不完全だから愛おしい
vol.1765
日本発の「Kawaii」(カワイイ)は、今世紀に世界へ最も広まった日本語の1つとして、今や世界共通のポップカルチャーの代名詞となっています。
英語の「Cute」という直訳では収まらない
「感情や多様な価値観を含む複合的な概念」
として、そのままの言葉で世界へ定着しました。
そんなKawaiiについて、日本と同様に注目したい国があります。
それが、ポルトガル。
ポルトガルには、Kawaiiの多様性があるのです。
Kawaiiの多様性
フォトジャーナリストの乾祐綺さんは
「ポルトガルに暮らしていて気づくのは、この国の人は『かわいい』という感覚をとても大切にしているということだ」
と仰っていますが、Kawaiiの言葉のバリエーションが本当に凄いのです。
例えば
「Fofo」(フォフォ)
これは、子どもや動物に使われるような、甘くて愛らしいかわいさ。
乾さんは
「やわらかい毛布や、小さなぬいぐるみを見て『かわいい〜』と言うときの、あのトーンに近い」
と解説されております。
〈PHP online / 2026年7月13日〉
じゃあ、赤ちゃんも「Fofo」なんだろうなと思うと、それが違うらしく
「Fofinho」(フォフィーニョ)
になるそうです。
ほかにも、このようなKawaii語があります。
「Bonito」(ボニート)
…「かっこいい」「美しい」「整っていてきれい」というニュアンス。英語で言えば「Beautiful」「「Handsome」。
「Giro」(ジーロ)
…見た瞬間に「いいね」「好きだな」と感じる、あの軽やかな心の動きに近い。英語で言えば「Cool」。
このように、それぞれ異なるニュアンスで使い分けられているそうです。
乾さんは、このポルトガル人の「Kawaii」を大切にする考え方は、単なる美意識ではなく、人生を豊かにする1つの技術だと指摘しています。
不完全なものや古いもの、人の欠点を受け入れ、赦すことでもある。
そして、それは他者だけでなく、自分自身の不完全さも受け入れることにつながるわけです。
完璧を目指すのではなく
「愛嬌がある」
「なんだか好き」
と感じる視点を持つことで、人はもっと肩の力を抜いて生きられる。
ポルトガルの街に漂う穏やかな幸福感は、まさにこの価値観から生まれているということなのです。
不完全さを愛す文化
人々は子どもや動物だけでなく、古い看板や色あせた建物、花、手描きのデザイン、お年寄りのしぐさなど、日常のささやかなものにKawaiiを見出し、その小さな心の動きを大事にしている。
こうした美意識は、街づくりやデザインにも表れています。
ポルトガルでは、少し曲がった文字や手描きのポスター、年季の入った看板など、日本なら新しく作り替えられそうなものも、その土地らしい味わいとして残されています。
美しさの基準は「正確さ」や「完成度」ではなく、「親しみ」や「愛嬌」にあり、不完全ささえも魅力として受け入れる文化が根付いているのです。
不完全さを愛す文化というのは、日本でもKawaiiから広がっていると感じます。
例えば最近、ピングー人気が再燃していることもそうでしょう。
〈Yahoo!ニュース / 2026年7月16日〉
1990年以降に世界155以上の国・地域でテレビアニメが放送されたペンギンのキャラクター。
日本でも1992年にWOWOWで初めて放送され、1993年に地上波にも登場。
そんな30年前に上陸したピングーが今、なぜ人気なのか?
まず、レトロブームとの親和性でしょう。
ピングーを愛した子どもたちは今、30〜40代になっています。
「キダルト」という言葉がマーケティングの世界ではキーワードになっているように、子どもの頃に夢中になったおもちゃや趣味を、大人になっても楽しむ人たちは多い。
実際、日本におけるライセンスエージェント「ソニー・クリエイティブプロダクツ」は、SNS運用を強化し、他ブランドとのコラボレーションやポップアップストア、展覧会などを積極的に展開しています。
その上で、人気再燃の大きな要因になっているのが、ピングーのキャラクター性です。
ソニー・クリエイティブプロダクツは
「単なる「かわいさ」だけではないキャラクター性です。やんちゃで失敗も多く、感情表現が豊かなピングーの姿には、多くの人が自分自身や身近な人を重ねることができるのではないかと思います」
と語っている。
まさに、不完全さという愛おしさなのです。
“悩み”という強い共感
ポルトガルではKawaiiの言葉のバリエーションがありましたが、日本でもKawaiiに別の言葉を掛け合わせて多様性を生み出しています。
例えば
「ブサかわいい」
「キモかわいい」
がそうでしょう。
ブサイクなんだけど何かかわいい。
ちょっと気持ちが悪いんだけど何かかわいい。
そうしたマイナスをプラスにする寛容性があると思うのです。
ちなみに、不完全×Kawaiiということでいえば、まさにサバ番に大きな注目と支持が集まっています。
サバ番とは「サバイバルオーディション番組」で
「モーニング娘。」
「NiziU」
「ME:I」
「HANA」
など、何者でもなかった女の子が成長し、スターになっていくストーリーに多くの人の心が惹きつけられています。
特に、悩みを乗り越えていく姿に多くの共感を集めている。
私はこうした悩みや葛藤、試行錯誤を企業ももっと見せていくと良いと思っています。
その一例が、Webコンテンツの「メディアづくり」や「メディアを使った企業のマーケティング」を行っている「デジタルレトリバー」です。
〈JIJI.COM / 2026年7月23日〉
新たに「メディアの現場から」というメディアを立ち上げたのですが、オウンドメディアを企画し、立ち上げ、運営し、改善していくまでの全工程を公開。
「丸パクリされても構わない」という姿勢でノウハウをオープンにしているのですが、興味深いのが失敗や試行錯誤まで見せているということです。
ノウハウはコピーできても、それを継続的に実践する組織文化や編集力、意思決定のプロセス、そして何よりもどこまでも真摯にメディアづくりやマーケティングに向き合うその姿勢まではコピーできないという強い自負を感じます。
その意識とこだわりを伝える上でも、失敗や試行錯誤まで公開している。
私は「メディアの現場から」を見て、そう思いました🤔
ダイソンは5127台の試作機と、その過程での資金難・家庭の苦労まで公然と語り、「失敗の物語」自体をブランドの核にしていますが、こうした苦しい体験を持っている企業は多いでしょう。
それをリアルタイムで発信していくこと。
その“不完全さ”を公開することが、強いファン心理を生み出していく。
「プロセスエコノミー」という言葉はビジネスの現場で定着していますが、これを実践できている企業は、まだまだ少ない。
「不完全だから愛おしい」
世の中のKawaii旋風の中にあるエッセンスを取り出してみると、次のマーケティングの理想像が見えてくるかと思います😊
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!
