【全文】衆議院 内閣委員会 質疑/幹事長・高山聡史(2026年6月25日)
2026年6月25日に衆議院 内閣委員会で行われた質疑における、チームみらい 幹事長・高山聡史の質問と、各参考人による回答を全文書き起こしたものです。
質問者=チームみらい 幹事長・高山聡史
参考人=百地章 日本大学名誉教授、江藤隆之 桃山学院大学副学長・法学部教授、野村修也 中央大学法科大学院教授・弁護士、志田陽子 武蔵野美術大学造形学部教授・学長補佐
1. 罪の成否を判断する基準
高山聡史
チームみらいの高山聡史です。参考人の先生方、本日は貴重なご意見を賜り、ありがとうございました。
まず、罪の成否を判断する基準について百地参考人に伺います。
かつて議論されてきた国旗損壊罪の案では、日本国に対して侮辱を加える目的でという行為者の主観的な意図を要件としておりました。これに対して今回の法案は、意図や目的を要件とせず、人に著しく不快感や嫌悪感を催させる方法でと、公然と損壊する行為を外形的、客観的に判断するという構成に改められていると承知をしております。参考人は今日の意見陳述の中でも、行為者の意図や目的も問題とすべきではないかと述べられておりましたが、その上で伺います。
目的要件を外したという変更について、一方で、評価できる側面はございますでしょうか。たとえば、捜査機関が個人の内心や思想信条に立ち入ることを避けるという観点からは、一つの工夫と評価する余地があるのか、参考人のお考えをお聞かせください。
百地章 参考人
ありがとうございます。まず、侮辱する目的ということにつきまして、私は外国国旗損壊罪と同じように侮辱目的でと書くのが自然だろうと思います。その理由としましては、先ほど来、言っていますように、国旗というのは国家の尊厳の象徴である、国家の名誉を傷つけようということになりますから当然侮辱目的というのは伴うはずでありまして、それを書くのは自然だろうと思います。
しかし、侮辱目的ということを外せば、その場合に、まず、国旗損壊行為を厳格に制限して考えますけれども、さらに侮辱目的というものを外すことによって、また処罰の対象が軽減されるということは事実でありまして、そういう意味では、このような法律に反対する、あるいはもっと減刑すべきだという人たちから見ればそれなりの意味はあるんじゃないかなと思っております。
2. 本法の施行までの準備
高山聡史
ありがとうございます。次に、本法の施行までの準備について、江藤参考人と野村参考人のお二方に伺いたいと思います。
本法案は、成立すれば公布から20日間というごく短期間で施行されることが見込まれております。しかし、第2条の構成要件、すなわち、どのような行為が処罰の対象となり、どのような行為がならないのか、また、どのような場合には違法性が阻却されるのかについては、客体、態様、行為、周囲の状況など、判断を要する要素が少なくないというふうに考えます。
この点について、私は、施行までに一定の措置が必要ではないかというふうに考えております。つまり、構成要件に該当する行為及びしない行為、違法性が阻却される場合及びされない場合について、罪刑法定主義の観点からも、また、表現の萎縮を招かないためにも、明白な基準であったり、具体事例を示していくことであります。
そこで、お二人に伺いたいと思います。
罪刑法定主義の観点から、また表現の萎縮を招かないという観点から、国民に対しても、そして実際に運用に当たる捜査機関に対しても、構成要件や違法性阻却の有無を十分に周知する必要があると思います。このために、通常、新たに法律で罰則を設けるケースや厳罰化を行うケースにおいて、施行までにどのような形で基準や事例を提示することが必要で、そのためにはどのような手続き、期間が必要になるとお考えでしょうか。
江藤先生においては、この基準を示すのが難しいんじゃないかということでございましたが、もしそういった基準を作る場合は普通はどうかみたいなところも含めて、江藤参考人、そして野村参考人の順でお考えをお聞きしたいと思います。
江藤隆之 参考人
ご質問ありがとうございます。基準が明確になるべきだというのはまさにご指摘のとおりです。ただし、それが、成立後、施行までの間ではなく、しかも、もちろん施行してからでもなく、刑法は罪刑法定主義がございまして、条文に書いてあればそれが基本的に適用されるものでございます。ですから、これは、成立までに基準を条文に盛り込む、もし成立するのであれば、成立するまでに明確な構成要件を条文に書き込むということが必要であると考えます。
条文が曖昧なまま、施行までに、あるいは施行後に基準が示されたとしても、罪刑法定主義上の懸念は消えない。それは、罪刑を法律で定めるのが罪刑法定主義ですから、法律に書き込む必要があると考えます。
以上です。
野村修也 参考人
質問ありがとうございます。内心に関わる事柄が要件になっていますと、非常にそれは、どういう内心がよい内心で、どういうものが悪意なのかということを考えなければいけなくなると思いますが、今現在お示しいただいている法律の条文からいきますと、かなり客観的な行為の状況で認定できるような条文になっているのではないかなと私は思っています。
法律は確かに言葉によって書いてありますけれども、その言葉自体は、常に一義的に解釈できるようにでき上がっているものではなくて、その時々のさまざまな社会通念によって解釈されているものであります。
たとえば、殺人という言葉自体については、ほぼ100%みんなが理解しているだろうというふうに思っているかもしれませんが、最高裁は、たとえば、後追い自殺をしますよと言って先に毒薬を渡して、それで、うそをついて飲ませたという行為自体を殺人だというふうに言っています。これは、私たちの一般的に理解している殺人という概念とは違っているわけですけれども、それでも、法律によってすべての知恵を働かせながら、その法律を運用しながらそれが明確化されていくということがあるんだろうというふうに思っています。
今回は、客観的に考え、その中で条文に込められている意味をちゃんと理解した上で解釈をすれば、このタイミングで施行させても大丈夫なのではないかなと。これは私個人の意見であります。
3. ヘイトスピーチと表現の自由の関係
高山聡史
ありがとうございます。いずれにしても、これが明確に理解できるものであるということが非常に重要であるというところは、お二人、共通したところかなというふうに思います。
続いて、志田参考人に伺います。
国旗を損壊する行為を規制することに対して慎重なご意見をいただいたと思うのですが、そういった場合においても、ヘイトスピーチのために国旗を損壊するということに関しては、たとえば、人格権を侵害する行為やヘイトスピーチのために国旗を利用する行為を規制することに絞った立法であれば、憲法違反となる可能性が薄くなるという趣旨のことをおっしゃっていたと思います。
そこで、伺います。たとえば、人種差別的なメッセージを国旗に書き込んだり、そのメッセージを強烈に伝えるために国旗を損壊するといった行為を処罰する法案があったとして、表現の自由をご専門とされるお立場から見て、そういった規制が表現の自由との関係でもなお許容されるとすれば、それはどのような観点、理由によるものでしょうか。参考人のお考えをお聞かせください。
志田陽子 参考人
大変重要なところにご質問をいただきまして、誠にありがとうございます。私がお手元にお配りしたレジュメですと、3ページ目に書かせていただいている内容がそのご質問に該当するところだと思います。
ヘイトスピーチのために国旗を使用するような表現についてはどう考えるかということですが、現在、日本には2016年制定のヘイトスピーチ解消法というものがありまして、各自治体がヘイトスピーチを解消していくように努めることということで、たとえば明らかなヘイトスピーチ、デモ、排外的な、排撃的なデモというものに場所を貸したりはしない、また、自治体によっては処罰を検討するというところも出てきています。
この筋で考えて、そして、ヘイトスピーチと言えるものに対して国旗が利用されているという場合には、この筋、つまり、ヘイトスピーチ解消の筋で対応することは必要であると思います。ただ、それは、国旗損壊罪をわざわざ規定、新しく新設するという形ではなく、ヘイトスピーチ解消法の、現行法の枠の中で対処すべきことであると考えております。
また、それ以外の差別的表現につきましても、今、日本の法令では、差別表現それ自体を正面から法規制することは避けています。そして、メディアや学校や自治体、さまざまな組織の健全運営のためにそれをやめていくように努力する。たとえば、企業の経営者の責任として、そうした人格権侵害が生じるような差別表現、一般にハラスメントと言われる表現を抑えていく方向が求められています。
その枠の中で、もし仮に国旗を用いた差別的嫌がらせ表現、ハラスメント表現があるとすれば、それは抑えていく方向を取るべきである。これも、国旗損壊罪を新設するという必要を私は感じておりません。それぞれの法令でそうした人格権侵害に当たるものは抑えていくべきである、人格権侵害の筋で抑えていくべきであるというふうに考えております。
以上です。
4. 国旗損壊とヘイト行為の関係
高山聡史
ありがとうございます。人格権侵害に対する対処としてどうあるべきか、あるいは、ヘイトスピーチへの対処としてどうあるべきかという議論がこれまでも積み重ねられてきて、その枠組みで対処すべきであるというご意見であったと理解をいたしました。
続いて、野村参考人に伺います。
参考人は、国旗を損壊する行為を国民全体に向けられたヘイト行為とも位置づけられるということで、外国国章損壊罪においては、外国国章を損壊する外国人に対するヘイト行為は抑止されている形になっている、その一方で、日本国旗を損壊する日本国民に対するヘイト行為は処罰の対象になっていないということを述べられたと理解しております。
その上で、国旗の損壊とヘイト行為との関係に着目をすれば、国旗の損壊が社会全体に憎悪であるとか分断を広げるケースがあるわけで、将来、社会的な害悪が生じることが見込まれる点も立法事実として位置づけられるというお考えでしょうか。参考人のお考えをお聞かせください。
野村修也 参考人
今委員がおまとめいただいたとおりでございます。
一点、先ほどの質疑の中にありましたヘイトスピーチに関して、すでに法律があるので、その延長線上でという話になっていますけれども、ご案内のとおり、わが国の2016年のヘイトスピーチ解消法は、外国人に対してのヘイトスピーチだけを片面的に規制しているものでありまして、各自治体における条例もすべてそのような状況になっております。
そのときに、多くの国民から質問があって、日本国民に対するヘイトはどうなっているんだということに対し、衆参両院の議員の皆さま方が附帯決議という形で、国民に対してもヘイトが行われることは許されないんだということを固い意思で決議されていると私は承知しておりますが、それに対して特段の法制度というのをつくっているわけではありません。
ですから、唯一、国民に対してのヘイト行為の最たるものとして、国旗に対する損壊行為というものを特出しして規制するということには立法上の必要性があるのではないかというふうに考えております。
高山聡史
ありがとうございます。今日、4人の参考人の先生方にご意見をいただきまして、大変参考になりました。国旗損壊罪に対する賛否のスタンスは先生方の中でもそれぞれあると思いますが、引き続き丁寧に審議させていただいて、いただいた内容も踏まえて議論を深められればというふうに思っております。
以上で時間ですので、私の質問を終わります。
