【ぶら近所】井の頭公園彫刻館・アトリエ館
東京都井の頭自然文化園は井の頭恩賜公園の一部。一般には井の頭動物園の方が通りがいいかもしれない。その片隅、玉川上水に一番近い場所に彫刻家・北村西望(1884~1987)のアトリエと、作品を収めた彫刻館がある。
(東京都武蔵野市御殿山1-17-6)
ここに行くには動物園のゲートを通らねばならないから、入場料がいる。(みどりの日、開園記念日(5月17日)、都民の日(10月1日)は無料)5月は新緑が気持ちいいから、おすすめ。
いつもは動物園に来たついでに寄る感じだが、じっくり見たことが無い(動物を見るだけでくたびれてしまう)ので、今回は動物舎はスルーして、アトリエに直行。

実はアトリエに入るのは今回が初めて。というのも西望は晩年までここに住んでいた。亡くなった場所もアトリエに隣接する自宅だったという。
覚えていないが、多分立ち入りはできないようになっていたのではないか。ここにアトリエがあり、しかも住んでいたとはつい最近まで知らなかった。アトリエが一般に開放された頃は、筆者は仕事が忙しく、公園自体来ることがなくなっていた。
さて、都立公園の中になぜ一彫刻家のアトリエがあるのか。それは長崎の平和記念像の制作のためだった。
昭和25年[1950]長崎出身の北村西望は長崎市から原爆の記念碑の制作を依頼される。しかし西望は記念碑では原爆の被害に遭った長崎だけの問題になってしまうからと、全人類の平和の祈りを呼びかける記念像の制作を逆提案。翌年、正式に記念像の制作を依頼をされた。

(平和の女神)
三鷹駅前にも同じ像がある
当初は北区にあったアトリエで原型づくりをしていたが、実物は四十尺(約12m)にしようと計画していたため、もっと大きなアトリエが必要になった。そこで東京都に相談すると、井の頭自然文化園の土地の使用許可を無償でうけられることになった。
西望は公共の土地を無償で借りるのは道理に反するので、将来アトリエと全作品を東京都に寄付することにした。
結局アトリエ建設の資金が足らず、天井高の関係で像は三十二尺(約9m70㎝)になった。

西望の息子がモデル
橘中佐の像の制作で預かった軍靴を息子が履いて敬礼している
彫刻園で一番カワイイ
アトリエの中に入ると巨大な加藤清正像がそびえたっていた。槍の先は天井に届かんばかり。圧倒される。
筆者が見て回る間、アトリエに入ってくる人はいなかった。じっくりと心行くまで見て回る。ここであの長崎の平和の像が造られたのだ。毎年夏の8月9日、必ずテレビに映し出されるあの像。たぶん、他の国でも。
アトリエの中は撮影禁止なので、パンフレットをご覧ください。

奥の方に平和記念像の1/4の雛形がある
このような小型の雛形やスケッチでイメージを固めていく

隣接する彫刻館A館には、平和記念像の原型になった石膏像が収められている。全体が銀色に塗られているのは保存のためなのだろうか。
長崎の像は台座の上に据えられているので、近づいても高い場所にあるが、ここでは台座は低いのでかなり近づける。階段の踊り場に立てば、顔と大体同じ高さから像を見ることができる。
垂直に上げた右手は原爆を指し、水平に伸ばした左手は平和を表す。
石膏像はたくさんの直線で区切られていた。104個のパーツに分かれていて、それぞれから鋳型を作って板橋区の工房に送り、そこで鋳造された。できたものから長崎に送ったという。
長崎の平和公園の除幕式は昭和30年[1955]8月8日。
像の後ろに西望の言葉が刻まれている。

記念像の制作中、西望は度重なる嫌がらせや誹謗中傷にさらされた。脅迫も受けたという。
たくましい男性像がふさわしくないとか、裸がけしからんとか。
気に入らないから石を投げる。罵声を浴びせる。またはうっぷん晴らし。単なる無責任な悪乗り。それとも、「被爆者」に対する差別感情か?だったら、やだな。
こういうことやる人間、今ならSNS。理解できない。したくもないが。


入ってすぐ正面に平和記念像の原型がある
他にもたくさんの彫刻作品、書、絵がある

静かに作品を鑑賞できる
彫刻館の中も撮影禁止。でもご安心を。園内にもそこかしこに西望の作品がある。

井の頭動物園にはライオンがいないって?
いるよ

架空の獣もいるし

9mくらいあるかな
迫力の巨人!




実は人間(だと思う)

「若も大事件が突発して 地球上のどこかでぼたん一つおせば
どんな大都会でも一瞬で壊滅してしまうだろう
ここらで人類悉くが真剣に考えるべきではないか
人々のする事は人々の幸福の為であらねばならぬと
つくづく思わずには居られない
昭和三十三年八月 北村西望」
「人類之危機」が造られた頃、太平洋のビキニ環礁で水爆実験が繰り返されていた。

クァーーーーーッ!!!!
「快傑日蓮」!!いっつも、この像の前に来ると叱られているような気分。

はい
風呂上がりのオヤジに怒鳴られた、みたいな。

まあまあ
(文中敬称略)
