ワニは室温で雄と雌を産み分け、ヒトは体温で察知する
「ワニのオスとメスは、卵が孵化する時の温度で決まり、そのボーダーは33度」だと知ったのは、リンガーハットで皿うどん食べている時だった。
大学の友人からその情報を聞き、皿うどんの餡でやけどしそうになりながら、声を出した。
「うせやん!」
友人は「ほんとですやん」と言い、「孵化する時の室温が32度ならオス、34度ならメスですやん」と続け、ちゃんぽんをすすった。
ぼくは、「もし、本当にそうならよ、そのことを知ったほかの生物が、全部のワニを32度以下の場所に連れていけば、オスだけになって、ワニ、簡単に絶滅させられるやん」と言い返して、柚子胡椒を皿に付けた。
それに対し、友人は、「いや、もし、人間含め、すべてのワニをそんな場所に連れていけるやつがおるとしたら、その場で撲殺でもして、連れいてくより簡単に、ワニ絶滅させられますやん」と言って、餃子にかぶりついた。
生き物の生態はこんなに複雑なのに、オス・メスの産み分けがそんな簡単に決まっていいのかという、謎の憤りを感じたまま、リンガーハットを後にした。
それから15年。
一人目の子どもから数年経ち、二人目の子どもを考え始めていた頃、妻が手帳になにか記していた。
「何書いてんの?」
そう聞くと、一言。
「体温つけてんの」。
体温つけてんの?
何のことかよくわからなかったが、「なんで体温つけてんの?」とは聞かなかった。
なんだか、聞かないほうがいいような気がした。
自分の部屋に戻り、パソコンを開いて、グーグル先生に聞いてみた。
「女性 体温 つける なぜ」
「先生」はやさしく、「体温を測ることで排卵の周期がわかり、妊娠に役立つのですよ」と教えてくれた。
体温で、妊娠のしやすさがわかる・・・?!
僕は驚いた。
体温が妊娠と関わるなんて、「ワニとほぼかわらんやん!」と。
そして、「先生」は、恐ろしい事実として、「排卵日とのタイミングを利用することで、「男児」と「女児」を産み分けることも可能と言われています」とも、教えてくれた。
「医学的な根拠は薄いですが、排卵日当日に合わせれば男児、排卵日2〜3日前なら女児の可能性が高いとも言われてます」
え・・・。う、うせやん・・・。
それって、・・・「ワニとほぼ一緒やん!」
「孵化時の室温」と「排卵日からの時間」という違いはあれど、オス・メスの違いがそんな些細かつ簡単なことで変わってしまうなんて!
さすがに驚いたが、そこで知り得た事実は妻には話すまいと決めた。
もし言ってしまえば、「知ってるよ」と言われるのがおちだし、そもそも、「そんな基本的なことも知らんと一人目を産んだのか」と言われてしまうかもしれないから。
子どもが欲しくてもできないと悩む人がこんなにいる世界で、この単純な生殖の一側面に、なんだか目が眩む思いがした。
