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【短編小説】がんばれ!

 みんなへの「激励の言葉」ですが、考えに考えて、特に不合格が続いたときに思い出してほしい言葉を絞り出しました。
 それは、「がんばれ」です。
 ちょっと拍子抜けした人もいると思います。「がんばっている人に『がんばれ』って言っちゃいけないんだよ」と思った人もいるかもしれません。
 がんばりすぎちゃダメです。これは「食べすぎちゃダメ」と同じで、どんなことでも「すぎちゃダメ」です。限度を超えたら、それはイコール「無理をする」ことになっちゃいます。「無理をする」とどこかが壊れてしまいます。
 それは覚えておいてもらうとして、がんばっているみんなに伝えたい言葉は、「がんばれ」です。
 今回、きっかけとなったのは、夏期講習、すごーくがんばっていたみんなのうちの一人に「夏、がんばったね」と伝えたら、「でも、受からなかったらがんばった意味がないですよね」と言われたことが忘れられなかったからです。いや、覚えておいたからです。その時もその生徒にはいろいろ伝えましたが、この「激励会」で改めて伝えたいな、とその時考えたことを覚えていた……、正確に言えば、思い出したんですけど。
 五時を目指してやってくるみんなを迎え入れるために、いつも四時半から塾の入り口前に立って挨拶をしてきましたよね。そこでのことをちょっとお話しします。
 実は四時半に入り口前に立って、一番最初に挨拶を交わすのは、みんなのうちの一人ではありませんでした。ちょうど四時半過ぎに塾の前を通り過ぎる障がい者の男の子でした。と言っても制服は着ていないので、高校はもう出て、おそらく作業所に通っているのだと思います。会うようになったのは今年度からなので、十八か十九歳だと思います。
 でも、身体は小さく、ぱっと見、みんなと変わらないくらいです。身体の障がいがあり、歩き方はこんな感じです。……、あっ、「マネしちゃいけないんだよ」って習っている人もいるかと思いますが、ちゃんと想像してほしいので、真似します。
 ……今真似してみて、改めて思いますが、こんなに身体を揺らしながら歩くのは、かなりしんどいです。みんなが歩くのと違って、かなりがんばって歩いていると思います。たぶん知的な障がいも結構強いのかなと思います。毎日正確に同じ時間に通ります。おそらく一人で作業所に通い始めたばかりで、ちょっとでも帰りが遅くなったら親御さんはすごく心配するんだろうな、とか考えたりしていました。
 そんな彼が、いつも挨拶してくれるのです。これもあえて真似します。
「こんにつぅわ」
 先生も最高の笑顔で応えます。「こんにちはぁ!」
 みんなを笑顔で迎えるための準備としてちょうどよかったです。
 でもそれ以上に、いつも「がんばってるなぁ」と思って、「よし、ここからが自分の仕事の本番だ、今日も授業、がんばるか」という気持ちになることができていたんです。
 みんなの中には「いい学校に入って、いい仕事を得て、社会に貢献したい」と思っている人も、ちょっとは、いると思います。いるかな?
 それはそれでとても立派なんだけど、ただね、一生懸命に自分の人生を生きていれば、そのがんばりは、必ず誰かのがんばりにつながります。
 考えてみてください。例えば、さっきの彼の「がんばり」のおかげで、先生が授業をがんばることができて、先生のがんばりがみんなのがんばろうという気持ちにつながって、そして今日を迎えたとしたら……。みんなががんばれるのは彼のおかげでもあるってことになるよね。大変な社会貢献です。
 がんばって生きていれば、それは必ずどこかで誰かを「がんばれ」と励まします。その人自身が気付いてなくてもね。
 だから、合格だろうが不合格だろうが、試験をがんばりぬいて、すがすがしい顔で受験会場から出てきてください。そのときちょうど通りかかった人が、「あぁ、今日は中学受験か。みんな大変だな。でも、がんばってるんだなぁ。よし、オレもがんばるか」って思えるような、全力を出し切った晴れやかな顔で、受験会場から出てこられるように「がんばって」ください。
 長くなりましたが、改めて先生からの激励の言葉です。
 がんばれ!


※今日は2月1日。東京・神奈川で中学受験がスタートしました。もし一人でも中学受験生にこの激励が届けられたら……、と思って書きました。

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