誤解されたタントラ。本当の「性」について
— 男性である私が、女性のために書く5つの手紙・第1話
「タントラ」と検索すると、出てくるのは、性的なサービスの広告ばかりです。
オイルマッサージ、男性向けの誘惑的な写真、「絶頂体験」といった言葉。
検索結果のほとんどが、そういうもので埋まっています。
だから、「タントラ」という言葉を聞いただけで、
少し顔をしかめる女性がいるのは、当然のことだと思います。
でも、本来のタントラは、そういうものではありません。
今日から5週間、毎週月曜の朝に、私はこのことについて書いていきます。
タントラとは、本来なんだったのか。
「性」という言葉が、本来は何を指していたのか。
なぜ、これほどまでに誤解されてしまったのか。
そして、男性である私が、なぜ今この話を書こうとしているのか。
5週間かけて、丁寧に、ほどいていきたいと思います。
タントラという言葉の、本来の意味
タントラは、サンスクリット語です。
語源は「タン(tan)= 拡げる、織る」と「トラ(tra)= 道具、技法」。
合わせると、「拡げるための織物」「広がっていく仕組み」といった意味になります。
紀元前から、インドに伝わってきた、生命と意識についての叡智の体系です。
身体、呼吸、感情、意識、エネルギー。
それらすべてを、別々のものとしてではなく、ひとつの織物として捉える。
そういう、とても静かで、深い思想です。
性的なものを指す言葉では、もともとなかった。
そのことは、まず、お伝えしておきたいと思います。
なぜ、誤解されてしまったのか
20世紀の後半、タントラは西洋に渡りました。
そしてその過程で、本来の体系の中から、一部だけが切り取られていきました。
「性的エネルギーを扱う」という、ごく一部の側面だけが、商業的に拡大されていった。
呼吸も、瞑想も、対話も、生活の作法も、ぜんぶ後ろに置かれて、
「性」という一語だけが、前に出てきてしまった。
そして、その「性」という言葉さえも、
本来の意味ではなく、もっと狭い意味で使われるようになっていきました。
私は、これを誰かのせいにしたいわけではありません。
ただ、こういう経緯で、
タントラという言葉が、今のような誤解にまみれてしまった。
そのことだけは、お伝えしておきたいのです。
本当のタントラが扱う「性」とは
では、本来のタントラが扱う「性」とは、なんなのでしょうか。
それは、生命エネルギーそのものです。
生きる力。
創造する力。
何かを生み出していく、根源の働き。
赤ちゃんが、誰に教わるでもなく、お腹で深く息をしている。
植物が、誰に頼まれるでもなく、上へ伸びていく。
水が、誰に命じられるでもなく、低い場所へ流れていく。
ああいう、まっすぐで、自然で、止められない働き。
それを、タントラでは「性」と呼んできました。
セックスのことではないのです。
もっと広くて、もっと静かで、もっと根源的なものです。
私たちが日常で使う「性」という言葉とは、ずいぶん違うことが、
ここまで読んでくださって、少し伝わったでしょうか。
「性=セックス」という、狭い理解の弊害
現代の日本では、「性」と聞いた瞬間に、ほとんどの人がセックスを連想します。
それくらい、言葉の意味が、狭くなってしまっています。
そして、その狭い意味のせいで、
多くの女性が、「性」という言葉そのものに、
身構えるようになってしまいました。
「性の話をしましょう」と言われたら、ぎゅっとなる。
「性を扱います」と書かれていたら、警戒する。
「性」という一文字を見ただけで、何かを閉じる。
その反応は、当然です。
責められるべきものでは、まったくありません。
ただ、ひとつだけ、お伝えしたいことがあります。
あなたが身構えているのは、「狭い意味の性」に対してであって、
本来の「広い意味の性」── 生きる力そのもの ── ではないかもしれない。
そのことに、もし気づくことができたら、
少し、呼吸が楽になる人がいるかもしれない。
そう思って、私はこのシリーズを書こうとしています。
このシリーズで、私が書きたいこと
これから5週間、毎週月曜の朝に、こんなお話を書いていきます。
第2話:「性」を語ることは、性的なことではない
第3話:性は、汚れたものでも、隠すものでもない
第4話:男性である私が、性を扱うときに気をつけていること
第5話:女性が「性」を取り戻すとは、どういうことか
煽るような言葉は、使いません。
刺激するような描写も、書きません。
ただ、淡々と、丁寧に、誤解を解いていきたいと思います。
男性である私が、この話を書くことに、
「不自然さ」を感じる方もいるかもしれません。
その感覚は、とても大切なものだと思います。
だからこそ、私は静かに、ゆっくり、お伝えしていきたいのです。
私たち男性が、これまで「性」という言葉でしてきたことを、
私自身も含めて、もう一度、見つめなおしながら。
来週の月曜、第2話でお会いできれば嬉しいです。
たつろう
