一瞬出会ったのは、林さんだった
日・月曜日で、自転車を電車に乗せていわき市を走る予定だったが、日曜日に用事ができたので辞めた。
日曜日は細々とした用事を済まし、TMレボリューションのLIVE DVDを観ながら、シチューを作りながら日本酒を飲んでいたら、1日が終わった。
よく寝た。
月曜日の朝、今日は1日自転車で走るつもりだった。
横浜方面に行きたい。
自転車に輪行袋という、自転車を分解して詰める軽い袋をくくりつけ、南へ向かった。
いつも走るルートで、上野、銀座、品川と進む。
朝9時半頃から何も食べずに走り始めたので、秋葉原の頃にはお腹が減って来た。
品川まで下ると、何か身体が変だ。
体が疲れているわけではないのに、気持も前向きなのに、足の筋肉に力が入らない。右の二の腕の辺りも。
こんな事はない。
どうしたもんかなぁ、とりあえず横浜位までは行けそうだから行こう。
品川駅を越えると、旧東海道がかなり長い商店街になっていて、その道を走る。
タイヤが柔らかいので、小さな路面のボコボコを吸収してくれて楽だ。ちょっとしたサスペンションだ。
この時、午前10時半頃。
かなりお腹が減ったが、コンビニとかは嫌だ。
この時間帯だと、川崎市内がランチの始まる今日最初の食事だろう。
旧東海道は徒歩でも自転車でも何度も通っていて、いつも混んでいて気になる店があった。
「増田屋」さん。お蕎麦屋さん。
老舗で、いかにも地域に根付いている感じが外からでも分かる。
月曜日の午前11時台なら、入れるだろうとそれを楽しみに走る。
多摩川橋を渡り、旧東海道で中心部に入ると、そのお店に着いた。入れた。
天そばを頼むべきところだが、欲望に負けてカツカレーにした。
蕎麦屋のカレーの味が好きなのだ。
この時間でもお店はてんてこ舞いで、ホール係りのおばあちゃんがフィットネスをしているくらいに永遠に動いて、料理を出したり、洗い物をしたり、会計をしている。
すげえなぁ。
出てきたカツカレーには、何故かお箸が付いてきた。
何でだろうと思い食べ始めると分かった。
カツが分厚くて、熱くて、とてもスプーンで口の中に放り込める感じではない。
カツはお箸でつまんで口に持っていって、ハフハフしながらそっと一口分を口に入れないと大変なことになる。
昭和の日本の老舗の蕎麦屋さんの文化を丸ごと頂いて、外に出た。
ここからも旧東海道が残っていて、割とのんびり走ることができる。
鶴見、生麦と旧道を走って、左手にキリン工場が見えてくると、旧東海道が一度終わる。
どデカい国道15号線を走る。
ここからは国道も路側帯が広く自転車も走りやすい。
しかし、それにしても、自分の足の筋肉と右の二の腕に力が入らないのは変わらない。
◇ ◇ ◇
今日の筋肉の不調は、前夜に夕飯を作りながら飲みながら、枝豆ばっかり食べて炭水化物が足りないまま寝てしまったから、と最初は思っていたが、カツカレーを食べても治らない。
食べた直後だからこそ、余計に辛いくらいで力が入らない。
とにかく、休憩時間を作らないと、と考えて走る。
大きなマンションの下にはベンチがあったり、時に、病院の入り口にあったり。
横浜駅を越えた。
筋肉に力が入らないけど、疲れているのとは違う。
もっと先に行きたい。
最低でも磯子。
目指すは横須賀。
馬車道、中華街を通り抜け、磯子への道に入る。
磯子から京急線沿いに金沢八景へ。
ここのルートは、自転車が車道を走るには路側帯が狭い印象があり、走るのがヤダなぁと思っていた。でも、今回、登り坂とかで人が歩いていないところでは歩道を選んで走るようにしてみた、良かった。
金沢八景からは、長年海上自衛隊で働いていた後輩に教えてもらった別ルートがあるので、そっちへ。
びっくりしたのは、この辺から自動車の運転が荒くなったこと。
今までは日曜日だったから、それらのトラックが走ってなかったけど、平日だからたくさんのトレーラーや、大型トラックにあおられた。
でも「幅寄せ」(自転車に対してギリギリまで車を威圧的に寄せながら追い抜くこと)の技術が素晴らしくて感動した。どんな車幅感覚なんだ、俺との間何cm?
プロフェッショナル過ぎる。
◇ ◇ ◇
金沢八景から横須賀までに、追浜という地域があり、そこには日産の工場がある。
自分の記憶では、ここの日産工場が閉鎖になるらしい。
ちょうど職員のシフトが終わる時間だったようで、若い人達が、作業服などを着たまま帰る時間だった。
工場が無くなる、という事は、その人達の雇用にも直接関わるし、彼らが行き帰りに立ち寄るコンビニで働いている人などにも影響は複合的に関わってくる。
これからは人手不足の時代だから、彼らがより条件の良い仕事に就いてほしいし、このエリアでこその需要がある新しい企業体が入って来てほしい。
◇ ◇ ◇
体調は特に悪化していないので、横須賀まで行くことにした。
途中のコンビニで、余りに腹が減って、ものすごい甘いコッペパンと、コーヒー牛乳を買って一気に飲んで食べた。
偶然かもしれないけど、この後ようやく、体調的にいつもの自分になった。低血糖?
もう横須賀が目の前。
絶対に走り切れる。
走り切って、横須賀に行く時には必ず立ち寄るフードコートでビールを飲んだ。

プライスレスに美味かった。
ここが一番遠いゴール。
帰りのことを考えてみる。今日は平日だ。
夕方は絶対にラッシュだ。
横須賀で飲んでしまうと、いろいろ大変かも知れない。
居酒屋では飲まずに、帰ることにした。
◇ ◇ ◇
横須賀に何となく来たくなった一つには、地盤が横須賀の小泉大臣が良くメディアに出てきていたのもあったのかも知れない。
間違えて会うかも?とか。
そんな盛り上がりは現地には全くないまま、自転車を分解して横須賀駅から電車に乗った。
横須賀で乗った電車は東京駅からは千葉に向かう。
東京駅で、別の電車で家の近くまで乗り換えるとしたら、東北線にしろ、山手線にしろ、帰宅ラッシュの時間だ。
東京駅で外に出て、そこから家まで走って帰ることにした。
東京駅北口を出て、車道とのガードレールまで自転車を分解した袋を持って行って、袋から出し、自転車を組み始めた。
その車道で、少しだけ右手で停車可能の場所にずっといた黒塗りの車が、ある時、突然フロントライトを明るくした。
私も何が起こったのかと、条件反射でそっちを見た。
黒塗りの車。黒塗りの人間たち。
彼らの多くは車には入らないが、入る人もいた。
一番、その車に入るべき人が中に入ったようで、見送る人に挨拶をしている。
あれっ、この人を見たことある、っていうか、「これからの日本がどうあるべきかと英語で一分で言ってください」と著名YouTuberに言われて、見事に滔々としゃべった、現官房長官じゃないか。
その人は、ガードをしてきただろう人達一人一人に挨拶をして、後部席のウインドを上げかけるとクルマは動き出した。
その目の前には、自転車を組みかけている私がいた。
ウインドを上げかけた林官房長官に、私は頭を下げた。彼も私と目が合って会釈をしてくださった気がしている。
実は、今日自転車で走りながら、林官房長官が総理になり、内閣は若い能力のある男女で構成するのが一番良いのではないかと思っていた。
(追記、翌日思い起こすと、あの方は林官房長官ではなく、小野寺さんだったかも…)
◇ ◇ ◇
長い文章になった。
日帰りでもあっても、長距離の自転車旅は今年はこれで終わりかも知れせん。
5年以上、短パンで自転車で走る時には必ずはいていた厚手のユニクロのアロハ的なズボンとも今日でお別れです。
サドルと擦れる部分が、猿のお尻のように、全く柄のない肌色になってしまいました。コンなのずっと履いていたのか。せめて切れる前に…
今日はこの曲でお別れです
