【全文】衆議院 内閣委員会 質疑/幹事長・高山聡史(2026年4月16日)
2026年4月16日に衆議院 内閣委員会で行われた、国家情報会議設置法案に対する参考人質疑における、チームみらい 幹事長・高山聡史の質問と、各答弁者による答弁を全文書き起こしたものです。
質問者=チームみらい 幹事長・高山聡史
答弁者=三谷秀史参考人(元内閣情報官、元拉致問題対策本部事務局長)、小林良樹参考人(情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科教授)、大澤淳参考人(公益財団法人中曽根康弘世界平和研究所上席研究員)、齋藤裕参考人(弁護士)
高山聡史
チームみらいの高山聡史です。本日は、三谷参考人、小林参考人、大澤参考人、齋藤参考人、それぞれのお立場から大変示唆に富むご意見を賜り、心から感謝申し上げます。皆さま、切り口は違えども、インテリジェンス機能の重要性、そして民主的統制の重要性をそれぞれ述べていただいたものと存じます。これらの重要性を起点にご質問をさせていただきたいと思います。
1. 情報部門と政策部門の信頼関係について
高山聡史
まず、三谷参考人に、情報部門と政策部門の信頼関係ということについてお伺いしたいと思います。今回、国家情報局ということになりますと、その構成員の立場はこれまでよりも政策決定者に近いところに、より決定者に近い立場になるということになるかと存じます。
こういった制度変更を政治と情報機関の信頼関係をさらに高めていくきっかけとするためにどういったことが必要であるかというところを、参考人が長年の実務経験を通じてこれは重要であるとお考えの要素をお聞きしたいと思います。特に、参考人からすると、情報部門としてこういうことをやるべきだということだけでなく、政治の側に、これはやってくれないと困るであるとか、ここはしっかりしているなと、いろいろご経験があると思いますので、ぜひお聞かせいただければと思います。
三谷参考人
お答えいたします。お尋ねの政策と情報の分離は、インテリジェンスを語る場におきましてはまさに基本中の基本。政策と情報を合体した、まったく一緒になってしまっている、そういう政府は信頼に値しないとまず申し上げておきたいと思います。
ただ一方で、政策側の要求されるいわゆるリクワイアメント(要求事項)、これは適切に情報サイドに伝わる必要がありますし、情報サイドとしてもそれを適切に受け取る努力というのは必要だと思います。
そういう意味で、これは私が使う言葉でありますし、多分提言でも同じ言葉を使わせていただいたと思いますが、「密接な連接」という形が必要になってまいります。そして、その連接の場が、実は総理対情報官ということで申し上げれば、今、週に1度以上やっているように見受けますが、私の場合は2週に1度、総理に直接お会いし、まさに膝を交えて報告申し上げ、総理からのご提言もお聞きするというような場、この場を最大限に利用させていただいたというのがまず一つ目でございます。
二つ目は、緊急事態でございます。緊急事態の際に、いわゆる危機管理状態が発生している、そのときに、危機管理監を助けるという意味以上に、総理がお困りになっているであろう、官房長官がお困りになっているであろう、そこに情報を持ってはせ参じる、これこそまさに情報官の仕事であると心がけておりました。
ご参考までですが、情報官時代、私は官邸から2キロ以外に宿泊したことは一切ございません。というような形で信頼を頂戴していったというのが正直なところでございます。以上です。
高山聡史
ありがとうございます。密接であるということと同時に分離をしているということの重要性、大変よく理解をいたしました。
ほか3名の参考人の皆さまにも、ぜひ、この政策部門と情報部門の信頼関係というテーマで、それぞれの参考人の切り口で、どういうことが重要になるのかというところをお答えいただけますでしょうか。順にお願いいたします。
小林参考人
ご質問ありがとうございます。ただいまのご質問は、政策部門とインテリジェンスの距離、バランス、そういうご質問だというふうに理解をいたしました。
先ほど来申し上げているとおり、一方で、政策からのリクワイアメントをしっかりと受け止める、そしてインテリジェンスサイクルを回す、これは重要でございますし、他方で、インテリジェンスの客観性を維持しなければいけない、このバランスでございますが、一つ、私が以前、現職のインテリジェンス組織の幹部と話をしたときに、こういうことではないかと言ってくれたことをご紹介いたします。
その言葉は、「ニーズは読んでも空気は読むな」ということだと言われております。「ニーズを読む」というのは、こういうリクワイアメントがあるということはしっかり受け止める。しかしながら、「空気を読むな」というのは、政策側がこういうインテリジェンス評価が欲しいと言っているのは、あえてその空気は読む必要はない。インテリジェンス側として客観的な分析・評価は維持するという意味で、「ニーズは読んでも空気は読むな」、こういう距離感ではないかと思います。これが一つ。
それから、もう一つ。アメリカで以前CIA長官と国防長官を務められましたリオン・パネッタという方がいらっしゃいます。その方が、まさに政治とインテリジェンスの距離ということについて説明をされたことの話を引用してご紹介申し上げますと、パネッタ元CIA長官は、インテリジェンスの業務は100%の真実解明ではない、むしろ、何が分からないかということを正直に話す、そういう意味で、不確実性の可視化だ、さらに言えば、その先にある政策判断に伴うリスクを可視化することだと。
もう一度申し上げますと、インテリジェンスの責務というのは、不確実性を可視化し、さらに政策判断に伴うリスクを可視化することだ、そこまでがインテリジェンスの仕事であって、そこから先のリスクを取って判断をするのが政策部門の仕事であるというような、そういうご説明をされておりました。ご参考まででございます。以上でございます。
大澤参考人
お答えいたします。安全保障局で政策当局として情報要求を出す側におりましたので、そのときの経験から申し上げますと、なかなか、インテリジェンスのリクワイアメントを、ちゃんと政策意図をお伝えするというのは難しいというのを感じておりました。短い文章でリクワイアメントを出しますので、なかなかそれに沿った情報が出てこなかったりとか、あと時間がかかったりということがありますので。
政策当局とインテリジェンス当局の間で確かにファイアウォール、壁は、分離は必要なんですけれども、より密接に、どういう意図で情報が欲しいのかというのをきちっと政策サイドからインテリジェンスサイドに伝える、それが必要なのと、もう一つ、インテリジェンスをもらった後の評価ですね。非常に役に立ったとか、この辺が足りなかったとか、その評価がなかなか戻らないという傾向にありまして、戻すと、インテリジェンスサイドの方も、自分の仕事が非常に役立ったということで、次にもっといい情報を出してもらったりということもありましたので、政策サイドからのフィードバック、これが非常に重要になってくるかというふうに考えております。ありがとうございます。
齋藤参考人
ありがとうございます。小林先生がおっしゃられた、「ニーズは読んでも空気を読むな」というのは大変至言だなと思って聞いておりましたけれども、そのような立場を貫くことができるような人材を得て教育をするというのが大変重要なんだろう、それが信頼関係、必要な信頼関係なんだと思っております。
先ほど申しましたけれども、トランプ大統領がアメリカでイランの核兵器に関連して国家情報長官に対してプレッシャーをかけるような言動をしたわけですけれども、かなり強力な政治家の方がいらっしゃっても空気を読まない、そういう倫理観というのが本当に大事なんだろうと思いますけれども、しかし、そういう人材が得られるとは限らないというふうに思っています。
ですから、そういうプレッシャーがかからないような制度的な分離というものが大変重要なんだろうというふうに認識しております。
高山聡史
ありがとうございます。まさに、リクワイアメントやニーズがきちんと共有し合える関係性、距離感でなくては意味がないということと、同時に、空気を読まないことの大切さ、これを人的にも、そして制度的にも担保をしていく必要があるということ、大変よく理解ができました。
2. インテリジェンス機能強化における優先順位について
高山聡史
次に、小林参考人に伺いたいと思います。民主的統制ということにおいては、海外諸国、アメリカ、イギリス、そのほかにおいても、いろいろな制度設計であるとか検討がこれまでなされてきたことであると思います。
今回、この法案で国家情報会議の設置ということをやって、それ以降もインテリジェンス機能の強化ということに関しては議論が続いていくものと存じますが、現状を踏まえて、他国とも比較をしながら、今後整備をすべき民主的統制のパッケージといいますか、複数の事柄をやっていくことも今後考えられるものと思いますが、それらに関する優先順位の高いもの、他国の制度を見たときに、この辺りの検討は比較的優先順位が高いのではないかみたいなところがあれば、ぜひ教えていただけないでしょうか。
小林参考人
ご質問ありがとうございます。ただいまのご質問、非常に難しいので、歯切れのいいご回答ができないことをあらかじめご了承いただければと思います。
先ほどの繰り返しになりますが、民主的コントロールというのは、コントロールそのものが目的ではなくて、それはあくまで手段であり、目的は国民からの信頼を得るということだと思います。国民の信頼を得るためには、ご指摘のとおりいろいろな手段がございまして、一つは、インテリジェンス組織そのものが自主的に透明性を高める、説明を高めるということがあります。それと、もう一つが、第三者によるところの監督を受けるということでございます。
この第三者というのがまたいろいろございまして、それは、たとえば行政府の中に独立性の高い監察官のような組織を設ける場合、それから立法府による場合、場合によっては、アメリカのように司法が、裁判所がその任に当たることもございますし、またあるいは、独立性の高い第三者行政組織のようなものが当たる場合があります。
学術的にはそれぞれにメリット・デメリットがございまして、どれが必ず優れているというわけでもございません。また、それぞれの国の政治的あるいは社会的状況によって、各プランのメリット・デメリットの中でどれが一番その国に合っているかということはいろいろなご議論があると思います。
したがって、私の回答といたしましては、これが一番いいということは申し上げられないのですが、ただ、いろいろな選択肢があって、それぞれメリット・デメリットがございますので、そのメリット・デメリットを精査していただいて、どれが我が国の政治・社会状況に一番合うかということをぜひ十分にご議論していただければありがたいなと思う次第でございます。以上でございます。
高山聡史
ありがとうございます。統制の在り方ということに関しては、今後ともぜひいろいろとご教示いただきたいと思います。
今、小林先生のお話にもあったところですが、独立した第三者機関によるものであるとか、あるいは国会によるチェックであるとか、いろいろなアプローチがある中で、齋藤参考人におかれましては独立した第三者機関の必要性ということを強く訴えておられるかなと思います。
ここに関連をしまして、独立した第三者機関だからこそ果たせる役割、たとえば個別事案に対して踏み込んで調査をしていくということだったり、いろいろあると思うんですが、独立した第三者機関ならではのところをぜひもう少し教えていただけないでしょうか。
齋藤参考人
ありがとうございます。もちろん、独立した第三者機関というのは、世界各国、いろいろな例があるわけでございます。
たとえば、カナダでいいますと、ナショナル・セキュリティー・アンド・インテリジェンス・レビュー・エージェンシー(National Security and Intelligence Review Agency)というものがございます。独立した機関で、たとえば、インテリジェンス機関から人権侵害を受けたんだという訴えがあったらそれに対して対処するとか、インテリジェンス機関の運用を監視するというものでございます。
あとは、ナショナル・セキュリティー・アンド・インテリジェンス・コミッティー・オブ・パーラメンタリアンズ(National Security and Intelligence Committee of Parliamentarians:NSICOP)というものがあって、議会の、インテリジェンス機関を監督するところがございます。
これらはかなり機微な情報にも接することができるということで、かなり強い調査権限を持っておるわけですけれども、インテリジェンス機関や政治家の先生によるチェックということになると、やはりインテリジェンス機関と一体化した感覚になってしまうかもしれない。しかし、そこはインテリジェンス機関とは違う立場で、人権侵害があっても毅然として対応するんだというような考えを持ちやすいという意味では、第三者機関、議会じゃない、行政でもいいですけれども、そういう機関を持つことで人権侵害を抑止しやすいというふうに考えております。
高山聡史
ありがとうございます。ここについても議論が深まることを期待しております。
3. 認知戦・影響工作に対するインテリジェンス・コミュニティーの対応能力について
高山聡史
最後に、大澤参考人に伺います。認知戦であるとか、あるいは海外からの情報的な工作といったお話がございましたが、今、ロシアであったり中国であったり、具体的な国名も出る中で、我が国のインテリジェンス・コミュニティーがそういったものに対してどの程度タイムリーに今気づけていると評価できるものなのかというところ、少し抽象的な問いではございますが、ご認識をお聞かせいただけますでしょうか。
大澤参考人
外国からの影響工作ですけれども、やはりこの2年、見えてきた事象でございまして、なかなか能力構築という点では、たとえば、リアルタイムでSNS空間をモニタリングするようなサービス、こういったものを予算を取って入れていくということになりますと、まだその能力的には途上というふうに考えております。
それでも、今の内閣情報調査室を中心として、情報戦の情報収集はかなり積極的にやられているというふうに理解をしておりまして、サービスを購入したり、有識者にデイリーで報告をしてもらったりということもやっておられると聞いておりますので、そういう点では徐々に能力がついてきているというふうに思っております。
高山聡史
ありがとうございます。こういった認知戦、影響工作、またサイバー攻撃といった分野に関してはAI等の技術側の進歩が目覚ましいというところもございますので、この能力をどう高めていくかということに関しては、今後の審議の中でもぜひ議論させていただきたいと思っております。ありがとうございました。
