見出し画像

東京ベイICUが向いている方向は?

東京ベイICUが向いている方向は?

東京ベイ・浦安市川医療センター、集中治療部門の舵取りをしている則末と申します。

皆さんが想像するとおり、集中治療医として必要な知識やスキルは数多くあります。例えば、鑑別診断能力、気道管理、心臓血管外科の術後管理の知識、持続脳波の読み方、ECMOのカニュレーション、患者・家族や他科とのコミュニケーションスキル、などなどです。当科ではこれらの知識やスキルを適切に教育し、実践する環境が整っています。しかし、そもそもこれらの知識やスキルは何のために身につけるのでしょうか?

そうです。患者さんを助けるためです。

では、患者さんを助けるとはどういう意味でしょうか?

おそらく、多くの施設では、「患者さんを助ける」の意味を勘違いするところから日常診療の多くのモヤモヤが生じていると考えています。特に、医療従事者としての自分自身の価値観に基づいて定義してしまった「ミッション」と目の前の患者さんにとっての最善の間で整合性がとれないことから苦悩が発生します。今からそれを説明します。

 患者さんやその家族が、救急車を呼ぶ、または病院に来る理由を考えてみましょう。もちろん「病気を治して欲しい」、「命を助けて欲しい」というのは中心にあるでしょう。しかしそれだけではありません。「痛いのを何とかして欲しい」、「お母さんが苦しそうにしているけど、どうして良いか分からない」などの場合もあります。これらの患者さんの中には、慢性期の疾患が進行し、残された時間が尽きる過程で病院にやってくることが多くあります。その様な患者さんやその家族に対して、どの様な医療行為を行えば「助ける」ことになるのでしょうか?不幸にも予定手術の合併症によって、最大限の治療にも関わらず、確実に亡くなりつつある患者さんを、どうすれば「助ける」ことが出来るのでしょうか?残された時間が短いとしても、四肢を拘束されてでも1分1秒でも心臓を動かし続けてもらうことを望む患者さんもいるかも知れません。しかし、そうではない患者さんも多くいます。そのような患者さんを助けるためには、十分な緩和を行い、苦痛となっている治療を止め、出来るだけ良質の死の過程を提供する必要があります。

 つまり、集中治療医にとって、救命のために適切な医療を行える知識やスキルと、緩和の知識やスキルは車の両輪です。どちらが欠けても、目の前の患者さんにとって最善の治療をおこなう事は出来ません。当院では、世界標準の適切な治療を行った上で、患者さんの価値観を理解し、患者さんにとって最善の治療をおこなう事が出来る文化とシステムが醸成されています。もちろん100点満点ではありませんが、どうすべきか迷った時は、「この患者さんに取っての最善は何か?」を常に医療チームで考えるようにしています。

「偉い人がこう言っていた」、「前の施設ではこうしていた」、は全く重要ではありません。

東京ベイICUにとっての唯一の北極星は患者さんです。