2025年のベスト15+5
2025年のベスト10冊
年はとっくに明けました。立春も過ぎました。
年が明けたら書くと言ってた「2025年のベスト10」ですが、すでにひと月半が経ちました。遅ればせながら2025年のベスト10冊を書かせてもらいます。
ところが
ベスト10に入る本があまりありません! そこで、2024年12月に読んだ本も含めてベスト15を選ぶことにしました。
こんなことになってしまったのはなぜか?
ひとえに、読んだ本が少ないからです。
その数、2年間で150冊くらい。
…昔は、年間100冊は読んでたのに。
200冊を超える年もよくあったのに。
なんたることのなにごとぞ。
吉本をやめて読書時間は増えたはずなのにどうしたことか?
原因はわかっています。
1.スマホの視聴時間が増えた
2.目が悪くなった
3.電車通勤がなくなり、往復1時間超の読書タイムがなくなった
…これは大した時間ではないと思ってましたが、積もり積もるとけっこうな時間になってたんですね。
しかし、一番の問題は「時間があるのでいつでも読める」と思ったことかもしれない。
それと、本を読もうという切迫感、飢餓感がなくなったような気がする。
本を読みたいという根本の意欲が少なくなったのだ。
これが一番の問題だ。
歳を取るということはそういう意欲がだんだんなくなっていくことか。
悲しいことだ。
今年はガンガン読むつもりです。
さて、2025年プラスαの「今年の15冊」です。
これは2025年、2024年に出版されたものに限りません。
2年間にぼくが読んだ本のベスト15を選んでいます。
1. ともぐい 河崎秋子
2. 絞め殺しの樹 河崎秋子
3. 踊りつかれて 塩田武士
4.熟柿 佐藤正午
5.ツミデミック 一穂ミチ
6. 白鷺立つ 住田祐
7.成瀬は天下を取りに行く 宮島未奈
8.猟犬探偵 稲見一良
9.爆弾 呉勝浩
10. 日の出 佐川光晴
11.青姫 朝井まかて
12.応仁悪童伝 木下昌樹
13.菜食主義者 ハン・ガン
14.流 東山彰良
15.慟哭の冠 久保田かずのぶ
ぼくは大阪文学学校で「エッセイ・ノンフィクション」のクラスを担当しているので、その部門でも5作選びました。
1.上岡龍太郎かく語りき 上岡龍太郎
2.怪物に出会った日 森合正範
3.官僚生態図鑑 森永卓郎
4.ウイーブが日本を救う ノア・スミス
5. 第3の時間 井上陽子
1、2位は奇しくも河崎秋子の作品になった。
性別がというわけではないが、誤解を恐れずにいうと、
男性作家が書くような骨太の作品だ。
いずれも北海道が舞台の小説!
1位 ともぐい 河崎秋子
直木賞受賞作。
日露戦争前の北海道が舞台。
熊撃ちに執念を燃やす猟師「熊爪」と巨大で狡猾な熊「穴持たず」との戦いを描いている。
「熊爪」と「穴持たず」が、野生を賭けた虚々実々の闘いをするシーンはリアルで見ものである。
後半はまったく違った展開になり、ふたつの作品として書いた方がよかったかもと思ったが、そのため物語の重厚さが出たのでよかったのかもしれない。
2位 締め殺しの樹 河崎秋子
根室で生まれたミサエが、引き取られた(売られた)家でこき使われ、なんでそこまでという理不尽な扱いを受ける。
ミサエは苦労を重ねて看護師となり、保健師となり、自立した立派な女性となる。
しかし、ある事情で引き離された息子とは名告りあえないまま、やがて亡くなってしまう。
そこまで底意地の悪いことができる人間がいるのだろうか? という仕打ちを、作者は際限なく描くのだが、人生ではそんな人間に出会うことも往々にしてあるのだということを忘れてはならない。
ひどい悪意に囲まれながらもそれに耐え、北海道の過酷な自然の中で、尊厳をもって生きていくミサエの姿は美しいが、少しイラッとする。
彼女を助ける薬問屋、和尚、そして白猫にほっとする。
後半では、息子が、北大農学部というエリートコースを捨て、牛飼いになる道を選び、家や土地のしがらみに立ち向かっていく姿勢にようやく溜飲を下げた。
3位 踊りつかれて 塩田武士
SNSの暴力で人気お笑い芸人が自殺し、週刊誌のでっち上げ記事で伝説の歌姫が人々の前から姿を消す。
SNS上に、それに加担した83人の氏名、年齢、住所、会社、学校、など…個人情報の全てとYouTubeへの投稿内容が晒され、復讐が告げられる。
その結果、83人は次々に社会から抹消されていく。
SNSの怖さ、匿名の暴力の残酷さがヒシヒシと伝わってきて、今後SNSに書く内容を考えないといけないと反省したほどだ。
それにしても、現代はなんと生きづらく、せちがらい世の中なんだろう。
4位 熟柿 佐藤正午
激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆をはねたかおりは轢き逃げの罪に問われ、その後、園児連れ去り事件を起こしたと誤解されてしまい、どんどん悪い方向に落ちていく。
人間はいつなんどき人生を踏み外すかわからない、ちょっとしたボタンの掛け違いで、奈落の底へ落ちてしまうこともあるという怖さを感じた。
5位 ツミデミック 一穂ミチ
短篇集。
1作選ぶなら「燐光」か。
でも「違う羽の鳥」も「ロマンス」もどれも傑作。
どれも、どんどんやばそうな話になっていくんだけど、最後にどんでん返しが仕掛けられてる。
ただ、どれもタイトルがイマイチかな。
6位 白鷺立つ 住田祐
比叡山延暦寺で千日回峰行に挑むふたりの僧侶を描く。
出自に秘密がある師弟が対峙する場面の心理描写は、ギリギリとする迫力に満ちていて、ぼくのような気の弱い、繊細な人間は読んでるだけで汗をかいた。笑
よくこれだけ微細に心理の動きを描写できるものだと感心する。
7位 成瀬は天下を取りに行く 宮島未奈
ご存知「成瀬シリーズ」の第1段!
本屋大賞に選ばれ、135万部を売り、最近第3部が出た人気シリーズ。
理屈抜きにおもしろい。
成瀬はいろんなことに才能を発揮するが、とにかく変わり者。
そんな成瀬に翻弄されながらも次第に影響を受け、成瀬を応援してしまう周りの人々。読者も同じように成瀬の世界に引き込まれていく。
これは3巻に共通した構図。
3冊目になるとさすがに飽きてしまって、前2作ほど楽しめなかったけれど。
8位 猟犬探偵 稲見一良
いなくなった犬を探すという変わった探偵とその飼い犬の話。
実を言うと、ぼくは稲見一良さんの大ファンです。
ぼくの大好きな作家です。
もう亡くなられたので、残された作品を引っ張り出してきては、惜しみつつ、慈しむように何度も読んでいます。
9位 爆弾 呉勝浩
いま話題の書。
軽犯罪で捕まったスズキタゴサクが爆発を予言する。
内容はほとんどが取り調べ室でのやり取りだ。
スズキと彼を取り調べる刑事たちとの心理戦が延々描かれる。
取り調べ中のやり取りの随所に伏線が潜んでいて目が離せない。
10位 日の出 佐川光晴
明治時代、13歳の清作は日露戦争の徴兵逃れのために生まれ故郷の小松を飛び出し、逃げた先の美作で鍛冶屋の技術を身につける。
追手から逃げるために筑豊の炭鉱へ、さらに朝鮮人の助けで満載したカツオの樽の中に隠れて川崎の朝鮮部落に移り住む。
明治時代にも徴兵を嫌がり逃げた人がいたのか、少々驚いたけれど考えたら当たり前か。どんな時代でも戦争に行くのがいやなのは同じだ。
その清作のひ孫のあさひは中学校の教師になり、先祖を調べているうちに歴史問題に直面する。
波瀾万丈のストーリーを抑えた筆致で書いているのが逆に強さを感じる。
疲れたので11位から15位は割愛。
…本当はだいぶ前に読んであまり覚えてないんです。そのときの感動が表現できないと思うので、お許しを。
でも、いずれもとてもおもしろいです。
ノンフィクション部門1位 上岡龍太郎かく語りき 上岡龍太郎
昭和の関西の芸界や芸人さんの話がバンバン出てきて、ゾクゾクしながら読んだ。
小学生の頃、「パンパカパーン パパパパンパカパーン 今週のハイライト!」から始まる漫画トリオの漫才が好きで、テレビでよく見ていた。
その後、ノックさんが参議院議員になり漫画トリオが解散して、上岡さんがピンになられた中学時代は、
「芸は一流 人気は二流 ギャラは三流 恵まれない天才、私が上岡龍太郎です」
というキャッチフレーズから始まるラジオをよく聴いた。
そんな上岡さんが書いた、自分の半生記、出会った芸人さんの話、芸能界の裏話、独特の芸論など、おもしろい話が満載。ぼくにとってはよだれを垂らすような話ばかりだ。
特に、会社の先輩や芸人さんから話には聞いていたけれど会ったことがなかった昔の伝説の芸人さんたちが何人も登場し、知りたかったことがわかったのがよかった。
去年読んだ中で一番おもしろかった本かもしれない。
スッパリと芸能界をやめられたのが残念だった。
以上が「2025年ぼくが読んだ本ベスト15+5」です。
もう少し詳しく書きたかったのですが、遅れまくっていますので、とりあえずここまで。
次回またよろしくお願いします。
