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音楽が繋いだ物語 7

7ー心が揺れる

温かい拍手が噴水のある公園に広がっていった。2時間のライブが終わる。澄んだ空気がほんのり暖かく色付き、公園に集まった人々の間に流れ込んでいるようだった。

「あー、翔太さーん。今日も最高でした。」
「本当にー。まじで早くCD出してよ。ねー、お姉さんも、そう思いますよね。」
高校生たちはズボンをパタパタとはたきながら、大きく伸びをした。

「本当に、…。素敵な歌ですね。翔太さんの歌は。」
耳の中にこだまする歌声を聞きながら、由紀子は目を細めて頷いた。

「今日も温かい応援ありがとうございました。来週もこの時間にお待ちしています。寒いですから、温かい格好でお越しください。ここで、待ってますからね。」
優しい笑顔で翔太が挨拶をした。

「あーん、翔太さーん。かっこいい。来週のクリスマス、一緒に過ごしてくださいよー。」
高校生たちは投げキッスをしながら家路についていった。サラリーマンたちも、高校生たちを微笑ましく見守りながら、翔太に大きく手を振って帰っていく。

片付ける翔太を見ながら、由紀子はアンプのコードをクルクルと巻き始めた。

「あ、すみません。手を汚さないでくださいよ。大丈夫ですから。すぐ終わるので、あの、食事…。ファミレスでいいなら食事行きましょう。」
寒さで鼻の頭が赤くなった翔太の笑顔が眩しかった。

「ファミレス、いいですね。温かいもの、食べましょうね。」
由紀子は少し照れくさそうに微笑み、自分のマフラーを巻き直した。二人は機材を翔太の古い軽自動車に積み込み、近くのファミレスへと向かった。

店内に入ると、眼鏡が白く曇るほどの熱気と、ハンバーグの焼ける香ばしい匂いが二人を包み込んだ。

「あー、生き返る。うーん、うまい。」
ドリンクバーの温かいココアを一口飲み、翔太がふにゃりと表情を緩める。ステージの上での凛とした姿とは違う、年相応の青年の顔だった。

「翔太さん、さっきの曲、歌詞が、その、すごく心に刺さりました。オリジナル…、なんですか?」
由紀子が切り出すと、翔太は少し意外そうに目を見開いた。

「気づいてくれました? そうなんですよ。最近の自分の迷いというか、答えの出ない気持ちをそのまま歌にしたんです。由紀子さんにそう言ってもらえると、救われます。」

翔太の真っ直ぐな視線が由紀子を射抜く。(どうしてそんな風に、真っ直ぐ私を見るの…。)由紀子の胸の奥が、チリリと音を立てて疼いた。何も知らないけれど、彼の歌声は心の奥にしっかりと響いて、どっしりと根を下ろしている感覚。とても、不思議な感覚だった。

「来週のクリスマス。翔太さんは、やっぱりここで歌うんですか?」
由紀子は、自分でも驚くほど小さな声で尋ねていた。

由紀子の問いかけに、翔太は持っていたココアのカップをテーブルに置き、ふっと視線を落とした。店内の喧騒が、一瞬だけ遠のいたような気がした。
「はい。歌うつもりです。クリスマスだからこそ、一人で過ごしている人や、寂しい思いをしている人に届く歌があると思うから。それに、みんなにちゃんと宣言したしね。」

翔太はそこまで言って、少しだけはにかんだように笑った。
「でも、由紀子さんに聴いてほしいっていうのが、一番の理由かもしれません。」
「えっ。?」
由紀子の心臓が、ドクンと大きく波打った。

運ばれてきたハンバーグの湯気の向こう側で、翔太の瞳が真剣な光を帯びている。
「僕の歌を、あんなに真っ直ぐに、大切に受け取ってくれる人は初めてでした。でも、何か心の奥に秘めていますよね。それが少しでも癒せるならって。僕は、僕の言葉がちゃんと空気に溶けて、誰かに届いて誰かを癒せる、そんな歌い手に僕はなりたいって思っているんですよ。」

翔太の手が、テーブルの上でわずかに由紀子の手の方へと動いた。触れるか触れないかの距離。由紀子は指先が微かに震えるのを感じて、慌てて膝の上で拳を握りしめた。

(だめよ、私は…。)知り合ったばかり、そう自分に言い聞かせようとするのに、翔太の真っ直ぐな言葉が、凍てついていた由紀子の心の表面を、じりじりと溶かしていくそんな感じがした。

由紀子は、自分の胸の奥で鳴り止まない鼓動を聞きながら、潤んだ瞳で翔太を見つめ返した。
「私の、答えも。その歌の中に、ありますか?」

絞り出すような由紀子の声に、翔太は力強く、深く頷いた。二人の間に流れる空気は、ファミレスの暖房のせいだけではない、熱を帯び始めていた。


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