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夏の夜釣りと「第一発見者の釣り人」  ~夜釣りの静寂の中 ユラユラと足元に流れてきたもの~ 【実話|微ホラー】


こんにちは。息子の父です。

今回は夏休み特別回として、普段とは違った趣の記事を投稿してみようと思います。

※このお話は、”微ホラー”となっております。
怖いお話が苦手な方は、こちらでそっとお戻りください。



「第一発見者の釣り人」という存在


ニュースでたまに見かける、海岸に打ち上げられた〇体を発見した釣り人のインタビュー。

(第一発見者の釣り人)
「明け方5時くらいかなぁ...  いやぁ、最初は流木かと思ったんだよね」


その”第一発見者の釣り人”という言葉は、なぜか私の印象に深く残っていました。


そして、とある夏の夜のこと。

私が一人で夜釣りに出かけたときのお話です。



深夜の防波堤


深夜2時
家を出て、お気に入りの釣りポイントへ。

深夜3時
釣り場に到着。
あまり知られていない穴場スポット。
防波堤の先端の、ベストポイントを確保。


あたりはまだ真っ暗。

ヘッドライトの明かりを頼りに竿を準備して、仕掛けを投げ込む。

波の音と、遠くで鳴る汽笛。

ヘッドライトを消し、電気ウキの明かりをぼんやりと眺める。


何度かエサ取りにやられ、エサをつけ直しては投げ直す。

そんな単調な作業を繰り返していた時...



ウキの”おかしな挙動”


電気ウキがおかしな挙動をした。

アタリではない。

漂流物でもぶつかったのだろうか。


仕掛けが絡むと面倒だ。

ヘッドライトを点け、ウキの周囲を確認した。


(ユラユラ)

なにかが揺れている


(ユラユラ)

少しずつこちらに近づいてくる


仕掛けを回収し、その”ユラユラ”を凝視した。


なんだろう


海面に浮いては沈み、長い海藻のように揺れている。

その隙間から、白い物がチラリと見える。


なんだろう



ユラユラの正体


そのユラユラが足元から5mほどの距離まで来た時、ヘッドライトに照らされて、白いものの正体がわかった。

海藻の様に揺れるユラユラの間から見えていた白いものは、、


「人の顔」だった


海藻の様に揺れていたのは、長い髪。


ユラユラの正体は、、人間の頭部


あたりは真っ暗

怖い

自分の他には、誰もいない


でも、気づけば手にタモ網(伸びる柄のついた網)を握っていた。



恐怖に打ち勝った”ある思い”


ついに自分が、あの「第一発見者の釣り人」になるのか、、


(ユラユラ)


足元まで来た

網が届く距離


怖かった

でも、恐怖よりも強かったのは

「俺がすくわなきゃ!」

という思い。


たとえ「一部」でも、家族のもとに帰してあげたい


その使命感が、体を突き動かした。

網を下ろし、待ち受ける

ユラユラのタイミングをはかり、キャッチした


入った!

が、、重い。。


そういえば、何かのマンガで読んだっけ。

人間の頭部はおよそ5kg

ボーリングの玉と同じくらいらしい。


不思議と、怖いという気持ちは無くなっていた。

この「ユラユラ」の本人は、きっと無念の中、冷たい海を、ひとりで彷徨っていた。


待ってて

もうすぐ家族に会わせてあげるから


慎重に、まっすぐ引き上げる

少しでも傾けると、重みで柄が折れてしまう

そして、ついに、すくい上げた



自分には見届ける義務がある


よし、警察に電話しよう

”第一発見者の釣り人”として

でも、その前に、気になった。

性別は? 年齢は?

どうしても、確かめないといけないような気がした。


真っ暗な中、ヘッドライトだけを頼りに、
髪を指でかき分けて、「顔」を確認した。



とても肌の白い


美しい


若い女性








の、マネキン


たぶん、美容室とかで練習用に使われる、頭部だけのマネキン。

その場に座り込んで、動けなくなった。

腰が抜けるとはこのことか。



朝焼けの漁港


気づけば、あたりが白み始めていた。

もう釣りの気分じゃない。

帰ろう。


ところで、このマネキン、、どうしよう。

適当に捨てるわけにもいかないし、かと言って持って帰るのも嫌だ。


とりあえず釣り具の片付けをしていたら、漁港の関係者と思われるおじさんがやってきた。

「おにいさーん、なんか釣れた?」

「いや〜、、それがですねぇ、、」


事情を話して、すくい上げたマネキンの頭を見せると、大爆笑された。

「アハハハ!朝から面白い話を聞かせてもらった!」

「いいよ、こっちで処分しておくから」


マネキンの頭は、おじさんに持って帰ってもらいました。




釣りを始めてすぐの頃、

「いつか自分が”第一発見者の釣り人”になる日が来るかも」

と考えたことはあります。

でも、まさかこんな経験をするとは(笑)


あの時、「怖い」と同時に、「すくわなきゃ」という思いが湧きあがり、無意識にタモ網をつかんだ自分を、少しだけ誉めてあげたいです。


釣り人の皆様、

もし今日、あなたの釣り場に現れたら、

ぜひ、すくってあげてください。


(ユラユラ)



執筆後記

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

”微ホラー”でお届けした、「忘れられない夏の思い出」

いかがでしたでしょうか(笑)


ユラユラの中に”顔”を見たときの恐怖は、今でも鮮明に思い出せます。

そして、怖さよりも先に動いた手。

あの時の自分を、今でも少しだけ誇らしく思っています。


朝焼けの漁港で、腰を抜かして座り込んでいる情けない姿。。

漁港のおじさんのように、笑い飛ばしていただけると”すくわれます”



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息子が中学生の頃のお話。
”夏休みの宿題”のエピソードです。



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