起業し11年で辿り着いた「起業・副業て、どうやって始めるの?」に対する答え
最近、友人とご飯を食べていたり、ビジネス上の会食の席で、しばしばこのようなことを聞かれることがあります。
「新しいビジネスを始める際、まず何から手をつけるべきなのか?」
「起業のコツってあるの?」
多くの方に聞かれることから、もしかしたらnoteでも興味ある方がいらっしゃるかもと思い、僕の拙い経験ですが、それに対する答えを書きたいと思います。
僕は起業して11年、AI開発という変化の激しい領域でゼロから事業を構築し、規模が小さながらもバイアウトというExit(起業におけるゴール)も経験しました。
今もまだ、その起業した会社である株式会社ROXを経営しています。
この11年で、一応、今日までで一通りの”起業”というプロセスを歩んできたと言えるかなと思っています。
質問をくれる友人、知人、仕事相手の多くは、組織に身を置く人間であり、個人の力で新規事業を立ち上げるという経験は未知の方が多いです。
かつての僕自身がそうであったように、サラリーマンとして働く彼・彼女らが強い関心を抱くのもとても理解できます。
僕も起業前は、どうやって始めたらええんやろう?と思い、今思えば不必要な調査や資料作成をしていました。
今の僕は、こうした問いに対して明確な一つの「答え」を持っています。 いえ、起業してから11年が経ち、ようやく気づけたというべきかもしれません。
今日はその答えを、僕自身の経験に基づいた備忘録として記しておこうと思います。
結論:好きなことを選ぶ。これ以上に重要なことはない。
起業や副業を志す人、興味がある人に「好きなことをやるべきだ」と伝えると、得てして「そういう抽象的な話を聞きたいのではない」という反応が返ってきます。しかし、これは決して精神論ではありません。極めて現実的、かつ本質的な成功戦略なのです。
その理由を、以下の三つの観点から詳述します。
1. 圧倒的な「時間資本」の投下という前提
新規ビジネスを軌道に乗せるために、避けて通れない絶対条件があります。それは、「圧倒的な時間の投下」です。
多くの人は、新規事業において「いかに早くキャッシュを得るか」という効率性を最優先に考えがちです。
しかし、ある程度の時間の投下が必要であるという大前提をしっかり認識しておくと、落ち着いて行動できると言えます。成果を焦らなくて良いのです。
多くの起業未経験者は、キャッシュの早さや、”成功”という不明瞭な定義に囚われて、なかなか行動に移せなかったり、行動をしたとしても、顧客の反応が無いのですぐに諦めたりします。
僕自身も、独立起業してから最初の1円を稼ぐのに14ヶ月かかりました。売り上げが溜まり自分自身に起業した会社から給料を払えるようになるまで3年かかりました。
僕は、完全に未経験の分野で起業したので、かなり時間がかかった方の人間です。
平均値をとれば、きっともっと早い期間で収益を上げられている起業家が多いでしょう。
いずれにしても、強調したいのは、「時間を投下したからこそ、起業が軌道に乗ってくる」という事実であり、それを前提に心構えを作っておくことが大切なのです。
少し切り口を変えます。
僕に質問をくれる友人らの多くが、「いかに早くキャッシュを得るか」に頭が行き過ぎていて、その戦略の初手として多くの方がSNS運用を検討し始めます。
初期投資がほぼゼロで始められるSNS運用によるビジネスを考えるのは、理解できます。
しかし、例えばSNSを介して一瞬で認知を高め、ヒットを生むような行為は、プロ同士がしのぎを削り、一騎当千の猛者たちが入り乱れる修羅の道です。
プロ同士であっても、高い認知を得るような、いわゆるバズを生むことは至難の技です。
このnoteでも、とてもフォロワーの多い人気のnoterがいらっしゃますよね?その中には、生活できるぐらいの収益をあげている方もいることでしょう。そういった方は、当然ながらSNSの成功方法を語ると思います。また、いかにも簡単やで〜という論調で語る方を見かけます。なぜならば、「意外性」を強調して、閲覧数を稼ぐ必要があるからです。
しかし、そういったnote成功者の裏で、どれだけ埋もれているnoterがいるか。
モンスター級に文章が上手く、また内容も濃密で、企画も良いnoterと戦い、その中で認知を得るのは、10年かかってもできない超難問かもしれません。
もちろん、X、Youtubeなどの他のSNSなどでも同様です。
そこでの成功は、無数の敗北者の影に隠れた「生存者バイアス」に過ぎず、再現性は低いと言わざるを得ません。
つまり、一見手軽で簡単に見えるSNS系のビジネスであっても、それなりの成果を出すには、かなりの時間を費やす必要があるという圧倒的な事実です。
この事実に目を背けてはいけません。
楽して稼げることなんて、無いのです。時間という生贄を、成功という神に捧げることが必須なのです。
さて、ここで立ち止まって少し歴史を振り返ります。
歴史に名を残す天才、バッハやピカソは、巨大なヒット作を生み出した歴史上の偉人です。彼らは当時、今でいうバズを生み出した人です。
そんな彼らでさえも、傑作を生み出した時期というのは、人生において「最も多くの作品を生み出した時期」と重なっています。
つまり、「数」が先にあって、その中でハイクオリティのものがヒット作になったという事実です。この辺は、"人生の経営戦略"などの著者で著名な山口周氏の書籍などで詳細に語られています。
あのような偉人ですら、ヒットを計画的に生むことができないのです。数を産むという時間のかかる作業が必要だったのです。
そうであれば、我々にできることは「圧倒的な試行回数」を稼ぐための時間を投下することだけなのです。やはり、時間が絶対的に必要なのです。
でも、ひたすら時間をただ単に費やすって、めちゃくちゃ大変ちゃう?と思われたでしょう。
そうなんです。当たり前なのですが、大変です。
そして、その際、苦痛を伴う作業に時間を費やすことは、自ら望んで地獄に足を踏み入れるようなものです。
嫌なことをずっとせないかん、そうなるともう悲惨です。
だから、僕は”好きなこと”をしたら良いと思うのです。
時間を忘れて没頭できる「好きなこと」を土俵に選ぶことこそが、唯一この膨大な時間投下を可能にします。
そして、時間を投下できたならば、成功確率を最大化させることができます。
これが最も健全な道だと思うのです。
(僕自身は、自分の会社では好きなこと以外しないと決めています)
2. 「プロダクトファースト」から「マーケットイン」への転換
さて、SNSなどでコンテンツを投稿して収益を得る起業を考える人もいれば、同じぐらい数が多いのが、何らかのプロダクトを作って売るビジネスをしようと考える方も多いです。いわゆるモノづくり系のビジネスです。
僕自身も、こっちの部類の起業家です。
AIアプリなどを開発して売るというのが、メインの事業ですので。
AIアプリなどではなくとも、作って売るというビジネスで言えば、パン屋もラーメン屋も、服や鞄を作るのもそうですし、本を書くのも該当するでしょう。
こういう事業スタイルを目指す人にも、明確な僕なりの答えがあります。
まず、この事業スタイルの方にも共通しているのが、「やはり莫大な時間の投下が必要だ」ということです。
ただし、投稿数が多いことが良いといえるSNSなどのビジネスと違い、こういったモノづくりに該当するようなビジネスは、とても注意が必要です。
つまり、時間を費やす前提だとしても、その時間の費やし方がポイントなのです。
ここで重要な視点は、ビジネスの構築手法です。 僕は、自分のプロダクトを世に出すことを前提としながらも、先に「もの」を作ることは推奨しません。
多くの人が陥る罠は、「何が儲かるか?」というプロダクトやビジネスの妄想から始めることです。儲かるというのは結果であって、その一つ手前に最重要なファクターがあります。
それが、顧客の課題です。
つまり、ビジネスの本質とは「対価を支払ってでも解決したい課題」に応えることにあります。この「課題」がキーワードなのです。
儲かるかどうかは、課題解決の対価なので、まずは課題をしっかりと捉えることが非常に重要です。
僕が中学時代の恩師から授かった言葉に、今も胸に刻んでいる一節があります。
「問題を正確に把握したならば、半ば解決したも同然である」
これはビジネスにも通ずる至言です。
では次に、課題を2種類に分けて話します。
顧客が対価を支払う動機は、現状をより良くする「アッパーサイド」の希求があります。一方で、現在進行形で流れている「血」を止めてほしいという切実な願いもあります。
多くの場合、顧客がお金を払いやすい、つまりニーズとしてより強いのは、「アッパーサイドを実現するソリューション」よりも、「流血を止めるソリューション」の方が強いことが多いです。
つまり、「今ある幸せを増やしたい」よりも、「今は不幸なので、せめて普通になりたい」という課題解決の方が、圧倒的に顧客はお金を払うのです。
血が出てる人は絆創膏をいくらでも買うでしょう。それに対して、血が出てない人に絆創膏を売るのは極上のハードルなのです。
このことは、日本の著名な投資家の一人であり、Appleに創業した会社をバイアウトしたことでも有名な曽我 弘氏らも指摘しています。
つまり、「お金を払ってでも解決したい課題は何なのか?」を顧客にしっかり聞くというのが、最初にすべきことであり、また最重要とも言えることなのです。この課題設定が甘いと、売れない物を作るという地獄を見ることになります。
「でも、どうやって他人に課題を聞くんや?」
と思った方も多いでしょう。
そうなんです。重要性が高い一方で、他人の課題を聞くというヒアリングは、そう簡単ではありません。
しかも、一人の課題よりは複数の方の課題から総合的に考えた方が良いです。つまり、かなりの数のヒアリングをこなす必要があり、その点でもやはり時間はかかるのです。
具体的な手順としては、まずは近しい人に悩み、困り事を聞くというヒアリングから始めるのが良いでしょう。
まずは友人や知人に、泥臭くヒアリングを重ね、彼らがどのような課題に苦しんでいるのか、その「止血」のためにいくら支払う意思があるのかを徹底的に問い直すべきです。
何を隠そう、僕の会社で、最もヒットした来店客数予測AI -Hawk-というのは、友人のパン屋や居酒屋の経営者の課題にヒントを得て開発したものだったのです。
つまり、僕が過去11年間で手がけた数十件の開発のうち、成功を収めたものに共通しているのは、僕自身のアイデアではなく、顧客から「これを作ってほしい」と懇願されたものだったのです。
このことは、僕としては起業して最も強烈な学びとなった事実です。
モノづくり系の起業をお考えの方は、ぜひ最初に潜在顧客へのヒアリングをされてください。
モノづくりのビジネスを始めようというぐらいですから、作ることがお好きでしょう。しかし、最初にやるのは、ヒアリングであることを強く推奨します。
そして、このフェーズでも、やはり好きなことを対象にしておくというのは必須です。でないと、ヒアリングも長続きしません。興味のない分野のヒアリングは、極めて退屈なものになるでしょう。
最後に、ヒアリングで聞いて炙り出した「課題」が出てきたら、どう解決したら良いのか?
ここでも、「好き」のパワーを利用するのです。
あなたが好きな方法でその課題を解決したら良いのです。そうすれば、ヒアリングのプロセスは地道な作業でしたでしょうが、課題解決のプロセスは、好きなことに没頭し、時間を忘れるぐらい楽しい時間を過ごすことができると思います。
3. 創業者だけに許された「選定の自由」という特権
もう一つ別の大事な視点を書きたいと思います。
これからビジネスを始めようとする方々に自覚していただきたいのは、創業者が持つ「特殊で、幸福なポジション」についてです。
既存の会社で働いている方々は、そこでやる仕事内容はそこまで選べないことが多いと思います。当然と言えば当然の話ですよね。
つまり、既存の組織において仕事をするということは、すでに構築された「お金の流れ」の一部を担うことであり、構造的にあなたの仕事の自由度は制限されます。
しかし、今まさにゼロから事業を始めようとするあなたは、どのようなビジネスを選び、どのような手法で進めるかを、すべて自分の意思で決定できます。
この「真っ白なキャンバス」を与えられていること自体が、稀有なチャンスであり、幸福なのです。
わざわざ自らの苦手なことや、納得のいかない手法を選択する必要などどこにもありません。自分のやり方で、自分の愛する領域を追求できるという特権を、最大限に享受すべきです。
好きなことであればこそ、時間を忘れて没頭でき、その結果として他者の切実な課題を解決する「絆創膏」を生み出すことができる。このサイクルこそが、僕が11年という歳月をかけて辿り着いた、新規ビジネスを始めるための最も健康的で、最も確実な歩き方です。
今日も読んで頂いて有難う御座いました😃
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