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福建省で習った、本場の中国茶の淹れ方 (中国から考える-茶文化編)

最近福建省に出向くことが多いのですが、この地に根付く茶文化の豊かさ、そしてその奥深さに圧倒される日々を送っています。

茶館などのお店がいたるところに存在するのはもちろんですが、茶の作法や茶器などの細部にもこだわりながら、日常の中でも丁寧に茶を淹れて楽しむ時間を作る。そんな福建人の精神文化はとても美しく思います。

福建省福清市のホテルに宿泊した際、部屋に用意してあった中国茶セット。テーブル自体も茶道具の一部という特注品。

日本でも茶道を学ぶ人が多くいますし、世界でも抹茶人気が高まる中で、日本の茶文化はよく知られるようになりましたが、その祖である中国茶の文化についてはあまり知る機会がないように思います。

ペットボトルの烏龍茶は好きだけれど、本場の中国茶ってなに?どんな種類があるの?どうやって飲むの?といったことを、私自身も福建省に来るまで全く知りませんでした。

袋のお茶をどこにどう入れて、お湯を注ぐのか最初はまるで分からず。

今回は、「中国から考える」シリーズの茶文化編と題して、中国茶の歴史や種類、本場福建省で教わった正しい茶の淹れ方や、中国で人気の茶菓子とのペアリングなどをシェアしていきたいと思います。

福建省から世界へ、中国茶の歴史

古来中国で、漢方薬としてその存在が知られるようになった茶。
7世紀頃の唐時代には、「茶経」というお茶に関する知識を集約した書物も生まれ、茶の起源や歴史、製造具、茶道具、いれ方から飲み方の作法、産地による違いや心得などが記され、茶は薬の用途にとどまらず、人々の趣味としても広まっていきました。

11〜12世紀頃の宋時代は、 貴族や知識人の間で、茶の味や香りを評価したり競ったりする「闘茶」が流行し、茶文化は一層発展を遂げます。

14世紀以降の明清時代には、絢爛で豊かな時代の影響を受け、茶葉の扱いや茶の淹れ方がますます進化し、茶器も美しくこだわりあるものが増えていきました。

時代の影響を受けながら、中国大陸で美しく豊かに発展してきた茶文化は、17世紀頃から海陸を伝って世界に広がっていくことになります。
このとき世界に茶を広めた立役者が、今日まで中国茶の本場として名高い福建省です。

福建省の武夷山(ウーイーシャン)という山が古くから高品質な烏龍茶や紅茶を生み出し、さらに福建省特有の海や川に囲まれた地形が大陸内外への輸送を容易にしたため、福建産の茶が中国大陸や朝鮮や日本をはじめ、遠くヨーロッパまで届けられることになりました。

南シナ海を通ってヨーロッパに届いた茶が、福建省厦門(アモイ)の方言で茶を表すte(テ)と呼ばれて伝わっていったことが、英語のtea(ティー)の語源となっています。

かくして日本や世界に広まった中国茶は、世界中で愛され、客人のもてなしや日常生活に欠かせない存在となっています。
そして「福建省」は国際的なブランドとなり、高級や高品質の証として、多くの場所で様々な商品に「福建の茶」の称号を付けて売られています。

茶葉や産地で数千種、中国茶の種類

中国茶は、茶葉の持つ香りや、産地の山々によって名付けられたものを数えると数千種にのぼると言われます。
烏龍茶だけでも肉桂、水仙、水金、大紅袍などそれぞれ花を冠した名付けがされ、区別されて売られます。
しかしそれでは途方がないので、茶葉や醗酵度合いによって大きく6つに分類されるのが一般的です。飲料メーカーのキリンが提供しているこちらの図が非常にわかりやすいですね。

キリン歴史ミュージアムのウェブサイトより

ジャスミン茶や烏龍茶など、日本人が好んで飲んでいるお茶の名前があまり見当たらないですね。逆に、白茶や黄茶、青茶などはあまり聞き覚えがないかもしれません。

ジャスミン茶は福建省で生まれた加工茶で、緑茶をベースに茉莉花(モゥリーファー)と呼ばれるジャスミンの香りを移したものです。そのため分類としては緑茶に属します。

また、烏龍茶は完全発酵の手前でとめた状態のお茶で、分類的には青茶に属しますが、発酵の度合いや淹れ方によって紅茶のような色になることがあります。
福建省 武夷山の岩肌で育てられた烏龍茶は「岩茶(イェンチャ)」と総称され、岩のミネラル分によって特有のうまみを持つ福建省を代表する茶のひとつです。
(ちなみに私は岩茶が大好きで、福建省各地で様々な銘柄の岩茶を買い回っています。)

正直なところ、中国国内にいても黄茶や青茶などの呼び方を聞くことはありません。
福建省のレストランではたまに白茶の名前を見かけますが、上海や北京などの中心都市ではほとんどが緑茶、茉莉花茶、鉄観音(ティエグァンイン)、普洱茶(プーアーチャー)など、花や茶葉、産地の名前が入り混じった通称であることが多いですね。

お茶の本場、福建省で習った中国茶の淹れ方

ここからは、中国茶の本場 福建省で岩茶業を営む経営者に教えてもらった、正しい中国茶の淹れ方を解説したいと思います。

今回使用する中国茶の道具は、以下の画像の右手前から、茶杯×2(お茶を飲むための小さなカップ)、公道杯(淹れたお茶をためておくための小さなガラスポット)、盖碗(茶葉でお茶を淹れるための蓋付きのカップ)、それらを載せた茶盘(内部に不要な湯や茶を捨てるためのお盆)、湯を入れたポット、茶葉です。
どの茶館やレストランでも使っている基本的なセットなので、これだけあればしっかりした中国茶の作法でお茶を入れることができます。

湯を沸かし、茶杯、公道杯、盖碗を茶盘に乗せて準備する
今回使うのは福建省を代表する銘柄、武夷岩茶の大红袍(ダーホンパォ)という烏龍茶
まずは白湯を盖碗にたっぷりそそぎ、碗を温める
碗から茶杯のほぼ満杯まで湯を注ぎ、杯全体を温める
二つとも満杯まで温めると、大体ちょうど湯がなくなる
杯に注いだ湯を、茶盘の中に捨てる
全ての杯の湯を捨てたら、白湯による温めが完了
茶葉をあけ、盖碗に入れる
ポットから盖碗に湯を注ぐ
碗の淵ギリギリ、蓋を閉めたら少し溢れるかもというくらいまで湯を注ぐ
盖碗のフタをかぶせ、手の人差し指を窪みにかけて、少しだけ隙間を開けた状態で固定する
盖碗を持ち上げ、碗とフタの隙間から茶葉が出ないように気をつけながら、初回の抽出液を公道杯に注ぐ
碗の中の湯が全て公道杯に注げたら、いちど盖碗を置く
初回の抽出液は雑味があるため、茶盘の中に捨てる
これで、飲むための茶を入れる準備が整う
またポットから盖碗に湯を注ぐ
先ほどと同じように、フタの窪みに人差し指をかけて蓋と碗を固定しながら、隙間から抽出液を公道杯に注ぐ
上記を繰り返して茶を淹れ、公道杯の半分ほどまでためる
公道杯から茶杯に、淹れた茶を注ぐ
人数分の杯に注ぐ
茶杯を客人に差し出して完成。茶杯が減ったら公道杯から注ぎ、公道杯が減ったら盖碗で茶を淹れるのを繰り返す。

以上が福建省のお茶の淹れ方です。烏龍茶だけでなく、様々な中国茶をこの方法で楽しめるとのことです。

茶文化が色濃い福建省では、ホテルにも必ずこういった茶セットが置いてあり、部屋でお茶を淹れられるようになっています。

福建省福州のホテルで部屋に用意してくれた茶具
福建省福清のホテルでは、ローテーブルに茶盘が作り付けてあり、不要な茶湯がテーブルの中から排水される仕組み
お茶の淹れ方はここでも同様
いたるところで茶具や茶葉が売られている
お茶屋さんがおすすめしている茶菓子はたしかにおいしい

次は、今回使った道具を含む、中国茶の茶道具(茶具)をご紹介します。

細部に宿る美とこだわり、中国の茶具

中国茶の茶道具は「茶具(チャジュ)」と呼ばれ、主に前段で説明した「茶杯(チャーベイ)」、「公道杯(ゴンダオベイ)」、「盖碗(ガイワン)」、「茶盘(チャーパン)」が基本のセットです。

中国の国際通販サイト「淘宝(タオバオ)」では、茶具と検索すると以下のように基本的な道具のセットを購入することができます。

数人分の茶杯がついたセットが多い
これは最も基本的な茶具セット

セット売りのものは、白やガラスのシンプルなものが多いため、道具にこだわりたい方はそれぞれお気に入りの柄を探してみても良いかもしれません。

美しい陶器の盖碗、値段はピンキリ(2025年現在、1元は約20円)
「大号(ダーハオ)」の盖碗は、八宝茶や三炮台という中国西南地方のお茶に適したサイズで、通常の中国茶には少し大きい
淹れたお茶をため、少し冷ましておく役割のポット
茶葉が入り込まないよう公道杯の上に取り付ける茶漉し。マストではないがあると便利。
茶杯はひとつ100円以下と、安価から手に入る
中に不要な茶湯を捨てるため、上部のフタと入れ物の二層構造になっているお盆。切り抜き模様の美しさなど、人によってこだわりが出る道具
茶葉が入った袋を切るための工芸ハサミ。袋は手で破くための切り込みもあるが、茶盘の上に置いておくだけでも美しい為、ハサミも茶具のひとつとして人気
中国茶の上級者向け道具。洗った茶杯を持ち上げるためのピンセット、熱い杯を客人に差し出す時の刺又、茶葉の粉をはらうための筆などがセットになっている

ひとつひとつの茶具にこだわり、道具を大事にしながら、その姿を愛でて茶を淹れるのは、中国茶の醍醐味ですね。
大人の楽しみとして、ゆっくりとお気に入りの道具を集めていきたいところです。

中国茶と楽しもう、おすすめ茶菓子

最後に、中国茶とのペアリングにぴったりの、本場中国でも人気の茶菓子たちをご紹介します。

練り切り・落雁系の代表「緑豆糕や桂花糕」

日本ではお茶の席に華やかな練り切り菓子を合わせることが多いと思います。
練り切りは、白あんで季節の花や伝統モチーフを模った茶菓子ですが、中国でも同じような落雁や練り切りの類があります。
緑豆を練って押し固めた「緑豆糕(リゥドウガオ)」や、餅米と金木犀の砂糖漬けを蒸した「桂花糕(グイファガオ)」などは、自然由来のやさしい甘さを楽しめる茶菓子です。

お茶屋産の茶菓子「华祥苑」シリーズは、味も包装も高品質でギフトにもおすすめ
私が一番好きな桂花糕。添加物を一切使わず、もち米と金木犀と砂糖のみで作られている。

緑茶や白茶といった軽い飲み口の甘味あるお茶から、黒茶など醗酵によるうまみが強いお茶まで、全般的にマッチする万能な茶菓子です。
しっとり、ほろほろ、もちもちなど食感は作り手によって様々で、中国茶と一緒に少しずつゆっくり楽しむと、贅沢な時間を過ごすことができますよ。

強めの甘さに、ナッツの歯ごたえがアクセント「雪花酥や牛轧糖」

コーヒーやエスプレッソのおともに、ヌガーやキャラメルといったしっかりした甘みのお菓子を合わせることがありますね。
プーアール茶などの黒茶にも、雪花酥(シュエファスー)や牛轧糖(ニゥガータン)といった甘みの強いキャラメル系のお菓子がよく合います。

雪花酥は中国全土のお土産物屋さんで見られる人気のお菓子で、硬めのマシュマロにドライフルーツやナッツを混ぜ込んでサイコロ状にカットしています。
カラフルなマシュマロに、様々なフルーツが入った断面はとても可愛く、中国旅行の手土産としてもおすすめです。

中国のお菓子屋産には色とりどりの雪花酥が並ぶ

中国茶菓子の定番ケーキ「凤梨酥や茶饼」

「凤梨酥(フェンリースー)」は日本でも人気のパイナップルケーキのこと。ほろほろとしたクッキー生地の中に、甘酸っぱいジャムが入っていてあと引くおいしさです。
「茶饼(チャービン)」は、紅茶や烏龍茶など様々なお茶の味をつけたお菓子のことで、パイの中にお茶のペーストが入っていたり、お茶が生地に練り込まれたクッキーなどを指します。

外側のクッキー生地は、黒いものや抹茶などバリエーション豊か
この茶饼は、サクサクのパイ生地の中に烏龍茶味のクリーミーなペーストが入っていて上品な味

多種多様なドライフルーツ、中でも東南地方の特産「橄榄」がおすすめ

「橄榄(ガンラン)」はオリーブのこと。福建省など中国東南部では、お茶請けとして甘酸っぱく味付けをしたオリーブの実をよく食べます。
(追記:英語でChinese Oliveとも呼ばれ、オリーブに非常に似ている見た目ですが、カンラン科の別物であるとコメントでご指摘を頂戴しました。中国オリーブと呼ばれることがありますが植物的には違う種のようですね。ありがとうございます。)

様々な味付けがあり、個包装のためお茶菓子として客人にも出しやすい

中国は東南アジアからの食物を迅速に海路または陸路で輸入できるため、新鮮なフルーツや果物加工品が手に入りやすい特徴があります。
様々な種類のドライフルーツが安く購入できるため、私は中国にいる時によく以下のようなドライフルーツを買いだめています。

  • 山楂(シャンジャ):さんざし

  • 杏子(シンズー):あんず

  • 栗子(リーズー):栗の実

  • 梅干(メイガン):梅干し

  • 芒果(マングォ):マンゴー

  • 李子(リーズー):プラム

中国の無印良品にて、お茶請けのせんべいやドライフルーツを買い込んでいる様子


今回は「中国から考える-茶文化編」として、福建省から世界に広がった中国茶の歴史や文化についてご紹介しました。

客人を想いながら茶菓子を用意し、とっておきの茶具でお茶を入れ、ゆったりと話をしながらともに穏やかな時間を過ごす。
そんな中国の茶文化は、日本やヨーロッパに広がり、時代を超えて世界中の人々を魅了しています。

政治による国家の対立や、パンデミックによる隔絶、技術進歩の副産物としての知的分断や軋轢、国際化の負の側面によって私たちは様々な苦難に直面することもあります。
そんな時だからこそ、自分のペースを取り戻し、心を落ち着けるきっかけになる趣味として、中国茶という楽しみをぜひ生活に取り入れてみてください。

ではまたお会いしましょう。

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