「人格資本」を増やそう
vol.1761
「大事業というものは、厳しい誠実さの上にだけ築き上げられるもので、それ以外の何も要求しないのである」。
この言葉は「鋼鉄王」と呼ばれたアメリカの実業家、アンドリュー・カーネギーの遺した言葉です。
一時的な利益や小手先の技術ではなく、揺るぎない誠実さこそが、社会に大きな影響を与える持続可能な事業を築くための唯一の基盤であることを示しています。
…私はそんな大それたことを考えているわけではないですが、日々、AIに触れていると、改めて「誠実さ」が大切だと感じるのです。
人が人を求める理由
今後、AIがますます人間の“優秀さ”を代替していくと思うからです。
ソフトバンクが7月14日に開催した「SoftBank World 2026」の特別講演で孫正義会長兼社長が
「人間が頂点の生命体の時代は終わるんです。いいか悪いかは別なんです」
と発言したことは、世の中に衝撃を与えました。
〈ITmedia NEWS / 2026年7月14日〉
今の段階でも、AIは想像を超える優秀さで私たちの仕事をサポートしてくれている。
でも、一方で人と一緒に仕事をする楽しみは格別で、特に打ち合わせは盛り上がるわけです(笑)
人は人を求める。
心理学の世界では
●親和欲求:
他者と一緒にいたい、親しい関係を作りたいと願う欲求
●所属と愛の欲求:
孤独を避け、特定のグループやコミュニティ(家族、職場、友人関係など)に受け入れられたいと願う欲求
●愛着(アタッチメント):
特定の他者(初期は親、成長後はパートナーや信頼できる仲間)との間に形成される、強固な情緒的結びつき
という人の心が語られているのですが、これはAIは一時的に補うことはできても、完全には代替はできないと言われています。
例えば、2024年に発表されたAIチャットボットの治療効果に関する系統的レビューとメタ分析が、そのことを物語っているのです。
計3,477人が参加した実験だったのですが、AIカウンセリングは利用開始から「8週間(約2ヶ月)」の時点では、うつや不安の症状が有意に軽減されることが確認されたのですが、「3ヶ月後」の追跡調査においては、うつ病・不安症のいずれの症状に対しても、AIによる実質的な改善効果は検出されなくなりました。
それは「人間の複雑な変化に適応できない」などの理由があるからです。
改めて人間の可能性を感じるわけですが、では、どういう人と接したいかというと、やはり「誠実」で「思いやり」のある人でしょう。
それは今までもそうでしたが、これまではあまり好きではない人でも、その人にしかできないことはお願いする必要がありました。
でも、今後はAIが代わりにやってくれるのであれば、人はわざわざ頼まなくなるかもしれません…
だからこそ、私も心を磨かないといけないという危機感を感じるのです…
そうした中、最近「人格資本」という考えるがあることを知りました。
「人格資本」の重要性
人格資本とは、哲学者で、青山学院大学地球社会共生学部教授である小川仁志さんが仰っている言葉なのですが、誠実な行動を積み重ねることで自分の中に蓄積され、やがて周囲からの信頼や評価として返ってくる財産のことです。
〈東洋経済オンライン / 2026年7月14日〉
例えば
●ミスを隠さず報告する
●約束を守る
●分からないことを正直に認める
●相手によって態度を変えない
といった行動は、一回だけでは大きな評価につながらないかもしれません。
しかし、それを繰り返すと
「あの人は誠実だ」
「都合の悪いことも正直に話してくれる」
「安心して仕事を任せられる」
という人物評価が形成されます。
小川さんは、アリストテレスの
「徳は習慣によって身につく」
という考えを踏まえ、誠実さは一時的な行為にとどまらず、その人の人格となり、周囲からの信頼として評価されると説明しています。
「資本」という言葉が使われているのは、お金や知識、人脈と同じように、信頼も将来の行動を助ける力になるからです。
人格資本が蓄積されている人は、多少ミスをしても「あの人なら故意ではないだろう」「きちんと修正してくれるだろう」と受け止めてもらいやすくなります。
また、過剰な確認や監視が不要になり、仕事を任せてもらえたり、困ったときに協力してもらえたりします。
信頼のある環境では疑いや確認が減り、コミュニケーションやチームの成果が高まる。
反対に、「バレなければいい」「自分だけ得をすればいい」という行動は、短期的には利益をもたらしても、人格資本を少しずつ取り崩します。
一度の小さなうそでも、それが繰り返されれば「あの人の話は確認した方がいい」「責任を任せにくい」という評価に変わり、信用を得るためのコストが高くなってしまう…
つまり、誠実であることは単なる道徳論ではないのです。
英雄の条件
それから、誠実さは相手の心を動かす力を持っています。
かつて、京セラ創業者の稲盛和夫さんが、一生懸命、なんとか相手に分かって欲しいという思いを込めて、自分の言葉で心の底から話すとき、訴える力が強くなり、相手の感動を呼び起こすと仰っていました。
流暢さや雄弁さには欠けるかもしれませんが、これに勝る方法はない。
「相手に本当に自分のことを理解してもらいたいのであれば、感情を分かち合うことです。変に技巧に走らず全身全霊を傾けて、誠実に話すのです。
その誠実さが、聞き手と話し手を結びつけるのです」。
そんな風に、稲盛さんは説いていらっしゃったのです。
誠実さが人を動かす。
かつて、スコットランドの歴史家・思想家のトーマス・カーライルが、このような言葉を遺しています。
「誠実さ、深く偉大で純粋の誠実さこそ英雄的な人の第一の特色である」。
この言葉は、歴史上のリーダーや偉大な功績を遺した人々(=英雄)にとって、最も重要で根本的な条件は「嘘偽りのない誠実さ」であるという意味です。
確かに、「日本資本主義の父」と称された渋沢栄一さんは
「道徳経済合一説」
を唱え、自分の利益だけでなく、社会全体の利益(公益)を豊かにすることを何よりも重んじていましたし、「経営の神様」と称された松下幸之助さんは
「誠実な熱意は、成功の鍵となる重要な要素であり、知識や才能よりも根本的である」
と仰っていました。
やはり、ビジネス界の英雄は「誠実さ」に磨きをかけていたわけです。
「人が人を求める」ということを改めて深く考えながら、私も「人格資本」を増やしたていきたい。
そんな想いが込み上げてくる今日この頃です😊
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!
