【美容サロン経営者に取材】指名ゼロから月間140名へ、予約困難なサロンを築いたおもてなしと経営哲学
「特別な才能なんてなかった」と語りはじめた川瀬梨乃さん。
特に目標もなかった20代前半を過ごしながらも、迷いと葛藤を繰り返しながら積み重ね、いまでは月間140名以上が指名する人気アイリストに。
現在は愛知県名古屋市内でサロンを経営するかたわら、アイリスト向けのオンラインサロン事業も展開。個人事業主やサロン経営者を目指すアイリストに向けて、集客・技術・接客の実践ノウハウを体系的に提供し、次世代の育成にも力を注いでいます。
本記事では、川瀬さんのキャリアの原点から、サロン経営に至るまでの想い、「また来たい」と思わせる、おもてなしの哲学を本人の言葉で丁寧に紡ぎます。
川瀬梨乃
美容専門学校卒業後、まつげサロンでの経験を積み、愛知県名古屋市にてアイラッシュ&アイブロウ専門サロン「Rill」をオープン。
現在は株式会社LUNEの代表取締役としてサロンを経営する傍ら、月間140名以上から指名を受けるトップアイリストとして活躍。顔タイプ診断1級の資格を活かした提案力と、丁寧なおもてなしで多くのリピーターを獲得している。
小規模サロンの独立や経営を支援するオンラインサロン事業も展開。ホットペッパーやSNSを活用した集客術など実践的なノウハウをわかりやすく届けている。

<フォロワー4000人超えの川瀬梨乃さんのInstagram>
「やりたいことがなかった」 消去法で選んだ、美容の道
ー本日はよろしくお願いいたします!まずは、自己紹介をいただけますでしょうか?
川瀬:アイリストの川瀬梨乃です。まつげパーマやアイブロウなど、目元のデザインを中心としたアイサロンを経営しています。サロンは「技術・知識・おもてなし全てにおいて、スタッフ全員が最高水準」をコンセプトに、丁寧なカウンセリングを通じて、お客様一人ひとりの魅力を引き出すデザインを追求しています。
ー川瀬さんは高校卒業後、美容の専門学校に進学されましたよね。美容業界を選んだきっかけを教えてください。
川瀬:正直にいうと消去法でした。周りの友人は大学進学や就職をするなか、私は「これがやりたい」というものがなかったんです。興味があることといえば料理か美容くらいで。料理も少し勉強しましたが、計量や細かい作業が面倒に感じて「これは向いてないな」とすぐに感じ、美容を選びました。なので、美容師やアイリストとして強い憧れがあったわけではありませんでした。
ー意外です。最初からアイリストを目標にしてたわけではなかったんですね。
川瀬:はい、全然(笑)おしゃれや美容には興味がありましたが「なんとなく好き」で選びました。
お客様1人ひとり向き合う仕事がしたかった、わずか半年で美容師を辞める
ー最初は、美容師を目指されていたのですか?
川瀬:はい、専門学校を卒業して美容院に就職しました。ただ実際に働き始めてみると、想像とは全然違って。美容師は、同じ時間帯に複数のお客様を抱えて、数分ごとにお客様を行き来することが多いんです。特にアシスタントのうちは、一人のお客様を最初から最後まで担当できるわけではなく、細切れになってしまいます。「ありがとう」といったお客様のリアクションや、感動の瞬間に立ち会えないことが多くて、やりがいを感じられませんでした。
ーそれで、わずか半年で転職しようと思ったのですね。次にアイリストを選んだのはなぜですか?
川瀬:アイリストなら、一人のお客様を最初から最後までじっくり担当できるからです。「ありがとう」と言ってもらえる瞬間に立ち会えると思いました。
ただ、母にはとても反対されましたね。当時はまだ、マツエク業界自体が確立されておらず、技術を身につけられるのか、将来性ある仕事なのか不安に思っていたようです。反対を押し切ってアイリストへと転職しました。

小さな違和感が動き始める、会社員から個人事業主へ
ーアイリストとしてのキャリアをスタートしましたが、しばらくは「やる気がない時期」が続いたそうで・・
川瀬:最初の3年くらいは「早く結婚して家庭に入りたい」と思っていました。今思えば、ポンコツアイリストですよね(笑)
ーそこから気持ちが変化した、きっかけがあったんですか?
川瀬:副店長へと昇格し、サロンの集客やリピーター施策の会議に参加するようになったのが大きな転機でした。「自分だったらもっとこうするのに」「なんでこうしないんだろう」と考えることが増えたんです。でも意見が反映されることは少なくて…。
そこで「自分でやってみよう」と決意して、個人事業主としてチャレンジしました。
ー個人事業主として働く決断をされたとき、不安はありませんでしたか?
実際に、どのようにスタートされたのでしょうか?
川瀬:もちろん不安はありました。当時は、指名してくださるお客様も月に数人しかいなかったので、ゼロからのスタートだったからです。個人事業主としてキャリアをスタートさせたサロンでは、アイリストは私だけでその他は美容師ばかりでした。経験も豊富な方が多く「ここにいていいのかな」と思うほどでした。
人気メニューをインスタグラムで展開、お客様からもアイリストからも好評
予約ゼロから2ヶ月で満席サロンに、予約困難な人気アイリストへ
ーどのようにして、集客やリピーター獲得に取り組まれましたか?
川瀬:まずはホットペッパービューティーの更新とInstagramの発信に全力を注ぎました。施術の写真やビフォーアフター、ちょっとした豆知識などをこまめに投稿して、自分の強みやこだわりを徹底的に発信し続けたんです。
予約が入らない日も珍しくありませんでしたが、その時間を無駄にせず、ひたすらSNSの研究や投稿、ホットペッパーの改善をしていました。技術面でも、インスタで上手なアイリストさんの投稿を隅々までチェックしたり、書籍を読んで学んだりして、とにかく「今できることは全部やる」と取り組んでいました。
ー努力の甲斐あって、徐々にお客様が増えていったのですね。
川瀬:最初の1ヶ月は予約が入らず不安な日々が続きましたが、2ヶ月目から状況がガラッと変わりはじめました。予約が埋まるようになっていき、予約満席の日が増えていったんです。3ヶ月後には「2ヶ月先まで満席のサロン」へと成長しました。
実際にご来店くださったお客様からは「イメージ通りだった」「想像以上」といった声をいただけて、その口コミが新しいお客様へとつながっていきました。
スタッフからも「川瀬さんバズってるね!」「予約困難な人気アイリスト」なんて言われるようになって(笑)コツコツ続けてきたことが形になってきた実感があり、とても嬉しかったです。「もっと頑張ろう」と思える原動力にもなりました。
ーたった2ヶ月で満席に…すごいスピード感ですね。急激に予約が伸びた理由はなんだと思いますか?
川瀬:「発信内容と実際のサービスとの一貫性」です。
Instagramやホットペッパービューティーで伝えているサロンの雰囲気や施術のこだわりが、実際のカウンセリングや接客、仕上がりにしっかり反映されていること。このズレのなさが、お客様に安心感を与え「信頼できる」と思っていただけたポイントでした。
口コミもとても大事でした。お願いして書いてもらうのではなく「心から満足したからこそ、誰かに伝えたい」と思っていただけるような体験を作ること。そのために、カウンセリングから施術、アフターフォローまで一切手を抜かず、120%のサービスを心がけました。

ー口コミの一貫性や質は、どうやって意識されていましたか?
川瀬:意識したことは「期待を超える体験」です。具体的には「本音」を引き出す丁寧なカウンセリングをすることです。
たとえば「パッチリした目元にしたい」という希望があった場合でも、単にその通りに施術するのではなく「なぜそうしたいのか」「どんな印象を求めているのか」を詳しくヒアリングし、理想のイメージを理解したうえで最適なデザインを提案します。イベントや撮影の場合がある場合は、日程に合わせて最適な施術タイミングも提案することがあります。
さらに、万が一仕上がりに気になる点があれば、私から「お客様はご満足いただいているかもしれないですが、私は気になるのでもう一度ご来店いただけませんか」とお声がけし、交通費も負担して対応していました。それくらいお客様に対する誠意と納得感には徹底的にこだわってきました。そうした姿勢が口コミへとつながっていきました。
ー素晴らしい姿勢です。その後は、サロンのマネージャーや新店舗立ち上げにも携わられたそうですね。
川瀬:私の集客を受けて、アイリストの人数を増やし、新店舗も立ち上げることになりました。私は新店舗の店長やマネージャーを任されるようになり、最終的には4店舗を統括する立場になりました。
ただその中で「自分のサービスやこだわりを、もっと自由に・自分らしく形にしたい」という思いもどんどん大きくなっていきました。
ー「自分らしさを形にしたい」と思われるようになったのですね。
川瀬:スタッフの育成やサロン運営も楽しかったのですが、「自分のやり方で、試してみたい」という思いが強くなっていったんです。
また、自分の売上やスケジュールにも限界が見えてきて「これ以上成長するためには、起業するしかない」と感じるようになりました。ほどなくして自分のサロンをオープンしました。
パニック障害を経験したからこそ気づけた、おもてなし哲学
ー今のサロンのコンセプトや大切にしていることを教えてください。
川瀬:「技術・知識・おもてなし全てにおいて、スタッフ全員が最高水準」を大切にしています。
どのスタッフが担当しても「このサロンなら絶対に大丈夫」と思っていただけるよう、スタッフの教育やサロン全体の雰囲気づくりに力を入れています。一人ひとりのお客様にとことん向き合い、満足感や安心感、非日常感を感じていただけるように心がけています。

ーお客様からは「とにかく丁寧で親身」「ここまで気遣ってもらったのは初めて」といった声が多いと聞きます。大切にしている「おもてなし」について、教えてください。
川瀬:私は元々、技術面で突出していたわけではありませんでした。だからこそ「人柄」と「おもてなし」で勝負しようと決めたんです。
意識しているのは「潜在的なニーズを引き出すこと」です。
最初のカウンセリングでは「どんな悩みがあるのか」まで踏み込んでお話を伺います。理想のイメージだけでなく、ライフスタイルや普段のメイク、過去の施術経験なども詳しくヒアリングし、お客様自身も気づいていない魅力を引き出すことを心がけています。
ーそこまで丁寧にカウンセリングしてもらえると、お客様も安心できますね。
川瀬:そう言っていただけるのは本当にうれしいです。
私自身、過去にパニック障害を経験したことがあって「施術中の体勢がつらい」「まぶしさが苦手」といった不安を感じる気持ちがすごくわかるんです。自分自身が繊細な性格だからこそ、お客様にもできるだけ安心して過ごしていただけるよう、同じ目線で寄り添うことを大切にしています。
たとえば、施術前にベッドの角度や姿勢を確認したりと、お部屋の圧迫感を和らげるために、カーテンを開けたりと工夫をしています。
また、初めてのお客様は緊張がほぐれるように、お名前を呼んでお迎えし、ちょっとした会話でリラックスしてもらえるよう心がけています。
安心して過ごしていただける空間づくりも、大事な仕事なんです。
気にしすぎる性格が唯一無二の価値に、ファン化の秘訣
ー4年以上、月間指名140名が続いているそうですが、お客様の多くが川瀬さんを指名する理由はなんだと思いますか?
川瀬:信頼関係を築けているからだと思います。
お客様とは、友達にも言えないような悩みや不安を、私には自然と話してもらえるような、そんな関係でありたいと思っています。そのために、初回から細かいところまで気を配り、お客様の気持ちに寄り添うことを何より大切にしています。
施術が終わった後も「何かあればいつでもご相談ください」とLINEやSNSでサポートをしています。まつげや眉毛はふとしたときに気になるパーツなので、ふとしたときに「川瀬さんに聞けば大丈夫」と思ってもらえるように、小さなことでも誠実に対応しています。
実際にLINEやDMで相談をもらうことも多いですし、施術後のアフターフォローが信頼につながっているのだと思います。

ー他サロンでは体験できない、川瀬さんならではの「おもてなし」ですね。
川瀬:気にしすぎるという一見するとネガティブな性格が、結果的に「唯一無二のおもてなし」として伝わっているのなら、本当にありがたいことだなと思います。
始まりは消去法でもいい、これからのキャリアとサロン経営
― 現在はオンラインサロン事業も展開されていると伺いました。具体的に教えていただけますか?
川瀬:オンラインサロンでは、これから独立を考えているアイリストや、指名数を伸ばしたい方を対象に、集客・接客・技術を軸にしたプログラムを提供しています。
たとえばホットペッパービューティーやInstagramを活用した集客戦略、顧客満足度を高めるカウンセリング設計、技術の見直しや時間管理の方法など、私自身が現場で実践し成果を出してきたノウハウをパッケージ化し、体系的に発信しています。教育事業としてもさらに発展させていく予定です。
・Instagramではアイリスト向けの情報も発信、オンラインサロンは現在2期の募集が満員に達している
ーサロン経営や今のスタッフに対しては、どのようなビジョンを描いていますか?
川瀬:一番は、サロンのスタッフが「仕事もプライベートも充実した人生」を送れるようにサポートすることです。
スタッフ一人ひとりには、それぞれの夢やライフプランがあります。私は、仕事を通して人生も輝かせてほしい」と願っています。そのため、スタッフとは、定期的に1on1MTをして「5年後はどんなライフスタイルを送りたい?」など、仕事だけでなく人生全体の目標を一緒に考えながら、働き方やキャリアプランを提案しています。
また、美容業界は常に進化しているので、私自身も新しい知識や技術を学び続け、常に前向きにチャレンジし続けるサロンでありたいと思います。
ー最後に、noteを読んでいる方やサロンのお客様へメッセージをお願いします!
川瀬:まずは、日頃からサロンに足を運んでくださっているお客様に、心から感謝の気持ちを伝えたいです。いつも本当にありがとうございます。皆さまの存在が、私にとって何よりの励みです。これからも「来てよかった」と感じていただけるよう、おもてなしの心と技術の向上に全力で取り組み続けます。
そして、今まさに何かに挑戦しようとしている方や、独立を考えている方には「完璧じゃなくてもいいから、まずは一歩踏み出してみてほしい」と伝えたいです。私のキャリアは、消去法からのスタートでしたが、一つひとつ積み重ねていけば、道は拓けます。
華やかに見える起業やサロン経営にも、実は多くの悩みや迷いがあって、毎日が挑戦の連続です。だからこそ、乗り越えるたびに得られる学びや喜びは大きい。そんなリアルな一面も含めて、前向きな一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。
編集後記
「特別な才能なんてなかった」と笑いながら話す川瀬さんですが、その言葉にすべてが詰まっているように思いました。
なにかを始めるとき、つい「確信」や「才能」を求めてしまいます。しかし、川瀬さんの歩みはむしろ、確信のなさや迷いから生まれたもののように感じました。
「大きな目標はなくてもいい、完璧じゃなくてもいい」「目の前にある小さな違和感に気づくこと」それが、人生を少しずつ動かしていくのかもしれません。
川瀬さんのおもてなしは、接客の域を超え相手の人生にそっと寄り添うものでした。
取材・構成・執筆/木全彩花 (「たしかなこと」ひとり編集部)
