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『フィールドノート 声をきく・書きとめる』〜書けないノートが語ること〜


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1.1.本書の基本情報

  • タイトル:『フィールドノート 声をきく・書きとめる』
    著者:WORKSIGHT編集部 (複数名による共著)
    出版社:左右社
    出版年:2023年

1.2.1行サマリー(要約)

  • フィールドノートという「他者の声を聞き、現場を記録する」営みが持つ可能性と難しさを、人類学や社会学などの研究者たちが具体的な体験を通じて描き出した書籍である。

2. 3行で読む

2.1. 3行サマリー(要約)

  • 人類学者、社会学者、写真家などが実際のフィールドワークで体験したことを元に、フィールドノートを作成する過程を具体的に語っている。

  • 「他者の声を聴く」「記録する」「伝える」という行為が持つ困難さや倫理的な問題を、実際の事例を通じて示す。

  • フィールドノートは単なる記録ではなく、自己と他者の関係性を浮き彫りにする重要なツールであることを示唆している。

2.2. 伝えたいこと

  • フィールドノートは単なる記録を超え、自己と他者の関係性を深く理解する手段である。

  • 「聞くこと」と「書くこと」は、客観性の追求ではなく、むしろ主体的かつ倫理的な問題を伴う。

  • 記録は常に不完全であり、その不完全性に向き合うことこそが重要である。

2.3. 当時の常識

  • フィールドノートは客観的かつ科学的に正確な記録でなければならないという考えが強かった。

  • 研究者は現場において中立的かつ透明な存在として振る舞うべきという常識が存在していた。

  • 記録された情報が重要であり、記録者の主観や感情は排除されるべきという前提があった。

2.4. 当時の常識との違い

  • 記録は常に主体的であり、書き手の存在を完全に排除することは不可能であると主張。

  • 他者の声を聴き取るということは、単純に情報収集を超えて相手との倫理的関係を含む行為であることを示した。

  • フィールドノートを「完璧な記録」ではなく、「関係性を記述する手段」と捉え直した。

2.5. 近い人物や思想(時空を超えて)

  • ジェームズ・クリフォード(文化人類学者)

  • ティム・インゴルド(人類学者・哲学者)

  • ポール・ラビノウ(文化人類学者)

  • 理由:これらの人類学者は「現場との関係性」を重視し、調査や記録が単なる情報収集以上の意味を持つことを強調している。

2.6. 衝突する人物や思想(時空を超えて)

  • ブロニスワフ・マリノフスキ(初期文化人類学者)

  • オーギュスト・コント(社会学の創始者、実証主義)

  • クロード・レヴィ=ストロース(構造主義)

  • 理由:これらの研究者・思想は客観的で中立的な観察と記録を重視し、主体的・関係的側面を軽視しているため。

2.7. オリジナリティー(特徴)

  • フィールドノートの記録過程を現場のリアルなエピソードを通じて語ることで、単なる理論ではなく生々しい実践を示している。

  • 人類学や社会学に限らず、写真家や多様な専門家を交えることで、ノートの作成と利用方法に多面的な視点を提供している。

  • 記録を倫理的行為として位置づけ、書くこと・聴くことにおける困難さや責任を深く探求している。

2.8. 現在も伝わるか?

  • 現代においても、他者の声を記録し伝える行為はさらに重要になっており、この本が示す倫理的・方法的な課題は依然として有効である。

  • インターネットやSNSが普及し、他者の声を簡単に共有できる時代だからこそ、関係性や倫理的な課題を意識的に考える必要がある。

  • フィールドワークや現場記録に携わる人々にとって、常に参考になる方法論と実践例を提供しているため、現代においても意義がある。

3. じっくり読む

3.1. サマリー「冒頭言 ノートという呪術」

3.1.0. タイトル

  • 「冒頭言 ノートという呪術」

3.1.1. キーワード

  • 記録の魔力:記録が持つ、現実や人を捉える特別な力を指摘。

  • 主体性:書き手の主観や感覚の重要性を強調。

  • 創発(emergence):記録の個々の要素が組み合わさることで新たな意味が生まれることを示す。

3.1.2. サマリー

  • ノートを通じて人や現実に触れる行為は、単なる情報収集を超えて呪術的な力を持つ。

  • 他者の個性や存在感は、実際に手帳を手に取ることでしか感じられない。

  • ノートは個々の情報を集めただけではなく、その組み合わせから創発的に意味が生じる。

3.1.3. 詳細

  • フィールドノートは書き手と対象者を深く結びつける媒介物であり、その記録を読むことで対象者の存在を間接的ながらも実感できる。書き込まれた文字やスケッチそのものよりも、それらが書き手の感覚や体験を介して記されたものであるということが重要である。個々の記録を超え、記録の組み合わせが生み出す「創発」的な効果にも着目することが求められる。こうしたノートが持つ特有の魔力を、研究者がどのように意識し、現場での記録に取り組むかを問いかけている。

3.2. サマリー「スケーターたちのフィールドノート」

3.2.0. タイトル

「スケーターたちのフィールドノート」

3.2.1. キーワード

  • 身体性:スケートを通じた身体と空間との関係性の探求。

  • 非言語的コミュニケーション:スケーティングが持つ言語化できないメッセージ。

  • パフォーマティブ:スケーティングの一回性と再現性。

3.2.2. サマリー

  • スケーターは都市空間のありふれたオブジェを通して身体的・空間的表現を行う。

  • スケーティングは言語を介さずに都市や建築に対する批評性をもつ。

  • そのパフォーマンス性ゆえに記録が難しいが、そこに文化的な意味が宿っている。

3.2.3. 詳細

スケーターのフィールドノートは、都市の平凡な日常的な要素(階段、手すり、縁石)を、身体の動きを介して新たな価値を与える行為を記録するものである。スケートは安全や規範的な機能をもった都市設備に挑戦し、それらをリスクや不確定性の場へと変化させる。そのため、スケーティングは都市の誰に権利があるのかという問いを身体的に表現することになる。また、スケーターは建築物のデザインよりもその表面の物理性に関心を示し、異なる視点から都市や建築を批評する。このように、スケーターたちは都市空間との身体的対話を通じて、非言語的かつ批評的なメッセージを発信している​。

3.3. サマリー「スケートボードの「声」をめぐる小史」

3.3.0. タイトル

「スケートボードの「声」をめぐる小史」

3.3.1. キーワード

  • 多様性:スケートボード文化に存在する様々な声。

  • キュレーション:雑誌やメディアによる情報選択とその影響。

  • 脱中心化:「正典」とされる雑誌外に存在する多様な声への注目。

3.3.2. サマリー

  • スケートボード文化は特定メディアにより偏ったイメージが形成されてきた。

  • その影響で多様なスケーターたちの声が排除されてきた歴史がある。

  • 著者はメディアの外にある多様で周辺的な声を掘り起こす重要性を指摘する。

3.3.3. 詳細

スケートボード文化の歴史は、『Thrasher』のような特定の雑誌によって規定され、限られたタイプのスケーター(主に白人男性で攻撃的)が前面に出されてきた。しかし実際には、スケーターはジェンダー、人種、性的指向などの多様性を持つ人々で構成されている。著者は雑誌を通じて多様な声を拾い上げることの限界を認識し、雑誌やメディアが取り上げてこなかった「周縁的な声」に耳を傾けるべきだと主張している。これはスケート文化の実態をより正確に記録するために欠かせない視点である​​。

3.4. サマリー「ノートなんて書けない」

3.4.0. タイトル

「ノートなんて書けない」

3.4.1. キーワード

  • 圧倒される瞬間:現場の圧倒的な体験が記録を妨げる状況。

  • 身体的記憶:経験を文字以外の方法で刻み込むこと。

  • 記録の限界:現実の複雑さや情動を完全に記録できない困難さ。

3.4.2. サマリー

  • フィールドワーク中、重要な瞬間に圧倒されてノートが取れない経験が語られる。

  • 著者はこうした瞬間が研究者の身体や感覚に記録されることを重視する。

  • 体験のすべてを文字化できないことを前提として、記録の新たな捉え方を示唆する。

3.4.3. 詳細

フィールド調査の最中、特に感動的な儀礼や劇的な出来事の最高潮では、研究者がノートを取ることが困難になる場合がある。その瞬間に身体や情動が現場の空気に飲み込まれ、言語化不可能な経験となってしまう。著者はこうしたノートを取れない瞬間を否定的に見るのではなく、むしろ研究者自身の身体に経験を「タトゥー」のように刻み込むことを肯定的に捉えている。つまり、言語や文字以外の方法で体験を記録することもフィールドノートの重要な一部であるという視点を提示している​​。

3.5. サマリー「人の話を「聞く」ためのプレイブック」

3.5.0. タイトル

「人の話を「聞く」ためのプレイブック」

3.5.1. キーワード

  • 聴く技術:話し手の意図や表現を注意深く受け止める方法。

  • 言動のズレ:言葉と行動のギャップから真意を理解する視点。

  • 体系化された記録:複数のノートを使った情報の整理法。

3.5.2. サマリー

  • 人の話を事実としてではなく、価値観や意識の表出として聞く重要性が示される。

  • 著者は話と行動のズレに注意を向け、その間に隠れた意味を探ることを推奨する。

  • 複数のノートを用いて、混沌とした情報を体系的に整理する実践的方法を提案する。

3.5.3. 詳細

話を聞く際、表面上の言葉をそのまま受け取るのではなく、その背景にある価値観や隠れた動機を探る必要性が強調されている。著者はメモ用、整理用、日記用という複数のノートを使い分けて、情報を体系的に記録・整理する具体的な方法を提示している。また、話し手の言動にある矛盾やズレに注目し、それを通じてより深い理解に到達する手法を紹介することで、効果的な聴取の手法を示している

3.6. サマリー「生かされたレシピ」

3.6.0. タイトル

「生かされたレシピ」

3.6.1. キーワード

  • 伝承:地域の料理文化や知識の世代間伝達。

  • スケール:20人分という大量調理レシピが持つ文化的意味。

  • コミュニティ:料理を通じた人間関係と共同体形成。

3.6.2. サマリー

  • 青森・津軽地方の伝統料理が、実際に地域コミュニティの中でどのように伝承されてきたかを具体的に記録した章。

  • 伝統料理の分量が大きいことに象徴される、地域の人々の暮らし方や関係性が描かれている。

  • レシピが単なる調理手順を超えて、コミュニティの記憶や文化そのものとして機能していることを示す。

3.6.3. 詳細

津軽地方の料理を記録した『津軽伝承料理』の背景にある、さらに古い小さなレシピ本が紹介される。そこに記載されたレシピは20人分という大きなスケールであり、農家の女性たちが地域行事のために料理を大量に調理していた歴史を示している。このような料理が単なる食事ではなく、コミュニティ形成や文化伝承の手段であったことが描かれ、現在核家族化が進んだ社会と対比して、失われつつある共同体性やコミュニケーションの形を考えさせる章となっている​​。

3.7. サマリー「野音録音と狐の精霊」

3.7.0. タイトル

「野音録音と狐の精霊」

3.7.1. キーワード

  • フィールドレコーディング:野外の環境音を録音する行為。

  • 聴覚文化:「聴くこと」による世界認識の再発見。

  • 非人間的存在:動物や自然の音に人間が与える意味や物語性。

3.7.2. サマリー

  • フィールドレコーディングを通じて環境音を記録することの文化的・倫理的な側面を考察する。

  • 著者自身の体験から、人間と自然との新しい関係性が語られ、聴覚を通じた世界の再解釈が提示される。

  • 録音が持つ植民地主義的な側面にも触れつつ、音を記録する行為の可能性と問題を掘り下げる。

3.7.3. 詳細

フィールドレコーディングにおいて、著者は音を「素材」として扱う行為に潜む植民地主義的側面を指摘する。ロックダウン中の英国で狐と遭遇した体験をきっかけに、人間の活動から切り離された自然と深い交流を感じ、それを「狐の精霊」というメタファーで表現する。人間中心主義的な視覚文化を超えて、音を「聴く」ことで世界を再認識する試みが示され、環境音録音という行為の倫理的・哲学的問いが展開されている​​。

3.8. サマリー「それぞれのフィールドノート」

3.8.0. タイトル

「それぞれのフィールドノート」

3.8.1. キーワード

  • 多様性:各研究者が使うノートのスタイルや記録方法の多様さ。

  • 個人的記録:フィールドノートに残される日常的な出来事や感情。

  • 発見のプロセス:現場での些細な記録が後から重要な意味を持つ過程。

3.8.2. サマリー

  • 様々な研究者が実際に使用したフィールドノートを通じて、その多様性や記録方法を具体的に紹介する。

  • 日常の些細な出来事が、後に研究において重要な手がかりとなることが示される。

  • フィールドノートの意義は記録時には分からないことも多く、後から意味が浮かび上がるプロセスにあることを解説している。

3.8.3. 詳細

この章では複数の研究者が実際に使用したフィールドノートを具体的に紹介し、それぞれが独自のスタイルで記録を取っていることが描かれる。日常的な記録や感情の動き、些細な会話までがノートに記されることによって、後にそれらが重要な研究テーマを浮かび上がらせることが示される。フィールドノートが単なる記録にとどまらず、研究者自身の感性や関心を映す鏡であると同時に、未知の発見へとつながる重要な道具であることが語られている​。

3.9. サマリー「ChatGPTという見知らぬ他者と」

3.9.0. タイトル

「ChatGPTという見知らぬ他者と」

3.9.1. キーワード

  • テクノロジーとの共進化:人間がAIとの対話を通じて新たな存在に変容する過程。

  • 相互作用:AIと人間が相互に影響を与え合い新しい行為者として登場すること。

  • ノートの進化:ChatGPTを「第二の脳」として、記録や思考を進化させる可能性。

3.9.2. サマリー

  • ChatGPTのようなAI技術が人間の知的活動や記録の方法を変えていく過程を考察する。

  • 人間とAIの相互作用によって新しい存在形態が現れることが示唆される。

  • AI技術を「新しいノート」として捉えることで、人間の認識や思考の可能性を拡張することが提案されている。

3.9.3. 詳細

この章では、ChatGPTを例にAI技術と人間の関係が新たな段階に入ったことを論じている。著者は、人間が単に技術を利用するのではなく、AIとの融合的関係に入りつつあることを指摘し、その新たな共生的存在としての可能性を探求する。また、ChatGPTを「第二の脳」として活用することで、人間の認識や思考プロセスを拡張し、新たな思考の飛躍を生み出す可能性が示される

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