見出し画像

「ツミデミック」 読書感想記録 7月⑦


一穂 ミチ 「ツミデミック」

大学を中退し客引きのバイトをする優斗。そこへ中学時代に死んだはずの同級生の名を名乗る女が現れ…。「違う羽の鳥」小一の息子、隼が「近所の老人からもらった」と旧一万円札を持って帰ってきた。元調理師の恭一は得意の澄まし汁を作って老人を訪ね…。「特別縁故者」コロナ禍を生きる人々の、刹那の罪を切り取った短編集。

⚪️「もう二度と味わいたくないあの日々を、どうしてか、書き留めておこうと思った。」

初回配本限定についている一穂ミチさん直筆のコメント入りしおり、どうしても欲しくて文庫本購入しました。

仕事や家庭、近所付き合いのほころびなど、誰にでも起こり得る現実の圧力の中で、ふとした選択で一線を越えてしまう瞬間を描く犯罪短編集。
現代を生きる中で感じる「息苦しさ」、日常に潜む犯罪の気配と社会的な閉塞感、人間の心理の揺れ、読んでいると自分にも起こり得る内容ばかり。
本人は全く悪気なく言っていたのだろうと思われる一言、自分の知らない所で誤解や嫉妬が積み重なり、大きな恨みへと変わっていく…。気持ちに余裕がある時であれば、悪く考えなかったであろう一言でも、その時の精神状態によっては悪く捉えてしまうこともある。
色々な意味で「怖さ」を感じた小説でした。

特に印象に残ったのは「特別縁故者」
佐竹さんの恭一へ送った「頑張れよ」の一言に人の暖かさを感じました。

パンデミックが与えた影響はとても大きく、今でも鮮明に記憶に残っています。
感染そのものが引き起こす不安と恐怖、隔離や行動制限がもたらすストレス、情報が引き起こす社会不安と混乱、ネット上に広がる感染者の個人情報の漏出や誹謗中傷、それによる偏見と差別、自殺者の増加、行動制限や休校によって生じる学業の遅れやネット依存、活動が制限されるために起こる高齢者の認知機能の衰え…そんな時代の変化やパンデミックにより影響を受けた暗い気持ちを忘れないために一穂さんは短編集を残したのかと今更気がつきました。

反面、パンデミックを経験後、自分の生活にも変化がありました。以前に比べて自宅で過ごす時間が増え、家族とのコミュニケーションや趣味、自己研鑽の時間が確保しやすくなったような気がします。感染対策も日常に取り入れるようになり、うがい、手洗い、マスクが欠かせなくなりました。自分の身は自分で守る事も大切ですが、情報過多の現代において、何が正しく、何がフェイクなのか、周りの状況を冷静に判断できるようになりたいとも感じた内容でした。
この想いを忘れないようにしたいです。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集