集中できる人は、頭の中の声に返事をしない 【集中力編 第5話】
前回は、
成功者はなぜ、時間泥棒を近づけないのか
という話をしました。
時間泥棒とは、あなたの集中時間に、他人の都合を持ち込んでくる人のことです。
どうでもいい質問。
急ぎではない確認。
自分でなくてもいい相談。
目的のない雑談。
責任を持ちたくないから、とりあえず聞いてくる話。
こうしたものが、あなたの一番いい時間に入り込むと、集中時間は簡単に壊されます。
しかも、それはただの迷惑な話ではありません。
自分の一番いい時間を、他人の低単価な用事に使わせているということです。
つまり、自分の時間を安売りしている状態です。
成功者は、自分の時間を安売りしません。
だから、外から来る時間泥棒を説得するのではなく、そもそも近づけない構造を作ります。
午前中は返信しない。
集中時間は予定に入れる。
相談を受ける時間を決める。
通知を切る。
誰でも声をかけられる状態を作らない。
これは、人を嫌っているわけではありません。
自分の時間を、価値あるものとして扱っているのです。
しかし、ここで一つ問題があります。
外から来る時間泥棒を防いでも、まだ集中できないことがあります。
スマホの通知は切った。
人から話しかけられない場所に移動した。
午前中に大事な作業を置いた。
集中する時間も確保した。
それなのに、なぜか集中できない。
その原因は、外ではありません。
自分の内側にあります。
頭の中の声です。
外の時間泥棒を防いでも、集中できない理由
外からの邪魔を防げば、集中できる。
そう思う人は多いと思います。
もちろん、それは大事です。
誰かに話しかけられ続けている状態で、深く考えることはできません。
通知が鳴り続けている状態で、文章を書くことは難しいです。
急な相談や確認が入り続けている状態で、商品設計や企画を進めることもできません。
だから、第4話では外からの時間泥棒を近づけない話をしました。
でも、それだけではまだ不十分です。
なぜなら、外が静かになった瞬間、今度は自分の頭の中が騒ぎ出すからです。
「メールだけ見ておこうかな」
「少し調べてから始めた方がいいかな」
「あの件、忘れてないかな」
「これで本当に合っているのかな」
「先に簡単な作業を片づけた方がいいかな」
「今日は少し疲れているし、あとでやればいいかな」
誰かに言われたわけではありません。
自分の頭の中から、勝手に声が出てきます。
外の時間泥棒は、扉の外から入ってくる人です。
でも、頭の中の声は、すでに部屋の中にいます。
だから厄介なのです。
他人なら距離を取れる。
通知なら切れる。
電話なら出ない選択ができる。
雑談なら場所を変えればいい。
しかし、頭の中の声は、どこに行ってもついてきます。
だから集中力を作るには、外の時間泥棒を防ぐだけでは足りません。
自分の内側から出てくる声との付き合い方も、覚える必要があります。
頭の中の声は、誰にでも浮かんでくる
まず大前提として、頭の中の声が浮かぶこと自体は、悪いことではありません。
集中できない人だけに、雑念が浮かぶわけではありません。
誰にでも浮かびます。
不安。
確認したいこと。
思いつき。
別の作業。
過去の失敗。
未来への心配。
やらなければいけないこと。
こうした声は、自然に出てきます。
むしろ、人間の脳はそういうものです。
危険を探す。
不安を探す。
楽な道を探す。
すぐに終わる作業を探す。
面倒なことから逃げる理由を探す。
脳は、集中だけのために存在しているわけではありません。
だから、集中しようとした瞬間に、いろいろな声が浮かんでくるのは自然なことです。
問題は、声が浮かぶことではありません。
その声を、すべて自分の命令だと思ってしまうことです。
「メールだけ見よう」
そう浮かんだだけなら、まだ問題ではありません。
「少し調べよう」
そう浮かんだだけなら、まだ戻れます。
「あとでやればいいか」
そう浮かんだだけなら、まだ集中時間は壊れていません。
本当に集中が壊れるのは、その声に返事をした瞬間です。
問題は、声が浮かぶことではなく、返事をしてしまうこと
頭の中の声は、通知のようなものです。
通知が鳴っただけなら、まだ作業は完全には止まっていません。
しかし、その通知を開いた瞬間、作業は中断されます。
頭の中の声も同じです。
「メールだけ見よう」
そう浮かんだだけなら、まだ大丈夫です。
でも、実際にメールを開いたら、返事をしたことになります。
「少し調べよう」
そう浮かんだだけなら、まだ大丈夫です。
でも、検索を始めたら、返事をしたことになります。
「あとでやろう」
そう浮かんだだけなら、まだ大丈夫です。
でも、作業を止めたら、返事をしたことになります。
「先に簡単な作業を片づけよう」
そう浮かんだだけなら、まだ大丈夫です。
でも、本当に別の作業を始めたら、返事をしたことになります。
集中できない人は、頭の中の声が多い人ではありません。
頭の中の声に、毎回返事をしてしまう人です。
声が浮かぶ。
その声に反応する。
作業を止める。
別の行動を始める。
また別の声が浮かぶ。
また反応する。
こうして、集中時間が細かく切れていきます。
本人はサボっているつもりがないかもしれません。
むしろ、何かをやっている感覚はあります。
メールを見ている。
調べ物をしている。
机を片づけている。
別の作業を処理している。
数字を確認している。
でも、本来やるべき一番大事な作業からは離れています。
つまり、頭の中の声に返事をするたびに、集中時間が別の方向へ流れていくのです。
マインドフルネスは、頭の中を空っぽにする技術ではない
第1話では、マインドフルネスの話をしました。
Googleのような企業が、なぜマインドフルネスを取り入れてきたのか。
それは、ただリラックスするためだけではありません。
目の前の課題に集中する力を高めるためです。

ここで大事なのは、マインドフルネスを誤解しないことです。
マインドフルネスとは、頭の中を完全に空っぽにする技術ではありません。
雑念を力ずくで消す技術でもありません。
頭の中に浮かんできた声に気づくことです。
「あ、今、別のことを考えていたな」
「あ、また不安に答えていたな」
「あ、また頭の中の声と会話していたな」
このように気づくこと。
そして、その声と会話を続けず、目の前の課題に戻ることです。
たとえば、作業中に、
「少しメールを見ようかな」
という声が浮かんだとします。
そこで、
「いや、見ちゃダメだ」
「でも大事な連絡かもしれない」
「いや、でも今は集中しないと」
「でも見ないと不安だ」
と、頭の中で会議を始めてしまう。
これでは、もう集中から外れています。
大事なのは、戦わないことです。
「あ、浮かんできたな」
「はい、分かりました」
「でも、今はこれをやる時間です」
そうやって受け流す。
声を消そうとしなくていい。
ただ、気づいて流す。
そして戻る。
これが、集中するための内側の構造です。
「浮かんできたな」と気づければ、声に飲み込まれない
頭の中の声に飲み込まれると、その声が自分そのもののように感じます。
「不安だ」
「やっぱり無理かもしれない」
「あとでやった方がいい」
「今は集中できない」
こう思うと、その声に従ってしまいやすくなります。
でも、少し距離を取ると変わります。
「不安が浮かんできたな」
「あとでやろうという声が出てきたな」
「メールを見たいという声が出てきたな」
「また確認したい気持ちが出てきたな」
こうやって気づくと、その声は命令ではなくなります。
観察対象になります。
これはかなり大きな違いです。
頭の中の声を、自分の命令として聞くのか。
それとも、ただ浮かんできたものとして見るのか。
この差で、集中力は変わります。
浮かんできた声に、いちいち従う必要はありません。
「あ、出てきたな」
「はい、分かりました」
「でも今は、目の前の課題に戻ります」
これでいいのです。
しばらく繰り返していると、声は少しずつ弱くなります。
なぜなら、返事をしてもらえない声は、会話として続かないからです。
頭の中の声は、相手にすると大きくなります。
でも、気づいて流していると、だんだん背景音になっていきます。
頭の中の声と会議を始めてはいけない
集中できない人は、頭の中の声と会議を始めてしまいます。
「これでいいのかな」
「いや、でも違うかもしれない」
「もう少し調べた方がいいかな」
「でも調べすぎると進まないし」
「先に別のことを終わらせた方がいいかな」
「でも、今これをやるって決めたし」
この会議は、一見すると真面目に考えているように見えます。
でも、実際には集中時間を消費しています。
しかも、この会議には終わりがありません。
不安は次の不安を連れてきます。
確認は次の確認を連れてきます。
調べ物は次の調べ物を連れてきます。
完璧主義は次の修正を連れてきます。
気づけば、最初にやろうとしていた作業から遠く離れています。
文章を書こうとしていたのに、検索している。
企画を考えようとしていたのに、他人の事例を見ている。
商品設計をしようとしていたのに、細かい見た目を直している。
改善案を出そうとしていたのに、過去の失敗を思い出している。
これは、頭の中の声と会議を始めてしまった状態です。
集中できる人は、この会議を始めません。
声が出てきたら、
「あ、出てきたな」
「はい、分かりました」
「でも、今はこれ」
と戻ります。
反論しない。
説得しない。
追い払おうとしない。
深掘りしない。
ただ、戻る。
これが大事です。
藤井聡太さんは、声ではなく盤面に戻る
藤井聡太さんの集中力を考えるとき、私たちはつい「長時間考え続けられる力」に目を向けます。
もちろん、それもすごいことです。
しかし、それ以上に大事なのは、考える対象から意識を外さないことです。
将棋の対局には、盤面があります。
持ち時間があります。
相手の手があります。
自分が読むべき局面があります。
集中している人は、そこに戻ります。
不安があっても、盤面に戻る。
迷いがあっても、局面に戻る。
プレッシャーがあっても、読むべき手に戻る。
もちろん、藤井聡太さんの頭の中がどうなっているのかを、私たちが完全に知ることはできません。
ただ、集中力を考える上で大事なのは、ここです。
集中とは、声が一切浮かばない状態ではありません。
声が浮かんでも、対象に戻ることです。
私たちの仕事でも同じです。
文章を書く時間なら、文章に戻る。
企画を考える時間なら、企画に戻る。
商品設計の時間なら、商品設計に戻る。
改善案を出す時間なら、改善案に戻る。
頭の中の声に答えるのではなく、目の前の課題に戻る。
これが、集中できる人の内側の動きです。
盤面から目を離さない。
仕事で言えば、今やると決めた課題から目を離さない。
それが集中力です。
成功者は、自分の不安にも時間を安売りしない
第4話では、成功者は他人に自分の時間を安売りしない、という話をしました。
第5話では、もう一歩進みます。
成功者は、自分の不安にも時間を安売りしません。
他人から、
「ちょっといいですか?」
と言われて時間を渡してしまう。
これも時間の安売りです。
でも、自分の頭の中から、
「これで大丈夫かな」
「少し調べた方がいいかな」
「失敗したらどうしよう」
「あとでやった方がいいかな」
という声が出てきて、それに毎回時間を渡してしまう。
これも、時間の安売りです。
他人に奪われているわけではありません。
自分で、自分の一番いい時間を不安に差し出しているのです。
これは意外と気づきにくいです。
人から邪魔されると腹が立ちます。
でも、自分の不安に時間を使っているときは、真面目に考えているように見えます。
だから危ないのです。
本当に必要な確認もあります。
本当に必要な調査もあります。
本当に必要な修正もあります。
でも、それが集中時間の中で何度も割り込んでくるなら、注意が必要です。
それは前に進むための確認ではなく、集中から逃げるための確認かもしれません。
成功者は、自分の時間を未来を作る仕事に使います。
だから、他人の都合にも流されない。
そして、自分の不安にも流されない。
集中力とは、気づいて、流して、戻る力である
集中力とは、頭の中を無音にする力ではありません。
雑念が一切浮かばない人間になることでもありません。
頭の中の声は浮かびます。
不安も浮かびます。
確認したい気持ちも浮かびます。
逃げたい気持ちも浮かびます。
あとでやろうという声も浮かびます。
それでいいのです。
問題は、浮かんできた声に返事をしてしまうことです。

だから、集中するときに必要なのは、次の流れです。
まず、気づく。
「あ、浮かんできたな」
次に、受け流す。
「はい、分かりました」
そして、戻る。
「でも、今はこれをやる時間です」
この繰り返しです。
気づいて、流して、戻る。
気づいて、流して、戻る。
気づいて、流して、戻る。
集中とは、この繰り返しです。
一度もそれないことではありません。
それても戻ってくることです。
頭の中の声に返事をしない。
会話を続けない。
行動で反応しない。
ただ、気づいて、流して、目の前の課題に戻る。
これが、集中できる人の内側の構造です。
まとめ
集中を壊すのは、外から来る時間泥棒だけではありません。
自分の頭の中から出てくる声も、集中を壊します。
「メールだけ見よう」
「少し調べよう」
「これで大丈夫かな」
「あとでやろう」
「先に簡単な作業を片づけよう」
こうした声は、誰にでも浮かびます。
問題は、浮かぶことではありません。
その声に返事をしてしまうことです。
頭の中の声に返事をすると、集中時間は別の方向へ流れていきます。
だから、集中できる人は、声を消そうとしません。
浮かんできたことに気づきます。
「あ、浮かんできたな」
「はい、分かりました」
「でも、今はこれをやる時間です」
そうやって受け流し、目の前の課題に戻ります。
第4話では、他人に自分の時間を安売りしない話をしました。
第5話では、自分の不安にも時間を安売りしない話をしました。
他人の都合にも流されない。
自分の頭の中の声にも流されない。
目の前の課題に戻る。
この力が、集中力です。
集中力とは、頭の中の声が消えることではありません。
頭の中の声に気づき、返事をせず、流して、目の前の課題に戻る力なのです。
次回は、
集中できる人は、始める前に迷いを消している
というテーマでお話しします。
外からの時間泥棒を防ぐ。
頭の中の声にも返事をしない。
でも、それでも集中できない人がいます。
なぜなら、集中時間に入ってから、
「何をやろう」
「どこまでやろう」
「何から始めよう」
「何をやらないようにしよう」
と迷っているからです。
集中できる人は、始めてから迷いません。
実際に確保できる時間を見て、どこまでやるかを先に決めます。
ただし、それは自分を追い込むためのノルマではありません。
集中中に迷わないための、仮の到達点です。
集中が切れているのに、無理に決めたゴールまで進める必要はありません。
大事なのは、長く頑張ることではなく、集中できる時間を価値ある作業に使うことです。
次回は、集中する前に迷いを消す方法についてお話しします。
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