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セックスは繁殖のためだけにあるのか【1】1500種の動物が示す不都合な事実

「セックスは子孫を残すための行為である」——そう習った記憶がある人は多いだろう。
だが実際には、動物界を見渡すと、繁殖とは無関係な性的行動が驚くほど広く観察される。
1500種以上でその記録があり、これはもはや例外ではなく普遍的な現象と言っていい。

ではそれらはすべて同じ現象なのか。
そうではない。中身を見ると、まったく異なる4つのカテゴリに分類できる。

■ 誤発火

最もシンプルなのがこれだ。犬が人間の足にマウントしようとする行動がわかりやすい。
性的興奮の発散先が適切に絞れていない、いわばターゲティングの失敗である。
相手との関係構築にも、社会的な機能にも繋がらない。
コウモリの一部でも同様の行動が確認されている。
本能的な衝動が誤作動した結果であり、進化的な意味を読み込む必要はない。

■ 快楽目的

イルカやマカク類(オナガザル)では、自慰行動や無生物への性的接触が観察されている。
これも社会的機能は薄い。
ただ誤発火と違うのは、明確に快楽を求めている点だ。
繁殖とは切り離された「気持ちよさ」という動機が存在する。
人間以外にもそれを持つ種がいるという事実は、快楽という概念が人間固有のものではないことを示している。

■ 支配・地位確認

ゴリラのメス同士、ニホンザルのメス同士、ライオンやヒツジのオス同士で観察されるマウント行動がこれにあたる。
同性間がメインで、「私の方が上位だ」という確認行動の延長として機能する。
繁殖とは無関係だが、社会秩序の維持という明確な目的がある。
ただしここで注意が必要だ。
1500種で観察される非繁殖的性行動の大半はこのカテゴリか誤発火であり、「動物も社会的にセックスを使う」という一般化は正確ではない。

■ 社会的絆形成・緊張緩和

そしてここが本質的に特殊なカテゴリだ。
異性間を含む全ての組み合わせで、緊張の緩和・絆の形成・関係の修復といった社会的機能としてセックスが使われる。
これが確認されているのは、ボノボと人間、そしてチンパンジーにその傾向が一部見られる程度だ。
ボノボは群れ内で対立が生じると、セックスによって緊張を解消する。
食物をめぐる争いの後、見知らぬ個体同士の接触時、ストレスがかかる場面——そのたびに性的接触が起きる。
オス同士、メス同士、異性間を問わず、あらゆる組み合わせで。これは本能的な衝動の誤発火でも、快楽の追求でも、支配の確認でもない。
社会を維持するための道具としてセックスが機能している。
人間が第4カテゴリに属することは、改めて言うまでもないだろう。

■ 問いを立て直す

「なぜ動物は繁殖以外でセックスをするのか」という問いは、実は問いの立て方が雑すぎる。
1500種で起きている現象は、4つのまったく異なる理由によるものであり、一括りにできない。
より正確な問いはこうだ。「なぜボノボと人間だけが、異性間で、繁殖とは無関係に、社会的機能としてセックスを使うのか」と。
この問いに答えるには、まず人間がいつ・なぜ裸を見て興奮するようになったかを遡る必要がある。
その鍵は、17万年前に生まれたある発明にある。


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