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医師である前に、一人の人間として

最近、
「コーチング」という言葉を耳にする機会が増えた。

ビジネスの世界では、
人の行動変容をどう引き出すか、
どうすれば自分で考えて一歩を踏み出してもらえるか、
という視点が当たり前になりつつあるらしい。

その話を聞きながら、ふと思った。

医師こそ、この視点が必要なのではないか。

医師は、診断ができる。
治療方針を立てられる。
薬を処方できる。

それは当然で、前提だ。

けれど現実の医療現場では、
正しい診断、
正しい治療、
正しい処方、
それだけでは人はなかなか変わらない。

薬は飲まれないこともある。
生活習慣は簡単には変わらない。
通院が途切れることもある。

医療に関わる時間が長くなるほど、
この現実を何度も突きつけられる。

だから最近、僕は考える。

診断できる医師、治療できる医師、だけでは足りない。
患者さんの行動に影響を与えられる医師でありたい。

ほんの少しでもいい。
考え方が変わる。
行動が変わる。
「やってみようかな」と思ってもらえる。

そのきっかけをつくれる存在。

そのためには、
医学知識だけでは足りない。

どんな言葉を使うのか。
どんな姿勢で患者さんと向き合うのか。
そして、医療者としてだけでなく、
一人の人間としてどう生きているのか。

結局のところ、
「この人の言うことなら聞いてみよう」
と思ってもらえるかどうかは、
医師という肩書き以前に、
人間としてどう見えているかにかかっている気がしている。

だからこそ、僕は
言葉だけで語る医師にはなりたくない。

行動で示したい。
生き方で示したい。
自分自身が変わり続ける姿を、ちゃんと見せたい。

人間としての奥深さ。

それが、誰かの小さな行動変容につながるなら。

医師として、
そして一人の人間として、
これ以上に面白い仕事はないと思っている。

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