【創作】黒田製作所物語 第15話(最終話) 遺志
虎は死んで皮を残し、人は死んで名を遺すという。
黒田虎一は何を遺したのだろうか。
戦後の瓦礫から生まれた黒田製作所は、現在、郡山中央工業団地に敷地面積8000㎡、工場を二棟、それぞれ1000㎡を越える面積の堂々たる棟を有している。それぞれの工場内には大型構造物、重量製缶が生産可能な設備、また医療機器やサニタリーにも対応したステンレス製品の専用の製造ラインもある。
設備だけではない、その品質の高さは「技術の黒田」として鉄鋼業界・溶接業界の雄として名を馳せている。
この工場や名声が虎一の遺したものであろうか。これらが遺産であることは確かだが、虎一最大の遺産は、晩年の口癖である
技術に終わりはない
誇り高き職人の精神なのではないだろうか。
この精神は、今を担い次代を拓く黒田製作所の職人達に受け継がれ、輝き続けている。
顧客のためにより良い製品を。妥協なき精神から生み出されるものは製品というよりも作品なのかも知れない。
中世、欧州の職人たちが工房を立ち上げ、日用品から芸術品を創り出したことにも似ている。現代、高級ブランドといわれる企業が世界に流通する高級品を創り出す光景にも似ていて、黒田製作所の製品は一流職人の心を込めた作品と表現すべきではないだろうか。
妥協を許さず、顧客により良いものを届けるために、全員が汗をかき智慧を絞り力を合わせる。
時代が令和を迎えると、無慈悲な天は黒田製作所に対し、令和元年台風19号という試練を与え、億を越える被害を生じさせ二ケ月を越える復旧作業を課した。しかし黒田製作所社員はもとより、虎一の弟子の系譜を担う協力企業、様々な取引先、金融機関などの協力を得て危機を乗り越え、さらに業績を伸ばし地域への貢献を続けている。
今日も「日本一きれいなステンレス専用工場」と大きく描かれた工場では、多士済々の職人たちが、真剣な眼差しで、時に笑顔を交わしながら、魔法のような技術と職人の精神を惜しみなく作品に注ぎ込んでいる。
工場の内部には、社員一人一人の夢や目標が掲げられている。家族を大切にする者、技術を高める者、地域に尽くす者、様々な夢に溢れている。
この先、時代が進み、社会環境が変わるとしても、様々な苦難に見舞われたとしても、黒田製作所は郡山という地に在り続けるのだろう。
技術に終わりはない。そして人の夢に終わりはない。
黒田虎一の精神とともに、人の夢とともに、黒田製作所は溶接道を歩み続ける。
(黒田製作所物語 完)
第一話
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