カンボジアを生きる わたしたち ~カンボジアで出逢ったステキな女たち、男たち、そしてわたし~
美しい星空の夜だった。
当時はプノンペン大学の大学生で、プノンペンの中心部から少し外れた、北西地域の下町の一角で下宿をしていた。その家に泊まりに来ていた親友のアニーと、屋上に登って星を眺めていた。満天の星空。プノンペンの街がまだ暗く、そんな星空が当たり前に見れる時代だった。
「ユキ。私ね、現世の私の人生は、もうこれで仕方ないと思っているの。でも、来世はきっと幸せなところに生まれて、勉強して、いっぱいいろんな事が出来る人生を送りたい・・・この人生はつらいことが多かった・・・」
彼女はそう言った。
まだ20代半ばになるか、ならないかの、私と同い年の女の子。屋上の手すりに体を持たれかけて、空を見上げながらそう話す、星に照らされた彼女の顔を見ながら、美しいなと思った。
カンボジアというと、地雷とか、戦争とか、貧困とか、そんなイメージしかないのが、普通の日本人の感覚。ようやくその頃になって、アンコール遺跡や文化を紹介するテレビ番組や雑誌、写真集が出たところ。そんなカンボジアに、私はやってきた。日本のテレビや新聞では見られない、そしてガイドブックや写真集でもあまり見られない、カンボジアの、ごく普通の人々の生活、笑顔、涙、愛、そういったものが見たかったから。
そして私がこの26年間で見たもの、聞いたもの。それは「カンボジアを生きる人たち」の、ため息と希望の声だった。
海外体験、国際協力談みたいなものを26年前からさかのぼって書こうとは思っていない。私がこの26年の間にカンボジアで感動したもの。私が見たこと、感じたこと、苦しみ、喜びを受けたこと。それを書きたい。それが「カンボジアを生きるわたしたち」なのである。
