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2026/4/16 永遠と刹那のカフェ・オ・レ【新歓】

 昨夕、用があって普段あまり通らない1年生の校舎の近くを通った。いろんな部活やサークルが、必死に新入生勧誘活動をしていた。のぼりなどを立てて目立とうと躍起である。

がんばれ在校生。負けるな新入生。

 この光景を見て、ふいに脳内にKIRINJIの「だれかさんとだれかさんが」が流れた。というか脳内に流れたので実際にLINE MUSICで再生してイヤホンで聞きながら歩いた。いい曲だ。

 「だれかさんとだれかさんが」は6人バンド体制となったKIRINJI第二期の最初のアルバム「11」の2曲目に入っている曲である。僕は大学入学以来キリンジ/KIRINJIのファンだが、ここ1年くらいはこの第二期が特に気に入っている。この体制が長続きしなかったのは惜しい。特に弓木英梨乃さんの声はKIRINJIの音楽によく似合う。またコラボしてもらえないだろうか。

 「だれかさんとだれかさんが」はサビの歌詞がほとんど変わらず4回繰り返される。そのなかで、「〇〇さんと〇〇さんが」の部分だけが変化する。「原田」と「森田」はともかく「相楽」とか「若宮」とか、そんなに多くない苗字のチョイスが逆にリアリティを演出している。B'zの「いつかのメリークリスマス」で主人公が「君の欲しがった椅子を買った」のと同じ原理である。そして例を3つ出したところで「だれかさんとだれかさんが」と一般化する。春は誰もが恋をする。そう感じさせる良い歌詞だ。

 で、この歌はつまるところ春の部活の歌だ。たぶん厳密には高校の科学部とかなのだと思うけど、多くの文化部が共有できるような雰囲気の歌ではないかと思う。僕は浅黒い顔面に似合わず、ずっと文化部・サークルで生きてきた。だから昨夕、新歓の光景を見た僕の脳内にはこの歌が流れたのだ。

 そして、僕は4年前の春を想った。先月卒業するまで続けていた、アカペラサークルに入った頃のことだ。


 僕は吹奏楽部には入らないことにしていた。事前に大学が持っているチューバはもう埋まっていて、入るとしたら自分で買わなければならないことを聞いていたからだ。また、オーケストラをやる気も起きなかった。オケのチューバはつまらない(全国のオケでチューバを吹いてるみなさんごめんなさい)。だから、なんか音楽系のサークルに入りたいな、そしてなるべくお金のかからないやつがいいなとぼんやり考えていた。

 あと、僕は新歓に若干出遅れていた。大学での生活、札幌での生活に慣れることに必死で、サークルにまで気が回らなかったのだ。一応、オンラインで募集されていた「歩く会」という旅行サークルには入部してみた。でもさっそくなんか違うなあと思っていた。自分の予定が空く日が、行きたい旅行先であるとは限らない。それなら1人で旅行をした方がいいと思った。なにしろ自分で行きたいところはたくさんあったのだ(とはいえ、結局いろいろあって僕は学部1年目をほぼ旅行せずに終えてしまったので、入会して先輩にわけのわからないところに連れて行かれていたほうが有益な1年だったかもしれない)。

 そんなある日、授業が1つ休講になった。僕は大学のシステムを見ていなかったので、それに気づかずに教室に向かってしまった。そこには同じ学部のTがいた。Tは僕に「サークルは決まったか」と聞いた。僕はいままでの顛末を話し、何か音楽系のサークルに入りたいがお金のかからないものがいいと言った。するとTは「僕が入るアカペラサークルのライブが今夜ある。来ないか」と言ってきた。

 僕はアカペラというものにそれまでほとんど触れてこなかった。ペンタトニックスのカバーした「ボヘミアン・ラプソディ」を聞いたことはあったため、アカペラと聞いてあああれかと思った。アカペラは、たぶん身体があればできる。お金は確かにかからなそうだ。実に魅力的な誘いだった。


 ライブを見に行ってみた。カッコよかった。それで、もう入会を決めてしまった。僕は何度か衝動で重大な決断をしてきたが、アカペラサークルへの入会もそのひとつだった。


 今日はバイトに行きがてら、中島公園を散歩した。最近画面を見過ぎて目が疲れていたので、目の保養(字義)のために。中島公園は四季折々の魅力がある。何度歩いても良い場所だ。

柳の垂れ感、メロい。
伝わらないかもしれないけど、水の流れが速い。

 春の札幌は、雪が溶けて川の水が増える。冬の間、積もったまま微動だにしなかった水分子たちは、急速に流されて海へと旅立っていく。まるで4年間を同じ部室で過ごした同期たちのように。

中島公園内のコンサートホールKitara

 僕の趣味の一つに、友達のサークルイベント巡りがあった。Kitaraには友人がいたオーケストラを見に何度か来た。他にもお笑いを見たり、アイドルダンスの応援に行ったり、写真展を見に行ったりした。その度に「違うサークルに入る道もあったな」と思う。さすがにハロプロのコピーダンスはしないけど。それでも、まあ僕はこのサークルにいてよかったのだろうと思う。

 僕がいたサークルは180人くらい部員がいて、そのなかで各々が4~7人のバンドを組む。僕をアカペラサークルに誘ってくれたTを含め、バンドメンバーにはいろいろと迷惑をかけたという自認がある。それでもやはりバンド活動は楽しかった。過去の失敗からサークル内恋愛はしないと決めていたので一部のメンバーの(僕のかなり保守的な恋愛観から見れば)ややラディカルな恋愛を横目で見ていたが、その代わり先輩後輩男女問わず多くの友人を作ることができた。あまりに人数が多いのと、僕が後半あまり精力的に活動していなかったので、結局一度もバンドを組むことがなかったメンバーはたくさんいる。それでもたまにあった時には会話を楽しめる、まさに「弱い紐帯」であり、それが心地よかった。やっぱり良いサークルだった。これからも同期会が開催されたら行きたいと思う。ぜひやってほしい。


 中島公園を出て、バイトに行きがてら東光ストアでカフェオレを買う。カフェオレというと、また思い出すキリンジ(第一期なのでカタカナ表記)の1曲がある。名盤「3」収録の「アルカディア」である。

僕はクラフトボス派。あなたは?

 このミュージックビデオがあまりに面白いので、全人類見てほしい。サルトルの『存在と無』の引用から始まるフランス映画みたいな小洒落た映像で、なぜこんなウルトラシュールなオチになってしまうのか。最高だよ堀込兄弟。

 この歌は、僕が「エイリアンズ」しか知らなかったキリンジ/KIRINJIにハマるきっかけになった1曲だ。まさにサークルの先輩、僕が1年目の時の4年目のバンドが歌っていたのだ。最高にカッコよかった。

 先輩のバンド自体は最高にカッコよかったのだけど、この「アルカディア」はよく聞いてもすごく変な歌詞である。特に一番謎なのがここ。

背で見るあの明日が
悲しみを
彩ってみせたら
永遠と刹那のカフェ・オ・レ
冬の空を満たす

迫り来るあの明日が
消えてゆく
昨日より魅せたら
テンポの乱れた風、風
冬の宇宙も焦がす
ほら、もう空が開く

https://www.uta-net.com/song/29965/

 僕はこの歌詞がちっともピンと来なかった。「永遠と刹那のカフェ・オ・レ」ってなんだよ、と思っていた。

 しかし、サークルでの活動を終え、学部時代の4年間を俯瞰したとき、この歌詞が実にピンとくるようになった。友人たちと過ごした日々のきらめきは、僕の記憶のなかに永遠に残るだろう。それでも、4年間は刹那的に過ぎ去った。昨日は遠くへと消えていく。明日の新たなきらめきは昨日の別れの悲しみを彩る。その永遠と刹那は僕のなかに両立し、混ざり合い、濃厚なカフェ・オ・レとなりつつある。なるほどと思う。キリンジは偉大だ。

 「アルカディア」をはじめ、サークルでの活動を通じて知った曲やアーティストはたくさんある。サークル活動は僕に友人との出会いだけではなく、無数の素敵な曲との出会いももたらしてくれた。そこで出会った曲のいくつかは時に僕の心の支えになった。

 やはり、このサークルは良いサークルだった。

 ということで、引退した身で言うのもなんだが、うちのサークルはおすすめです。お世話になったサークルへの最後の奉公としても、以下に新歓リンクを貼っておこうと思う。札幌の大学一年生はぜひ、覗いていってほしい。

 今年も「だれかさんとだれかさんが」どこかのサークルで出会い、「永遠と刹那のカフェ・オ・レ」な4年間を謳歌するのだろう。

 大学万歳。新入生諸君に幸あれ。

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