【前編】都城市の”移住支援金最大500万円”は成功か、失敗か。
2023年度、移住相談件数ランキング1位に輝いたのは宮崎県だった。宮崎県の移住相談件数はこれまでは20位前後をウロウロしており“中の上”くらい。それが前年度から相談件数が約3倍に増え、常連の長野県や北海道を大きく引き離してトップとなったのだ。
これは宮崎県の移住魅力度が急に爆上がりしたわけではない。都城市が移住者に最大500万円を支給するという驚きの移住政策を打ち出し、都城市への移住相談が殺到したのだ。その結果、宮崎県への移住相談の4分の3が都城市に集中し、同市は13年ぶりに人口増加となった。
政策の評価はどうされるべきか?
この施策に関しては大きな賛否両論があった。
賛成派の意見には「公約として掲げていた人口増加を早々に達成した」「人が増えることで地域経済の活性化となる」「若者が増えることで賑いが生まれる」などがあった。
逆に反対派の意見としては「お金で移住者を集めるのはいかがなものか」「お金が目当ての人はむしろ移住してほしくない」「移住支援金をもらったのにすぐに転出したにも関わらず返金していない人がいるらしい。」という具合だ。
確かに500万円の移住支援金が大きな要因になったことは確かだ。ただ「お金を配って移住者を呼び込むことは是か否か」という論点は個人の価値観の領域なので、これ以上足を突っ込むことはせず、経済と財政の数字を元に都城市の移住施策を検証していこうと思う。
まず、大前提として政策とは何かの”問題を解決する”ために行うものである。解決したい問題があり、それを解決するために政策を作る。そしてその効果がどれほどあったのかを検証する。その効果が投じた費用を上回る効果だったのかで政策の成否が決まる。想定外の負の効果が生まれた場合は、解決された問題のインパクトと負の効果を天秤にかけ、それでも問題解決のほうがインパクトが大きければ一定の成果はあった、と結論をだせる。
例えば、頭痛薬を飲むと痛みは和らぐ。その一方で眠くなるという副反応が起こることもある。ここで「眠たくなったから失敗だ」という判断はしないはずだ。確かに眠くなるという副反応はあるが、そもそも頭痛を和らげることが目的であり、鎮痛効果があったのであれば副反応である睡魔がその鎮痛効果を上回る影響にない限り成果はあったと判断するだろう。「頭痛薬は眠くなるから意味がない」とはならない。
行政の政策も同じである。都城市の移住政策が成功なのか失敗なのかは「そもそも都城市は何の問題を解決するために行われたのか」が議論の出発点であるべきである。
都城市が移住推進で解決したかったのは「人手不足問題」
では都城市が解決したかった問題は何だったのだろうか。それは「深刻な人手不足環境」である。都城市は人口約17万人で、周辺自治体の人口を含めた都市圏では30万人弱程度のエリアだ。昔から交通の要所として栄えてきた歴史があり、国道、高速道路、鉄道の拠点となっており、盆地の地形から広い平野と水資源に恵まれた地域だ。そのため近年も物流拠点としてのニーズが大きく、倉庫や物流関連の企業から都城市に進出したい、という話は多く寄せられる。しかし、都城市は宮崎県内で最も有効求人倍率は1.68まで上がり(全国平均は1.31)、2022年は宮崎県内で最も採用が難しい地域でもあった。地場企業は事業を拡大できないだけでなく中には人手不足で事業を縮小せざるを得ず、まして企業を誘致するなどは難しい状況だ。しかし企業の都城への進出ニーズは依然として高く、市への問い合わせは定期的にある。ただ、「進出した後に採用できるのか」の見通しが立たないと進出の決定はできない。昔は交通利便性や工業用地の面積、水や電力、固定資産税の減税等が企業誘致で大きな要因だったが、近年は人が採用できるか否かが企業進出の必要条件となっている。都城は交通利便性も敷地面積も優位性があるが、人材採用については先が見通せない。よって人手不足の状況が、地場企業の成長の足かせにもなり、企業誘致のハードルにもなっていたのだ。そのシステムをまとめたのが以下のとおりだ。

中心にある「全国平均を大きく超える人手不足」が地域経済にも財政にも悪影響を与え、それが市民サービスの低下を招き、その結果としてさらなる人手不足に繋がりかねないことが見て取れる。
今回、都城市の異次元の移住者獲得施策はこの「人手不足状況」の改善に注力する施策となっている。それは移住支援金は同市内の企業で勤務すること(※創業も可)、通勤可能エリアからの移住は対象外となっていることからも明らかだろう。
では2023年から始まった移住推進の施策の効果はどうだったのか。都城市は県内で最も人手不足で、全国平均で2倍以上の人手不足の環境だったが、2023年以降有効求人倍率は着実に減り、大きな効果が見られる。移住者の多くが市内企業に就職することで求人の補充が進み、その結果有効求人倍率も低下していくことが容易に想像できる。

この時点で、当初の目的だった地域の人手不足環境の解消については大きな効果が生まれている言えだろう。新型コロナウイルスの影響さえ受けなかった都城市の高止まりした有効求人倍率を大きく下げることができ、企業経営の足かせだった人手不足環境の解決が進んでいることが分かる。
移住支援金 最大500万円の妥当性
では、最大500万円という移住支援金は適切だったのか。
まず、500万円もらえるためには子どもが2名で中山間地域に移住する、もしくは子どもが3名でまちなかに移住する、という場合だ。(こどもの数が増えればさらに100万円ずつ加算)
単身での移住であれば100万円、夫婦で移住であれば200万円。移住支援金の対象になるためには市内で働くことが条件なので、実質的に1人の労働者を100万円で誘致していることになる。
都城市の財政をみると市税の収入(法人住民税、個人住民税、固定資産税、軽自動車税、市町村たばこ税、都市計画税の合計)は約203億円となっており、これを都城市の労働者合計数で割ると約26万円となる。つまり、労働者がひとりが一年で約26万円を市に納税しており、労働者が1人増えることで約26万円の税収が期待できることになる。(ここでは地方交付税の人口、世帯の配分は考慮していないので、実際はもう少し多くの税収が見込める)
よって、労働者1人を100万円かけて誘致しても4年で回収できる計算となっており、移住支援金の返還義務が”5年未満で転出した場合”としている理由にも納得だ。これらは市の財政状況の目線だが、地域経済に目を移すと移住者は日々の生活のなかでスーパーで買い物をしたり、車を買ったり、家を建てるなどの経済活動を行うので地域経済としては大きなプラスだ。単純に計算すると人口1人は年間約120万円の地域内消費を底上げすることになり、財政的にも地域経済的にも好影響となる。
労働者ではない子どもにも100万円が発生することは将来の投資と割り切っているはずだ。そのまま都城市で働き生活をしてくれれば市税だけでも長期では1000万円以上の税収が期待できる(26万円×40年=1040万円)。すぐに回収できる見込みはないが、最悪でも10人に1人が残ってくれればペイする計算となっており、都城市の転出率を考えても十分に回収可能と判断できる。
次回はなぜ膨大な移住支援金を用意できたのか。ふるさと納税の理想的な活用方法について紐解いていく。
次回↓↓
ふるさと納税を安定財源に移管するねらい。都城市の”ストーリーとしての競争戦略”
(暇になったら書きます!)→(暇になったので後編書きました!9/4)
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