳太子の旧一万円札を、父親がたばこ代に使ってしまうという場面は、経済的困窮と道徳的葛藤が絡み合う痛切なシーンです。
しかし恭一は翌日、得意の澄まし汁を作って老人宅を訪れます。この小さな償いの行為に、人間の尊厳を取り戻そうとする姿が表れています。

本作が「犯罪小説」と銘打たれているのは興味深い点です。
登場人物たちが犯す「罪」は、必ずしも法律に触れる大きなものではありません。
むしろ、パンデミックという極限状態が人々を追い詰め、日常では考えられない小さな過ちや選択を強いる。
その心理的プロセスこそが、この物語の核心なのです。

一穂ミチは「稀代のストーリーテラー」と評される通り、複雑な人間関係や心理描写を、癖のある文体で巧みに紡ぎ出します。
各話はそれぞれ独立していながら、「先の見えない禍にのまれた人生」というテーマで緩やかにつながり、読み進めるうちに一つの大きな物語として浮かび上がってくる構成も見事です。

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オーディオブックで聴いたという視点から言えば、本作は聴きやすく、それでいて深く心に残る作品です。
短編という形式が音声メディアと相性が良く、通勤時間や家事の合間に一話ずつ楽しめるのも魅力的。
登場人物たちの声や情景が、聴き手の想像力の中で立体的に立ち上がってきます。

コロナ禍を題材にした作品は数多くありますが、『ツミデミック』はその中でも出色の仕上がりです。
パンデミックという一過性の出来事を描くのではなく、それによって露わになった社会の歪み、人間の弱さや強さ、そして予期せぬ希望を描き出しています。

直木賞受賞も納得の、読み応え十分な作品。
コロナ禍という時代を生きた私たちだからこそ、登場人物たちの痛みや迷いがリアルに伝わってくる一冊です。
短編集ながら深い余韻を残す、現代日本文学の傑作と言えるでしょう。

今日の占い

10月8日
◎幸運の日
1.今日は温めていたアイデアや企画を上司や周囲に共有するのに最適な日です。
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それではまた明日
ひろかん

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