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呼吸の音だけが、残っていた夜

夜遅くまで、ひとりで机に向かっていた。
大学受験の勉強をしていたころの話だ。

部屋は静かで、
時計の音だけがやけに大きく聞こえた。

ページをめくっても、頭に入ってこない。
このまま続けても意味があるのか、
そもそも、どこへ向かっているのかも分からなくなっていた。

ふと、
この孤独に押しつぶされそうだ、と思った。

そのとき、何かを考えるのをやめた。
答えも、先のことも、いったん全部脇に置いて。

すると、自分の呼吸の音が聞こえてきた。
吸って、吐く。
ただそれだけ。

状況は何も変わらなかったし、
不安が消えたわけでもない。
それでも、心のざわつきは、
少しだけ静かになっていた。

あの夜のことを、今もときどき思い出す。
うまくできない夜は、今でもある。
それでも、
呼吸の音を思い出すことがある。

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