日本がAIをリードする未来
vol.1762
富士通は、ファナック、安川電機、川崎重工業と連携し、半導体分野のリーディングカンパニー「NVIDIA」の技術を取り入れたフィジカルAIの社会実装に向けた事業検討を開始。
取り組みはデジタルとフィジカルをつなぐソブリン性(主権性・自律性・独立性)を確保した協調制御基盤の開発を推進するもので
●製造
●物流
●ヘルスケア
など多様な分野での導入加速を目指します。
〈DX magazine / 2026年7月9日〉
フィジカルAI(特にAIロボット)分野は政府の骨太の方針でも、2040年までに官民合わせて10.5兆円が投資される計画であり、まさに注目の的。
この企業連携のニュースが報道された同じ日に、三菱自動車が「国産人型ロボ」を量産することを発表しており、日本のAIロボット時代の幕開けを強く印象づけました。
〈ITmedia AI+ / 2026年7月9日〉
フィジカルAIは今後、製造や物流の現場で早速活躍していきそうですが、そこにつなげて語りたいのが「バーティカルAI」。
なぜなら、汎用AIの覇権争いでは遅れをとっているものの、バーティカルAI分野では勝機があるのではないかと言われているからです。
バーティカルAIへの希望
ちなみに、汎用AIは「ホリゾンAI」とも呼ばれていますが、色々な用途に幅広く使えるAIのこと。
〈Yahoo!ニュース / 2026年7月10日〉
チャット型の生成AIや大規模言語モデルなど、用途を限定しない基盤的なAIを指して汎用型と呼ばれています。
対して、バーティカルAIは、特定の業界や業務に特化してつくられたAIのこと。
●医療
●金融
●法務
●製造
●建設
など、それぞれの分野専用に設計され、その業界のデータやルールだけを集中的に学習しているタイプです。
政策ディスラプティブストラテジストで、早稲田大学招聘研究員の鈴木崇弘さんは
「日本には、長年培われた製造業の現場データや、熟練技術者が持つ「暗黙知」という、世界が喉から手が出るほど欲しい宝の山が眠っている。ネット上のテキストをいくら集めても得られない、この『一次情報』こそがバーティカルAIの最高の教科書になるのだ」
とバーティカル分野での日本の勝機について期待されています。
だからこそ、この分野に官民挙げての集中投資が必要であるとも主張されている。
もう少し、この話が理解しやすい事例として挙げたいのが、三菱電機とAIスタートアップ「燈」の共創です。
GAFAMが得意とする汎用AIではなく、日本の製造業や建設業といった「現場」に特化したフィジカルAIで世界をリードできる可能性があります。
GAFAM…Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoftの頭文字をとった総称。
GAFAMにない日本の“燈”
GAFAMは大量のインターネットデータを学習させ、文章生成や画像認識など汎用的なAIを作ることに長けています。
一方で、工場や建設現場では
●職人の勘
●設備ごとのクセ
●安全管理のルール
など、デジタル化されていない暗黙知が数多く存在。
こうした知識はインターネット上にはなく、現場で働く人と一緒に蓄積しなければAIに学習させることができません。
だからこそ、世界共通のAIでは簡単に代替できない領域なのです。
〈Seizo Trend / 2026年6月2日〉
燈の特徴は、この「現場の暗黙知」をAI化することに徹底的に特化しています。
同社は建設業界向けAIで成長してきましたが、その過程で100種類以上の産業向けAIモジュールや施工シミュレーション技術を開発し、図面解析や工程管理、安全管理など業界特有のノウハウをAIへ組み込んできました。
一般的なAI企業が技術を売るのに対し、燈は「業界そのもの」を理解して課題を解決することを強みにしているのです。
ここに三菱電機が加わることで、さらに大きな強みが生まれます。
同社は長年にわたり工場の制御機器やFA(Factory Automation)、ロボット、鉄道、電力設備などを手掛け、日本の製造現場に深く入り込んできました。
そのため、設備から取得できるデータや制御技術、安全設計のノウハウを豊富に持っています。
つまり
「現場を知り尽くした三菱電機」
と
「AIを爆速で実装する燈」
が組むことで、AIが現実世界の設備やロボットを自律的に動かすフィジカルAIを実現できるというわけです。
さらに重要なのは、この市場には非常に高い参入障壁があることです。
工場や建設現場では、安全性や品質保証が最優先されるため、AIが正しい判断をするだけでは不十分です。
設備制御や法規制、現場運用まで理解し、実際に稼働させられる企業しか参入できません。
そのため、日本企業が長年培ってきた製造技術や現場ノウハウが競争優位になる可能性が高いということなのです😊
未来の都市を日本から
冒頭、NVIDIAの名前を出しましたが、先週発表されたトヨタとの提携にも注目しています。
〈ITmedia NEWS / 2026年7月16日〉
すでに協業を発表していた自動運転に対応する車両開発の加速に加え
●車載ソフトウェアの開発
●工場のシミュレーション
●都市交通に活用するAIの開発
などで協業。
トヨタがAIを活用する目的は、単に業務を効率化することではありません。
クルマづくりから工場、さらには街全体まで、AIを「頭脳」として組み込み、新たなものづくりの仕組みを築こうとしています。
例えば、自動車のソフトウェア開発について言えば、クルマのプログラムは人命に関わるため、厳しい安全基準を満たさなければなりません。
これまでは多くの時間をかけて人が確認していましたが、AIが安全基準に沿ったコードを提案し、ミスがないかをチェックすることで、品質を保ちながら開発をスピードアップできるようになります。
工場でもAIは重要な役割を担います。
トヨタは工場をコンピューター上に再現する「デジタルツイン」を活用し、ロボットの動きや生産ラインの流れを仮想空間で何度も検証できる。
実際の設備を止めたり動かしたりする前に最適な方法を試せるため、無駄なコストを抑えながら、生産性を高めることが可能になります。
さらに、静岡県裾野市で建設が進む実証都市「ウーブン・シティ」では、AIが街全体の状況をリアルタイムで把握し、次に起こることを予測。
道路の混雑や人の動きを先読みすることで、交通をより安全かつスムーズに制御することができるのです。
こうしたAI開発を支えているのがNVIDIAで、同社は高性能なGPUだけでなく、AIを学習させる基盤や仮想空間を構築する技術も提供。
トヨタはそれらを活用しながら次世代のクルマや工場、都市づくりを進めています。
つまり、トヨタが目指しているのは、AIを現実世界のインフラに組み込み、クルマや工場、街そのものをより賢く進化させることなのです。
ウーブンシティという実証都市で生み出された成功事例が、今後の世界の都市づくりのリードモデルになっていく。
そんな未来を想像しながら、今後のトヨタの取り組みに期待したいですね〜
ちなみに、私の専門である小売業でもバーティカルAIの波は訪れています。
富士通がイオンフードスタイルと共同で開発した店舗運営を自律的に支援するAIエージェントについて、実店舗での実証実験を開始したのです。
〈CommerceZine / 2026年7月15日〉
このような日本のリテール特化型のAIエージェントにも注目していきたいと思います😊
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!

