22/7 3期生『叫ぶしかない青春』:高度な撮影技術で昇華される動画(番外編)
22/7_the 3rd『叫ぶしかない青春』のミュージックビデオにおいて、撮影監督(Director of Photography)を務めたのは渡辺竜平氏(momo inc.所属)である。
ここでは、同氏の手腕が凝らされた本作の高度な撮影技術を解剖する。本作は、35mmフィルムを想起させるアスペクト比や、浦賀ドックの広大な空間を活かしたカメラワーク、さらには光の制御や色彩設計といった多彩な技術の集積によって構築されている。
一コマ一コマに宿る緻密な映像演出が、いかにして本作を「魂の叫び」を体現する芸術へと昇華させたのか。その技術的必然性を追う。
なお、筆者は映像の専門家やナナニジのミュージックビデオ撮影の当事者ではないため、一部技術的な解釈に誤りがあるかもしれない。しかし、一人のカメラ愛好家の眼差しから、この美しい映像の裏側にある技術的必然性をどこまで紐解けるか、挑戦してみたい。
1:(3:2)アスペクト比率
22/7_the 3rd「叫ぶしかない青春」の動画は、縦横の比率が(3:2)となる3:2アスペクト比率を採用している。通常の「16:9」とは異なるものとなっている。
写真・クラシックフィルム比率:ライカの「35mmカメラ」のフィルム規格に由来する比率となっている。スタンダードサイズ(4:3)に近い効果が求められる。横幅が狭くなる動画は、登場人物に「孤独感」「閉塞感」「過去のノスタルジー(記憶)」を強調するときに、クリエイターが好んで使う演出技術となる。



また、「動画における空間のフレーミング(登場人物の配置)」として、横幅が狭いことでメンバー同士の物理的な距離感が強調できる。
この形を採用したのは、本作品に、映画的・写真的なノスタルジーの枠組みを含ませることを意図したと考えられる。
他の多くの作品は16:9アスペクト比率が使用されている。



2:浅い「被写界深度」
「ピントが合っている被写体(ナナニジ メンバー)以外を大きくボケさせる」技術を採用している。映像用語で被写界深度が浅いものとなる。被写界深度については、歩きまわる写真館・ひらいさんのnoteに説明がある。
背景や手前の景色を大きくぼかすことで、視聴者の視線を「メンバーの表情やステップ」だけに100%集中させるものとなっている。

(前方の北原実咲・後方の橘茉奈がボケている)

(後方の桧山依子と背景(浦賀ドック)がボケている)

彼女を表情が生かされる演出となる

彼女にピントが合っている
通常のビデオカメラのように全体にピントが合っている映像(パンフォーカス)とは違い、人間の肉眼のピントの合い方に近い、あるいはそれ以上にドラマチックに人物を際立たせたシーンを数多く採用している。
パンフォーカスとなる作品には「未来があるから」がある。

3:自然光の計算されたライティングと逆光の活用
放射光
画面の真ん中(光源)から、周囲の空間全体へ向かって光の筋が線状に広がっていく現象を捉えたワンシーンがある。

部分日食効果(エッジブロッキング)
太陽を、メンバーの頭、肩、あるいは体のラインの「境界線(エッジ)」に半分だけ重ねて、少し隠すようにして撮影する技術もつかわれている。
ナナニジ 3期生 メンバーに「神々しい輪郭(ハロー効果)」を与える:
重ねた太陽の光線がメンバーの髪の毛や体のラインを後ろから照らすことで、シルエットの周りに光の輪(後光)が美しく浮かび上がるものとなる。

ゴースト
強い太陽光がレンズの中で反射した結果、レンズの絞りの形(丸型や多角形)をした光の玉が画面に写り込んでいる。これを「ゴースト」と呼ぶ。
「感情の揺らぎ」や「儚さ」を表現したものとなる。

シルエットと輝き
あえて逆光気味に捉えることでメンバーの輪郭を光らせ、夕暮れ時のドラマチックな光線を捉え、映像に「エモさ」をプラスしている。

(折本美玲・黒崎ありす)
ベールフレアの利用
太陽などの強い光がレンズに入り込むことで、画面全体(または被写体)に白っぽく霞(かすみ)がかかったようになり、コントラスト(明暗の差)が弱まる現象のことを、映像・写真の専門用語で「ベールフレア(Veiling Flare)」、または「ハレーション(Halation)」と言う。
独特の光のボケ感:横方向に光が伸びるフレア(光の筋)、どこかノスタルジックでエモーショナルな“青春の質感”を演出しています。

フィルターと太陽光
「叫ぶしかない青春」のダンスシーンでは、青空が広がっているにもかかわらず、ギラギラとした力強い太陽の形(輪郭)をあえて見せず、白いフィルターをかけたように優しくぼやけさせている。
実際はどの方法を採用しているのかは、分からないが、ディフュージョン・フィルター(特殊効果フィルター)の使用やオールドレンズ(ビンテージシネマレンズ)の活用などが考えられる。


スモーク撮影
ダンスシーンでは、スモークマシン(フォグマシン)を使い、風の向きを計算して霧を意図的に画面内に「流し込み、漂わせる」技術も使用しているように見える。
映像に止まらない「生々しい躍動感」や「不穏で美しいムード」を与えられるものとなっている。



欅坂46の「不協和音」
スモーク撮影が多用される有名な作品には、かつての欅坂46の「不協和音」のミュージックビデオがある。



太陽光のドラマチックな利用:
差し込む太陽の光(自然光)をコントロールされている。逆光などの太陽光を生かした作品となっている。これらの高度な技術が組み合わさることで、3期生8人の全身を使った魂の叫びのようなダンスパフォーマンスが、単なるアイドル映像に留まらない「1本の青春映画」のような高い芸術性を持って描き出されています
4:マジックアワー撮影
ゴールデンアワー
ゴールデンアワーは、日没の直前になる。空や景色が温かいオレンジ色に染まるものとなる。ドラマチックでエモーショナルな映像となっている。

(折本美玲・黒崎ありす)
マジックアワー
マジックアワーは、ブルーとオレンジが混ざり合う空になる。この映像効果は、「境界線(モラトリアム)の可視化」と言えるかもしれない。子供から大人へ変わる狭間(青春の不確かさ)、光(希望・理想)と 闇(理不尽・現実の障壁)の対峙の表現となるのだろう。
特にグラデーションタイム、日没時、オレンジの空に青いグラデーションがかかってくる時間にあたり、この時に撮影されたものが曲の始めと、終わりにある。


5:ダイナミックなカメラワーク
空間の広がり:歴史ある広大な「浦賀ドック」というロケ地のロケーションを活かし、縦横無尽にカメラを動かしています。
ドローン撮影
上空からダンスシーンは、ドローン撮影により行われている。浦賀ドックという広大な空間において、ドローンを導入したのは、個々のメンバーの動き以上に『孤立した少女たちと、それを飲み込む巨大な構造物』という対比的な空間構成を俯瞰して描くためである。
ドローン撮影は、巨大空間の中で叫ぶ、22/7(ナナニジ)3期生の存在が強調される。

ドローン撮影をした22/7(ナナニジ)の楽曲と言えばかつての「ロックは死なない」がある。

ジンバルなどを駆使した撮影
ジンバルを駆使し、全力でパフォーマンスする3期生の動きにシンクロ。ジンバルによる撮影は以下の動画で紹介されている。(22/7「叫ぶしかない青春」の動画とは関係はない。ジンバル撮影について紹介している動画である。)
滑らかかつ大胆に接近・移動させることで、メンバーのダンスの軌跡に合わせてカメラが『呼吸』しているかのような躍動感を演出している。










斜歩構図(ダッチアングル)
カメラのアングルを水平だけでなく、斜歩構図、通称「ダッチアングル」も数多く採用している。
ダッチアングルは均衡が崩れていることから「不安」「焦燥」「不条理」を視覚的にあらわしたものとなる。



6:リフレクション撮影
浦賀ドックにある、水たまりを利用することで、フレーム内に『現実の被写体』と『反射した虚像』という2つのレイヤーを同時に配置し、限られたロケ地の中で空間的な奥行きを意図的に倍加させている。」
この表現効果は、精神的な「葛藤」と「内省」の表現(内面の視覚化)、水たまりへ写る自分達ということから「青春の儚さ」の表現となる。

7:カラーグレーディング「(色調補正)の切り替え」
ナナニジの楽曲のナラティブの切り替わりによってカラーグレーディングは切り替わり、記憶と現在を象徴的に表しその間を往来する様子が描かれている。
ドラマシーンとダンスシーンの間で、緻密なカラーグレーディングの切り替えがおこなわれている。ドラマシーンとダンスシーンの時間の流れ(順序性)を色で制御する手法となっている。
ドラマシーンは、彩度を抑えたシネマティックで重厚な色調となっている。フィルムルックな色表現となり、35mmの映画用フィルムで撮影したかのような、シャドウ(影)に深みがあり、ハイライトが柔らかく馴染む色調(トーン)に仕上げられている。



ダンスシーンは、人間の肉眼に近いナチュラルで明るい色調となっている。また、エモーショナルな色彩となり、浦賀ドックの錆びた質感や、空気感をカラーグレーディングによって最大限に引き立てている。

8:モーションブラー(残像効果)
シャッタースピードを意図に落とす、あるいはカメラの素早い動きによって「ブレ」を生み出している。
この表現は、「時間が自分の意志とは関係なく、不条理に通り過ぎて行く感覚」を表現するものとなる。
ドラマシーンからダンスシーンへ移るワンシーン




そのため、ドラマシーンから、ダンスシーンの間にモーションブラーによる画像がつくられており、3期生全員は社会的理不尽な世界を象徴するダンスシーンの中に否応なく引き込まれていた。
9:ハイスピード撮影(スローモーション動画)
ハイスピード撮影(つまり、スローモーション)は刹那の美しさの切り出しが表れる。多髪や衣装が強い風になびく瞬間を1秒間に多くのコマ数で捉えている。
「叫ぶしかない青春」で使用されている場所には、イントロとアウトロでメンバーのなびく髪や服を強調して映し出しているのかもしれない。

10:効果音:フライバイ音(飛行機)
イントロでは、航空機などの動体が、高速で通り過ぎていく(飛び去る)効果音(フライバイ音)がいれられている。
この一回性のフライバイ音(飛行機の通過音)は、オリジナル曲が内包していたポップスとしての予定調和をあえて破り、聴き手の防衛本能を鮮やかに解き放って、3期生の放つ生々しい衝動の『共鳴者』にするという、圧倒的な覚醒の力を楽曲に与えている。

ミュージックビデオの演出
22/7_the 3rd「叫ぶしかない青春」は、これまでの22/7(ナナニジ)の作品とは、異なる演出が数多くみられる作品である。ミュージックビデオを見る私は、かつての名曲のミュージックビデオを思い出す。それは 1995年の、My Little Lover「Hello, Again 〜昔からある場所〜」である。
レトロ感のある色合い、多方面からの画面の移り変わり、カメラワーク、モーションブラー、逆光、上空からの撮影、リフレクション撮影など、今回の22/7(ナナニジ) 3期生「叫ぶしかない青春」のミュージックビデオと共通する演出が見えてくる。数多くの撮影技術を駆使して、その芸術性を高めることに成功した作品といえるだろう。
撮影監督 渡辺竜平氏について
22/7_the 3rdプロジェクト第3弾「叫ぶしかない青春」のクリエイティブチームの撮影は以下の通りになる。
MV制作クレジットによる撮影(Director of Photography):渡辺竜平(momo inc.所属)
映像の特徴:全編を通して35mmフィルム映画を彷彿とさせる「3:2アスペクト比率」を採用。強風の中で差し込む複雑な自然光を巧みにコントロールしたことで、本作の圧倒的な映像美が作り上げられている。
天気と強い風に恵まれた中でのダイナミックなダンスシーンが特徴となっている。巧みな撮影技術により、差し込む太陽の光(自然光)をコントロールして、エモーショナルでダイナミックな映像美を作り上げたものとなる
渡辺竜平(DoP)によって作成されたものには以下の有名な作品がある。
櫻坂46:『UDAGAWA GENERATION』MV
櫻坂46:『The growing up train』MV
まとめ
22/7(ナナニジ)3期生『叫ぶしかない青春』のミュージックビデオは、卓越した撮影技術の集合体として、単なるアイドル映像の域を遥かに超えた「短編映画」の質感を確立した。
35mmフィルムを想起させる比率から、光と影の繊細な制御、そして浦賀ドックという巨大空間を舞台にした動的なカメラワークに至るまで、その全てが3期生の衝動を際立たせるための必然的な選択として機能している。
技術への深い理解と探究こそが、作品に宿る「魂の叫び」をより鮮明に解き明かす鍵となることを、今回の分析を通じて確信した。
追記1
22/7_the 3rd「叫ぶしかない青春」の考察記事はこちらにまとめまている。
追記2
用語等で誤りがあれば、コメントで教えていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
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