Suchmos × 藤井風 / Zepp Haneda —— 余白まで鳴っていた夜
2026.07.02
Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026
Suchmosと藤井風の対バンを観た。
演奏技術がすごいライブはいくらでもある。
でも、この日は違った。
どちらのアーティストにも、音楽に余白を残しているイメージがある。決められた形をそのまま再現するというより、その日の空気やノリに合わせて、少しずつ曲が変わっていく。ライブの中で曲を作っていくような感覚。
この日のZepp Hanedaには、まさにその空気があった。
演奏がうまい。もちろんそれは大前提としてある。でも、それ以上に残ったのは、この人たち、本当に音楽が好きなんだなということだった。
藤井風もSuchmosも、音を鳴らしている瞬間だけじゃなく、音が抜けた瞬間まで楽しんでいるように見えた。
ライブって、こんなに自由でいいんだ。
そう思える夜だった。
シンプルを気持ちよく鳴らせる人が、上手い
自分は、音数が多いとか、速弾きができるとか、それだけが「上手い」ではないと思っている。
むしろ、シンプルなことを気持ちよくできる人の方が、よっぽど上手いと思う。
この日のSuchmosと藤井風は、まさにそれだった。
特に印象に残ったのはブレイク。
音が止まる。
でも、リズムは止まらない。
誰かが無理に埋めようとするわけでもない。空白が生まれても、そこにちゃんとグルーヴがある。音が鳴っていないのに、身体はまだ揺れている。
その一拍の静けさが、この日のライブで一番気持ちいい瞬間だった。
音を詰め込んで盛り上げることもできるはずなのに、あえて余白を作る。その余白を怖がらずに置ける。そして次の一音が入った瞬間、めちゃくちゃ気持ちいい。
「何を鳴らすか」と同じくらい、「何を鳴らさないか」を知っている。
だから、余白まで鳴っていた。
この日のライブを観て、自分が思う「上手い」はやっぱりこういうことだよな、と思った。
リスペクトと遊び心が、同じステージにあった
藤井風のアクトの中で、印象に残った言葉があった。
Suchmosが日本におしゃれを持ってきてくれた、というような話。
本当にそうだよなと思った。
Suchmosが鳴らしてきた空気やグルーヴがあったからこそ、今の日本のポップスにある“おしゃれさ”や“抜け感”も自然に広がっていった気がする。そこに藤井風がリスペクトを込めて触れていたのが、すごく良かった。
そして、そのリスペクトが重くなりすぎないのも良かった。
藤井風は『きらり』の前に「聴いてください、『STAY TUNE』。」と言っていて、会場にもふっと笑いが起きた。
SuchmosもSuchmosの持ち時間の中で、同じような遊びをしていた。
すぐにやり返すとか、派手に笑いを取りにいく感じではない。でも、ちゃんとお互いを意識しているのが伝わる。対バンならではの距離感だった。
そしてアンコール。
Suchmosと藤井風で『Miree』。
あれはもう、完璧だった。
誰かが前に出るわけでもない。
引っ張る人もいない。
自然に呼吸が揃って、気付けばグルーヴになっていた。
上手い人同士が演奏しているというより、音楽が好きな人同士が遊んでいるように見えた。グルーヴが自然で、無理がなくて、でもめちゃくちゃ強い。
憧れとか、リスペクトとか、遊び心とか。
そういうものが全部、音の中に混ざっていた。
この夜に残ったのは、「すごい演奏を見た」という感覚だけではなかった。
もっと素直に、もっと自由に、音楽を楽しんでいい。
そんなふうに思えたこと自体が、たぶん一番大きかった。
帰り道、まだ身体のどこかでリズムが鳴っていて、ふとした瞬間にあの余白がよみがえる。
音が鳴っていないはずなのに、まだどこかで続いている。
そう思わせてくれる、余韻の長い夜だった。
