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holy_finch3076
【創作】 半月 #シロクマ文芸部
透明な月を見上げた。青空に浮かぶ半月は白く気高い孤高の美しさをしていた。そして目には見えない透明なもう半分もあるはずで、それを見ることができたら、この恋が成就するような気がしたんだ。
もちろん半月が姿を現すことはなく、軽く首を振ってから前を向き駆け出した。唐突に走り出す高校生は不審者に見られるかもだけど、とにかく走りたかった。
クラスでは人気がある彼女が隠している秘密を僕は知っている。彼女の明るさはもちろん魅力的だったけど、誰にも見せない透明な影があることを知り、ますます彼女のことを知りたいと感じてしまった。それでも明るく振る舞おうとする意志の強さに惹かれてしまった。
駅に着いて、来た道を振り返ると月も追いかけてきていた。まるで一緒に動いているように思えるけど、遠く離れていて手が届くことはない。
もう一度、月を見上げた。何だか泣きたくなってきた。
「光一君、一人で何をしているの。変な感じ」
間違えるはずがない、君塚さんの声だった。
その後にどんな話をしたかは思い出せなかった。
「ベランダで一人、何をしているの。変な感じよ」
後ろから声をかけられて、過去から現代に引き戻される。
悪戯を仕掛けた子どものような表情は、あの頃と変わらぬ可愛らしさ、いや、昔と違い幸せに満ちた満月のような美しさをしていた。
(おしまい)
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