赤阪鐵工所(6022)が化ける理由とは? 造船復活の裏で静かに恩恵を受ける“隠れエンジン株”
導入
何の会社か
赤阪鐵工所(証券コード:6022、東証スタンダード)は、静岡県焼津市に工場を構える船舶用ディーゼルエンジンの専業メーカーである。英語社名は「Akasaka Diesels Ltd.」、その名が示すとおり、ディーゼル一本で100年以上の歴史を刻んできた会社だ。
外航貨物船、タンカー、LPG船といった大型商船から、漁船やタグボートに至る中小型船まで、幅広い船種に向けて「アカサカヂーゼル」ブランドのエンジンを製造・販売している。主力製品は、800馬力から1万8000馬力に及ぶ大型ディーゼル機関で、すべてオーダーメイドで設計・製造される点が特徴的だ。
製品ラインアップは大きく二本立てになっている。一つは、自社が独自に開発した4ストロークエンジン(「アカサカ」ブランド)。もう一つは、三菱重工業から事業を引き継いだジャパンエンジンコーポレーション(J-ENG)との長期ライセンス契約に基づいて製造する2ストロークの「UEエンジン」(「赤阪・J-ENG UEディーゼル機関」)である。この2ストロークのUEエンジンは、純国産ブランドとして世界的にも希少な存在で、経済安全保障推進法に基づく特定重要物資としての位置づけも注目されている。
エンジン本体の製造・販売にとどまらず、部分品(スペアパーツ)の供給や修理・オーバーホールといったアフターサービスもビジネスの重要な柱として機能している。会社資料では「部分品・修理工事の売上拡大」が繰り返し成長方針として明示されており、完成エンジンの納入後に長期にわたってアフター収益を積み上げる構造を意図している。さらに、エンジン製造で培った鋳造技術や機械加工技術を転用した陸上用製品(防音室、産業機械部品など)や、廃食油を原料とするバイオディーゼル燃料(BDF)の製造・販売という新規事業も加わり、事業の多層化が進みつつある。
何が武器か
この会社の最大の武器は、「ニッチかつ替えのきかない存在感」である。船舶用エンジン、とりわけ日本の造船所が得意とする中型外航船向けのエンジン市場は、MAN-B&WやWärtsiläといった欧州2大勢力が世界シェアの大半を寡占している。その中で赤阪鐵工所は、J-ENGのUEエンジンの「国内唯一のライセンスメーカー」という立ち位置を確立している。日本の造船所が純国産エンジンを採用しようとするとき、頼れる供給先は事実上ここしかない。
もう一点が、100年以上かけて蓄積してきた保守・アフターサービスの実績だ。エンジンは一度搭載されると船の耐用年数とともに20年超にわたって使われる。その長い「エンジンライフ」を通じて、修理部品の供給や点検・オーバーホールを担い続けることが、既存顧客との関係を深いところでつなぎ留めている。
最大リスクは何か
最大のリスクは、端的に言えば「規模の小ささと利益の薄さ」である。時価総額は数十億円台というマイクロキャップ領域にあり、受注量が数台増減するだけで損益が大きく振れる。利益率の水準は構造的に低く、材料費や購入部品費の価格転嫁がうまくいかないと、あっという間に収益が消える体質を持っている。
加えて、新燃料(アンモニア・水素・メタノール等)への移行という業界全体のトレンドが、既存ディーゼルエンジンの新造需要を将来的に圧縮するリスクをはらんでいる。J-ENGとの技術協定を通じてその波に乗ろうとしているが、移行期のタイムスケジュールが読みにくい点は依然としてリスクとして残る。
読者への約束
この記事を読み終えたとき、以下の問いに自分の言葉で答えられるようになることを目指している。
赤阪鐵工所が「造船復活」の恩恵を受けるとはどういう仕組みか
アフターサービスというビジネスがエンジンメーカーにとって何故重要なのか
J-ENGとのライセンス関係は強みであり、同時に弱みでもある理由
新燃料シフトは脅威なのか機会なのか、あるいはその両面を持つのか
どんなシグナルを監視すれば、この会社の変化をいち早く掴めるか
企業概要
会社の輪郭(ひとことで)
漁船のエンジン修理からスタートし、100年以上かけて「日本の船に乗る大型ディーゼルエンジン」の専業メーカーへと育ち上がった。中型・小型の外航商船、漁船、タンカー向けを中心に、製造から修理・アフターサービスまでを一貫して担う「舶用エンジンの縁の下の力持ち」である。
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