福島県白河市の富士見山から本当に富士山が見えるのか? (自由研究)
白河旭高校「知の扉」 社会・数学・理科
福島県の白河市に富士見山があるのを知っていますか?
関東平野では100km以上離れていても富士山が見える場所があります。
では、もっと遠い福島県白河市ではどうでしょう。
白河市には標高437mの富士見山という山があります。
名前からすると、富士山が見えそうですが、本当に見えるのでしょうか。
AIに「白河市 富士見山」と聞くと、
山頂付近からは天気が良ければ遠くに那須連峰を望むことができます。名前の由来となった富士山は、木々が茂り見ることができません。
と返してきました。この文面からすると、木々が茂っていなければ富士山が見えるのでは?と期待がふくらみます。
皆さんは、どう思いますか?
ということで、富士山が見えるか探究してみましょう。
数学的に考えてみる
地図アプリで計測すると、富士見山から富士山頂上まで238.77kmあります。

「ところで、富士山は日本中のどこでも見えるわけではないよね?
それはなぜかな?」
「途中の山に視界がさえぎられるから。」
「それもあるけど、だったらおだやかな海ではどこまで行っても富士山が見えるの?」
「んー。水平線にかくれて見えなくなる。」
「それはなぜ?」
そうです。地球が丸いからです。
それでは、標高437mの富士見山からは、一体どのくらい見えるのでしょう?
これは、地平線問題として、よく数学で話題になる問いです。
一緒に中学数学で解いてみましょう。
ピタゴラスの定理
中学校3年生ではピタゴラス(三平方)の定理を学習します。
地球を輪切りにし、円と仮定して考えてみましょう。

上図のような直角三角形を考えれば、山頂から地平線までの視界を
距離[x]の2乗 + 地球半径[R]の2乗 = (地球半径[R]+山の高さ[h])の2乗
と表すことができます。
ここに、白河市の富士見山(0.437km)、地球の平均半径(6371km)を代入してみましょう。

この計算で富士見山の山頂から見渡せる地平線までの距離(x)は74.2kmであることが導き出せました。
「えっ⁈ そんなに?」と思った方も多いかもしれません。
実際には、周囲に山があったり、市街地の標高も300m以上あったりするので、70km先なんてとても見えませんが、東京スカイツリーの展望回廊は一番高いところで富士見山より13m高い地上450m。計算上の地平線の距離は75.7kmで、実感とも近いと思います。

富士山の地平線と白河市
同じ計算を富士山(3.776km)でもやってみましょう。

地球の半径は同じなので、赤の数値だけが変わります。
これを計算すると富士山から見渡せる地平線までの距離(x)は219.4kmとなります。つまり、白河市は、富士山から見える地平線のはるか先にあることがわかります。
そこで、富士見山の標高が重要になります。
先ほど計算した2つの距離(xa と xb)を足すと293.6km。これは両山頂がお互いギリギリ見えなくなる距離です。

富士山頂から富士見山までの直線距離238.8kmは 距離( xa + xb ) より近いので、2つの頂上を結ぶ線は地球に接しないことがわかります。つまり、理論上は富士山が見えるはずです!
子どもの視界
ちなみに、同じ計算を、地上1mに視点をもつ子どもで計算すると

約3.6kmという答えが返ってきます。

地上に障害物が全くないと仮定した場合、子どもは3.6km先まで見ることができるということです。
実際には大気による光の屈折があり、もう少し遠くまで見えるようです。
中学入試
地平線問題といえばもう一つ。灘中学校の入試で有名な問題を紹介します。
初日の出を2回見る方法についての問題です。
10mののぼり棒に登ると、他の人より何秒早く日の出を見ることが出来るでしょう?
これを三平方の定理を習っていない小学生が解きます。地球の半径や円周など様々な条件が別に与えられたにせよ、すさまじい思考力ですね。
その他の原因を考えてみる
地球の丸み以外に富士山が見えない理由の多くは地形です。

富士山の近くには富士山を越える高さの山がないので、この赤の丸で囲まれた場所に視界をさえぎるものがないか調べてみましょう。
実は富士山が見える場所を地図に示したサイトがあります。

このサイトで白河以南を見てみると、以下のようになります。

矢印の始点にある437の数字は富士見山の標高
これをみると、那須塩原付近で富士山方向を示す黒の矢印にそって赤(富士山が見える場所)が多いことがわかります。また、ほぼ線上の白河市白坂愛宕山で撮影された富士山の写真を確認することができます。実際の矢印は、白河愛宕山の西側のよりなだらかな地域を通っています。

大気の透明度
地形以外にも富士山を見えなくするものがあります。
それは、空気です。
富士山の方向に大きな雲があったら見えませんよね。
雲がなくても、水蒸気を多く含む空気は、光を通しにくくなります。そのため、湿度が高い夏場は遠くのものが見えにくい傾向にあります。
さらに、チリや粉じん・大気汚染物質なども光を拡散、吸収してしまいます。大気中のホコリや排気ガス、黄砂、PM2.5などの微粒子が多い時には富士山を見ることはできません。
まとめ
白河市の富士見山山頂では、木々の枝葉に邪魔されず、冬に理想的な大気の条件がそろえば、富士山が見える可能性があります。
先述の「富士山ココ」では、福島県北部の飯館村と川俣町にまたがる花塚山(標高918.5m)が、直線距離で約308km離れた「富士山が見える北限の山」としています。(写真を見ることができます。)


小峰城でも富士山が見えた?
実は、白河の名城「小峰城」には、富士見櫓がありました。

標高370mの丘陵に造られた梯郭式平山城である小峰城でも、大気汚染のない当時は富士山が見えたのでしょう。(アプリ「スーパー地形」では確認できませんでした。)

織田信長の二番家老として、柴田勝家に次ぐ実権を握っていた丹羽長秀の嫡男丹羽長重が、紆余曲折の末にたどり着いた白河。そして、そこで築城した小峰城。
富士山をかすかに望むことで、白河に居ながら中央とのつながりを意識できたのかもしれません。






(そのうち天気の良い日に撮り直します)
(A.S)
