【サボテン君とキノコ君の物語】第42話 “休む”の許可証
🌵これまでの物語の概要(第1話〜第40話)
砂漠のはしっこで「どうせぼくなんて」と立ち止まるサボテン君。迷い込んだキノコ君、子キノコ君、風の精フウリ、光る石ポロロ、宇宙人シン先生と出会い、トゲの痛みや孤独、言えなかった本音を少しずつ言葉にしていく。青の日の過ごし方、心の取扱説明書、未来新聞、感謝マンダラ――自分を責めない選択肢が増えるたび、胸の色が変わっていく。けれど「言えなかった理由」の扉はまだ閉じたまま。次に開く鍵は、サボテン君自身がずっと隠してきた“幼い記憶”かもしれない。
第42話 “休む”の許可証
昼下がり。サボテン君は、砂漠の端っこの日陰にいました。
昨日の「がんばれ」が刺さった余韻がまだ残っていて、体の奥がじんと疲れている。何もしていないのに、疲れている。そういう日がある。なのに頭のどこかで、見張り役がささやく。
――怠けるな。
――動け。
――このままだと置いていかれる。
サボテン君は、思わずトゲを縮めました。縮めても、痛いものは痛い。
「……ぼく、休むのが下手なんだ。」
言うと、急に恥ずかしくなって、砂を見つめる。
キノコ君がそっと言いました。
「休むのが下手って、真面目な人あるあるだよ。」
「休むと罪悪感が出るんでしょ。」
サボテン君はうなずいた。
「うん。休むと、“ちゃんとしなかった”って思う。」
「休んだ分、取り返さなきゃって焦る。」
「で、休んだはずなのに、ずっと心が走ってる。」
ポロロが青く光った。フウリが風を弱める。基地のしるしの方向から、落ち着く空気が流れてくる。
サボテン君は胸に手を当てる。
「ただいま。」
シン先生がやってきて、砂に小さな紙の絵を描きました。
そこに大きく書く。
休む許可証
「休むってな、サボテン君にとって“行動”なんや。」
「止まるんやなくて、戻る行動。整える行動。」
サボテン君は目を丸くしました。
休む=怠け、じゃない。
休む=整える。
そう言われるだけで、胸の青が少し薄くなる。
子キノコ君が石の上からのぞきこんで言います。
「許可証って、だれが出すの?」
シン先生が笑う。
「自分や。」
「他人のOK待ってたら、一生休めへん。」
その言葉が刺さった。
サボテン君はずっと、人の顔色で休んできた。
“迷惑じゃないか”“甘えじゃないか”
そうやって確認して、結局、休めなかった。
シン先生が、許可証の中身を書き足します。
①体のサイン(眠い/重い/息が浅い)
②心のサイン(焦り/イライラ/涙が出そう)
③今日の最小単位(水を飲む/日陰に入る/3分目を閉じる)
「休むのは一日丸ごとやなくてええ。」
「“最小単位”で休めたら、罪悪感は小さくなる。」
サボテン君は、そっと言いました。
「……ぼくの最小単位、今日は……」
少し考えてから、答える。
「“誰にも説明しないで、日陰にいる”。」
キノコ君が優しくうなずいた。
「それ、いいね。説明って、エネルギー使うもんね。」
サボテン君は目を閉じました。
風の音が聞こえる。砂の匂いがする。
ポロロの光が、青から橙へ、ゆっくり揺れる。
見張り役の声が小さくなる。
――休んでも、置いていかれない。
――休んでも、価値は減らない。
でも、その瞬間、胸の奥で別の気配が動いた。
“置いていかれる”という怖さの根っこ。
それが、扉の向こうで息をしている気がした。
サボテン君は許可証を胸の中にしまって、つぶやきます。
「休めたら……次は、あの怖さの正体を見たい。」
風が、その言葉をそっと運んでいきました。
――つづく。
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「どうせぼくなんて…」
そう思いながら、毎日ちゃんと頑張っている人にこそ、
知ってほしい場所があります。
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