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【参考にならない福知山・丹波篠山】3年ぶりに会うのに財布も持たずに現れた40代男性の尻拭い

約3年の別居を経て前年末に離婚をした私。本意ではないものの住所地を実家に正式に移し、一旦本格的に根を張ることにした。前の住居には引き続き前妻と子が住んでいる。

別居をしているさなかにも何も事情を知らない以前の勤め先の同期である友人男性から年賀状が届いていた。しばしのタイムラグを経て、子と面会をする際に前妻よりその便りは受け取っていた。ただ年賀状を返すにはタイミングを逸しており、現状を伝える気の重さも手伝って連絡を返すことはなかった。

2度か3度受け取った年賀状にはいつも「あいたいのぅ」とペンの頂点をつまんで書いたと思しき細く、小さなまるで蚊の軌道のような文字が書かれていた。冬に蚊が元気よくその希望を届けてくれるはずもなく、3年間きっちり疎遠になってしまった。

グッドアフタヌーン

1月の後半に差し掛かり、共通の友人と新年会として優雅にアフタヌーンティーを楽しんでいる際に「このタイミングで連絡を取ってみよう」と思いついた。別居しているという現在進行形の事実を伝えるよりも、離婚をして一区切りだと伝えるほうが幾分かハードルは低い。

そしてアフタヌーン友人は約2年前に結婚しており、そのことをまたこの男に報告していなかった。ならば結婚と離婚を同時に報告して、戸惑わせて遊ぼうではないか。重要事項を一切報告されていない上に7、8個年下の者たちにおちょくられるこの男が不憫である。

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その連絡をきっかけに一度集まることになった。私たち3人はうまいメシを食べることに主軸をおいた活動をする「すり身クラブ」という部活動を行っている。3年ぶりの部活動のメインディッシュは今私が住む丹波篠山のぼたん鍋である。部活動再開の狼煙にふさわしい。

控えめに日帰りで予定を組んでいたが、この男からの「前乗りも可」との連絡を受け、急遽2人で福知山の夜を楽しむことにした。

この男は呑気で知られていたはずだった。よく知った事実であったのに、やはりブランクはおそろしい。3年ぶりだったのでうっかり頭から抜け落ちていた。早めに家を出て、呑気マンが提示してきた待ち合わせ場所近くのセカストで時間を潰していると案の定「すんません、30分ほど遅れます」とメッセージが届き、そうだったそうだったと思い出す。オートで+30分計算でいいんだった。

気の置けない仲間ではあるものの、ただ久々に会うというだけで少し緊張するものだ。私は待っている間もなんだかそわそわしていたが、脳が「こんな男に身を強張らせてはもったいない。今すぐ緩めろ」と全筋肉に一斉に指示を送る。

呑気はとどまらない。送られてきたmapのURLを頼りに指定されたパーキングに到着してスマホを見返すと「すんません、間違えとった」というメッセージと共に別のURLが添付されている。呑気すぎて無機質なはずのURLが丸みを帯びているように見える。呑気に踊らされる自分が滑稽である。

ついに指定のパーキングに降り立ち、オヤジを探す。いない。いや、キュートなピンキーcocoaから降りてきた影が降りしきる雪越しにこちらに向かって何かをしゃべりかけてきている。一度では理解できなかったが、頭にリフレインするその言葉は確かにこうだった。

「すんません、財布を忘れてしもうた最悪や」

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3年ぶりの再会であり、かつぼたん鍋という豪勢なものを食べる特別な予定なのに、よもや裸一貫で現れるとは。離婚という人生の節目を迎えた私を少しは労ってくれると期待していたこちらが愚かだった。

こちらは久々に会うし、子育てで忙しい中来てくれたことへの感謝を込め、奥様に対しても心ばかりのギフトを用意していたというのに。しかし、この呑気さこそが私へのうれしいギフトである。変わらないどころか磨きがかった玉のような呑気さにほっと一安心だ。

40代に似つかわしくない若々しい呑気さを持ち合わせているのに対し、電子決済系は一切やっていないらしい。「出会って3秒で立替」が決定する。

まぁそんなのはいいではないか。一向に降り止まない雪の中、福知山方面へ車を進める。今日の宿はこのあたりで飛び抜けて安価な「ニコニコカプセルホテル」だ。以前家族全員がコロナに罹ったときに自分を隔離させるために利用した。やや古めかしさは否めないが、眠るだけであれば十分である。

「なすの与一」で久々の飲み。好みの肴で酔う

なすの与一。そそる外観

チェックイン後、早速飲みに出かける。決して栄えてはいないが、いくつかよさげな店があるものだな。その中でも一際外観が気になる「なすの与一」に入店する。陣屋めいた入口がイカす。隣の焼鳥もなかなか心憎い。どうやら系列店のようだ。また次回。

個室に通され、生ビールで夜がはじまる。相変わらず太い人らしからぬ「菜の花しらす和え」「トマトの浅漬け」などのヘルシーな一品をチョイスする。菜の花のほろ苦さをふわふわのしらすがすっぽり包み込み、実に相性がいい。

菜の花しらす和え
トマトの浅漬け。すごくさっぱりしておいしい

近況を報告しあったはずだが、いつだってあまり身のある話はしていないので、会話内容はほとんど覚えていない。きっとあれがうまかった、これがうまかった程度の話だろう。私たちはこれがいいのだ。

トマトの浅漬けは冷たくてかなりさっぱりしている。以前名古屋の「小料理バル ドメ」で食べた「煎り酒仕立てのトマト塩昆布サラダ」に近い。私はきちんと湯剥きされた冷たいトマト系の肴がかなり好きなのかもしれない。

唐揚げ。四川麻婆
甘鯛一夜干し。

最近突発的に「甘鯛の松笠揚げを食べたいなぁ」という欲求が頭に浮かび、しばらく離れなかった。お品書きに「甘鯛の一夜干し」があったので、その欲求に引っ張られて注文。そうだ、「私は甘鯛のデコが垂直に落ちているフォルムが好きだ」と語ったんだった。せっかく思い出したのはいいが、ほうらやっぱり取るに足らない話だ。

長芋の半月揚げ。食感が楽しい

四川麻婆唐揚げはわかりやすくうまいし、長芋の半月揚げは予想に反してすりおろした長芋を成形して揚げた手の込んだものだった。ビール、翠ジンソーダ、日本酒と流れるように吸い込み、名残惜しく店をあとにする。

ふくちあん本店で〆ラーメン

得盛りラーメン。たまらんうまさ

隣の焼鳥屋でもう1杯、と思ったが、カプセルホテルの風呂の入場〆切が23時だったこともあり、おしとやかに〆ラーメンにとどめる。福知山だし、やっぱりふくちあんだ。私の家の徒歩圏内にもあるが、こちらは本店。

得盛りラーメンなる色々なものがトッピングされたものを注文。呑気マンは辛い系を。ビジュアルがいいじゃないか。おいしいんだけど特筆すべき点はないかな…というのが私のふくちあんの印象だったが、〆ラーメンとして食べたからなのか、降りしきる雪のせいなのかわからないがとびきりおいしく感じた。

こってりなんだけど口内に膜を張るような纏わりつき感がなく、いい意味で口にラーメンを食べた残像が残らない。宿に戻って風呂に入り、団欒スペースでMATCHやMETSを飲みながら話をしていたらあっという間に1日が終わる。宿で酒を入手できなかったのが痛い。

朝から贅沢にガストモーニング。バーグを喰らう

降っては止んでの雪。

カプセルはいたって清潔だが、どこか寂れた地方都市めいている。テレビを固定するアームは折れているのか、コードだけでだらりと吊られている。悪い意味ではなく、そんなディティールもまた旅情を掻き立てるものだ。

カプセルに巨体をすぽりと格納し、しばし動画などを観たのち、1時ごろに眠る。せめて5時くらいまでは眠りたいと思っていたが、あっけなく3時半ごろに目が覚め、そこからはもう眠ることなどできなかった。

5時ごろに団欒スペースに出て、ソファに座ってヤフオクでいいアパレルがないか物色して時間を潰す。今日は潔くPCは置いてきたから本業はスルーだ。玄関ドア越しにはうっすらと雪が積もった花壇。巣を共にした同志たちが作業着に身を包んで出掛けていく。カフェラテを3杯おかわりした頃、呑気マンが現れたので私たちは朝食に向かった。

チーズインハンバーグ。朝からがっつり

ニコニコカプセルホテルのすぐ隣にガストがあったので、滑り込む。道に雪はないが、階段には薄く雪。メニューを見て、朝からハンバーグを食べられることを知る。朝でも昼でもバーグはうまい。

ここでもドリンクバーで複数杯飲料を摂取したためか小便が止まらなくなってしまった。トイレを済ませて席に戻る頃には標的などいないのにすでに次の弾が律儀に装填されている。宿に戻り、装填スパンが少し落ち着いた頃にチェックアウトする。呑気マンとブランケット(実は私の推薦商品)を共有してラブリードライブ。

ついにぼたん。孤独のグルメに出たという奥栄へ

10時半にJR篠山口駅でアフタヌーン友人を拾い、いよいよぼたんへ。わくわくが高まってくる。篠山周辺は勝手知った場所だが、はじめて通る道の先に「奥栄」はあった。駅から車で15分くらいだが、まわりには他に店などはない。

奥栄。外観ナイス

私はただ調べた中で最も本格派な印象を受けたのでここを選んだのだが、どうやら孤独のグルメに出たらしい。この日もほぼほぼ席が埋まる盛況ぶりだ。七輪に起こされた炭を使うスタイル。雰囲気いいじゃない。

炭火
要予約の鹿肉のタタキ

鍋の前にまず運ばれてきたのが予約していた鹿肉のタタキ。なんの臭みもないし、パサつかずしっとりしている。これはペロリ。いい意味で獣らしさがなく、拍子抜けするくらいだ。猪を喰らう助走の加速度が増す。

もううまそう。地味にうれしい丹波黒

ぼたん鍋はそれもまた今回のメンバープラスαで京都の美山町へ旅をしたときに「河鹿荘」で食べた切りだったと思う。もう10年ほど前ではないか。もう猪の味も忘れてしまった。(11月ごろに猪肉フランクは食べていた)

その名のとおりぼたんの花のように盛られた猪肉は見事である。きっと食べることにしか興味がないと名高い私は本物のぼたんを見たときよりも目を輝かせているのだろう。店員さんが猪肉は煮込めば煮込むほど柔らかくなるとの説明をしながら、鍋に具材を入れてくれる。待ち切れないぜ!

完成したぼたん鍋。うまそうすぎる

うまそうすぎるぼたん鍋。強い味噌味を想像していたが、思いの外すっきりしている。猪肉の味の強さを殺していない。後先考えていない20代だったら「おや、ちょっとパンチが足りないかも」と思ったかもしれないが、今なら煮詰まって変化する味を楽しむための余白なのだと感じ取れる。

全く違和感なく食べられるのに、豚とは違う野趣がある。透き通ったお出汁でいただく上品な鍋もいいが、この無骨な鍋は果てしなく好みだ。

出しかけごはん。最後に反則

〆にうどんを3人で1玉楽しみ、そのあとそれぞれご飯も注文(私は大)。女将さんが鍋に卵を割り入れてくれて、いい塩梅まで加熱していく。白身がとろりと仕上がったところで猪や野菜の旨みがたっぷり溶け出した出汁とともにご飯にかける。そりゃいかんよ。1冬1猪のルール化必至だ。

私がカードで3人分を支払い、アフタヌーン友人から受け取った現金から5,000円を呑気マンの帰り道のお守りとして渡してやった。

産直を物色し、カフェでぜんざい

奥栄からの帰り道

ほくほくになった私たちはひとまず「JA丹波ささやま 味土里館」へ。道の駅に行きたいという要望があったがやや離れているので、こちらで我慢してもらった。しかし、思いのほか品揃え豊富でよかった。知らない人が歌うオレンジレンジの花が流れている。

驚いたことに呑気マンはカゴを持ち、何やらショッピングを楽しんでいる。万が一何かあった時のお守りにと渡したつもりの5,000円をお小遣い感覚で使う気だ。お守りの袋を開けられた神の気分である。これまで数多く旅行やキャンプを共にしてきたが、カゴを持ったことなどなかったのに。せいぜい小さなお菓子や野菜をひとつ程度買うだけだったのに。

そのあと訪れた「お菓子の里丹波」は休み。城下町の方へ行き、「特産館ささやま」の駐車場に車をとめて街へ繰り出す。相変わらず寒さ極まる。カフェを求め歩くが、火曜定休が多いのかなかなかいいところが見つからない。

途中お土産を買いに寄ったり、和菓子屋に寄ったりしながら街をしばらく歩き、この先なかなか喫茶は無さそうというところで引き返す。2人が買い物をしている間に先回りして開店しているカフェを探しに走った。この日は閉まっていたが、この「寧日」というカフェが隠れ切っていてとても気になった。また行ってみよう。

呑気マンはまた和菓子屋で大福か何かを買ったらしく、ウインドブレーカーの胸ポケットを膨らませていた。

結局車をとめた特産館ささやまの目の前にカフェはあった。通されたのが背もたれの高いボックス席タイプで、思わず「キャバクラみたい」と声に出してしまった。反省である。実際は普通に雰囲気のよいカフェで盛況している。

丹波大納言のぜんざいとカフェラテで体を温める。あとは呑気マンを駅まで送ったら旅も終わりである。お守りの5,000円はすでに1,800円ほどまで目減りしている。

アフタヌーン友人を摂津まで送り届け、交通費代わりにディナーを奢ってもらった。久々に食べたもちもちの生パスタがやけにおいしく、思わず翌日もちもち食感を謳う高めのパスタを買ってしまったよ。

菜の花とベーコンのパスタ。サラダもうまい

またプランを考えて出掛けたいものだ。翌日、最近ポイ活を兼ねて作った三井住友Oliveの口座を呑気マンに共有し、振り込んでもらった。まだひとつも取引実績のない口座にいきなり呑気マンの名が刻まれた。おそらく次も財布を持たずに現れることだろう。まだ用途の決まっていないこの口座は、立替金受取専用でもいいのかもしれない。

旅の翌日は菜の花のパスタを作りました。レシピはこちら。

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