【連載 伝わる論文】Conclusionsの書き方
「伝わる論文」を書くための心得 ~AI系トップ会議突破の論文執筆術~
本連載では、論文の基本的な書き方を体系的に解説する「基本編」と、「伝わる論文」を書くための心得を1トピック1記事形式で紹介する「発展編」に分けて、論文執筆のノウハウを解説します。
おさらい:前回までに、基本編として以下の3つの論文の基本構成パターンを紹介し、以降は、応用分野系および機械学習系のスタイルを念頭に、Introduction、Title & Abstract、Related Work、Problem & Method、Experiments、Discussion の書き方を紹介しました。

今回は、いよいよ論文の締めくくり、結論(Conclusions)の書き方について解説します。
実はほとんど説明することはありませんが、この章を書く上での目的意識についてお話したいと思います。
Conclusionsを書くべき3つの理由
Conclusionsでは、研究の目的と得られた結果を簡潔に総括し、今回の研究における今後の展望や期待されるインパクトについて述べます。
その目的は、研究の要点を鮮明化させるとともに、読者に研究の今後の波及効果への期待感を抱かせ、前向きな読後感を与えることだと思います。
他の章と比べると、結論の章は必須度が低い場合があります。
たとえば、「Discussion and Conclusions」のように、Discussionと統合されることがあります。
また、ページ数制限が厳しい場合には結論の章そのものが省略され、Discussionで終わるケースも見られます。
それでも私は、可能な限りConclusionsを書いたほうがいいと思っており、その理由を3つ紹介します。
【理由1】結論は、研究で得られた「知見」(key findings)を再確認する最後のチャンス
ExperimentsやDiscussionでは、研究の結果や意義などについて多角的に議論を広げます。
すると最終的に、「この研究で得られた最も重要な知見とは何だったのか?」ということが、ぼやけてしまう場合があります。
そこで論文の最後に、研究の総括とともに、著者が最も読者に伝えたい大事なメッセージや得られた知見を改めて言語化して明記することで、研究の価値を強調し、読者の理解を促進させることができます。
【理由2】結論では、研究の波及効果や潜在的価値について、ほぼノーリスクで自由に語れる貴重なスペース
結論では、上述のような研究の総括の後に、最後に研究の波及効果や潜在的価値などの「展望」について述べることが多いですが、ここも重要です。
Introductionで述べる主張(claim)とは異なり、結論で述べる展望は強いエビデンスを要求されないため、研究の波及効果について比較的自由に記述できるのです。
これにより、査読者からのツッコミのリスクを抑えながら、読者が見落としがちな潜在的な研究価値を示唆しやすくなります。
なお、今回、松尾豊先生の『論文の書き方』を改めて拝読したところ、最後("最後の一文は大切に")に同様のことが書かれており、共感しました。
【理由3】結論を書くのは気持ちいい
最後に、論文の締めくくりとして結論を書くことは、著者にとっても達成感があります。
結論の文章は、格調高い文体がよく合い、書いていて気持ちがよいです。
論文執筆の醍醐味の一つと言えます。
具体的な書き方
最後にConclusionsの具体的な書き方について、簡単に説明します。
構成としては、概ね以下のような「総括」と「展望」を、順に、簡潔にまとめます。
研究の目的や、扱った問題、提案内容、得られた結果や知見などの総括
研究の潜在的なインパクトや今後の波及効果についての展望
長さの目安としては、まとめて1パラグラフ、または、総括と展望それぞれで1パラグラフくらいだと思います。
総括について
結論の章は、本論を読む前に、アブストや図などと一緒に最初に目を通す読者もいます。
そのため、総括では、これまでの記述内容に依存しない自己完結的(self-contained)な文体で書くこと(本文中で導入した略語を用いないなど)を心がけたいです。
また、先ほど述べたように、この研究での知見を読者に伝える最後のチャンスでもあります。
本文の言い回しをそのままコピペするのではなく、新鮮な表現で改めて言語化してみると良いのではないでしょうか。
展望について
研究の展望を述べる際は、単にやり残したFuture Workを列挙するという意識よりは、期待感が膨らむような、研究の潜在的なインパクトについて語るニュアンスのほうが、良い読後感を残せると思います。
この際は、適宜、先行研究を引用しながら、展望に説得力を持たせるとよいでしょう。
特に最近は、Broader impacts という見出しを設けて、このような展望をより深く議論することも多いです [Suzuki et al. (MLST 2022); Suzuki et al. (AI4Mat 2024)]。
最近は、Broader impacts の議論の重要性が高まっている印象があります。
まとめ
結論では、研究の要点を総括して鮮明化させるとともに、研究の今後の展望を述べて読者に前向きな読後感を与える。
総括では、研究で得られた「知見」(key findings)を再確認し、読者にメッセージを伝えられる最後のチャンス。
展望では、読者が見落としがちな潜在的な研究価値を、強いエビデンスなしでも低リスクで語れる貴重なスペース。
結論はページ制限の都合上、省略されることもあるが、結論を書くのは気持ちがよい。Authorとしての達成感を味わおう。
今回は、改めて論文の結論を書く意味について説明しました。
次回は、本連載 基本編の総括と今後の展望について述べたいと思います。
次回:基本編のまとめと発展編について
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