自分の心理的な弱点や性格特性を科学的に理解し、それに適合したトレード手法を規律正しく実行する:ジェイソン・ウィリアムズ『トレーダーのメンタルエッジ:自分の性格に合うトレード手法の見つけ方』 | 株を勉強して半年で100銘柄買ったら、人生は変わるのか?
この記事を開いてくださりありがとうございます。「この半年で100銘柄の株を実際に買う」という実験を続けている投資家の"Tanabot"です。
投資をはじめようと決意したとき、私たちはまず何をするだろうか。
本屋のビジネス書コーナーへ走り、チャートの読み方や企業の財務諸表のめくり方を調べるのが一般的かもしれない。私もそうだった。数冊の本を読み漁り、スクリーニングの条件を決め、割安だと思われる企業の株を買い進めた。最初の数銘柄までは、知的なゲームを楽しんでいるような高揚感があった。
しかし、20銘柄、50銘柄とポートフォリオが増えていくにつれ、妙な違和感が胸の奥に澱のように溜まり始めた。株価が上がれば「もっと買っておけばよかった」と悔やみ、下がれば「なぜ見落としたのか」と自分を責める。画面の向こうにあるのはただの数字のはずなのに、私の感情はまるで嵐のなかの小舟のように激しく揺さぶられていた。
そのとき気づいたのだ。私は市場と戦っているのではなく、自分のなかにいる「見知らぬ同居人」と戦っているのではないか、と。
そんなときに出会ったのが、ジェイソン・ウィリアムズの『トレーダーのメンタルエッジ』という一冊だった。精神科医であり、伝説的なトレーダーを父に持つ著者が遺した言葉は、テクニカル分析の教科書よりも深く、私の胸に突き刺さった。
この本が教えてくれたのは、きわめてシンプルな、しかし残酷な事実である。市場で生き残るための唯一のエッジ(優位性)は、自分の心理的な弱点や性格を科学的に理解し、それに適合した手法を選ぶことにある。
どれほど優れた投資理論も、それを実行する人間の器に合っていなければ、ただの絵に描いた餅にすぎない。100銘柄を買い集めるという旅の途中で、私がこの本から学び、そして自分の血肉としていった「自分自身との付き合い方」について、少しお話ししてみたい。
なぜ億万長者の真似をしても破産するのか?
私たちはつい、インターネットで見かけた「億り人」の投資手法を真似したくなる。あの人がこの手法で成功したのだから、自分も同じようにやれば資産が増えるはずだ、と。しかし、それは他人のサイズで作られたオーダーメイドのスーツを、目をつぶって着るようなものではないだろうか。
袖が長すぎて動きにくかったり、逆に窮屈すぎて息ができなかったりする。投資の世界における「サイズ」とは、すなわちその人の性格(パーソナリティ)のことである。
本書の中で著者は、まず感情の重要性を説く。そしてどんなに勝率の高いシステムであっても、個人の性格に合致していなければ必ず崩壊すると指摘している。人間の精神は、自分に合わないストレスを長期にわたって受け流せるほど頑丈にはできていないとしているのだ。
感情(またの名を「直感」「感覚」)は非常に重要で、無視してよいものではまったくない。自分の生の感情をどのように認識し、読み解き、管理すれば強みとして使えるのかということは、トレードの成功において非常に重要なのである。
私が投資を始めた頃、ある企業の株価が急落したことがあった。業績や指標から見れば、一時的な下落であり、むしろ買い増しのチャンスであるはずだった。しかし、私の心は強烈な不安に支配され、結局、夜も眠れずに翌朝の寄付きで損切りをしてしまった。
その企業は数週間後、何事もなかったかのように元の株価に戻り、さらに高値を更新していった。私は自分の愚かさを呪ったが、本当に呪うべきは、自分の「不安を感じやすい性格」を無視したポジションの取り方にあったのだ。
他人の成功体験は、エンターテインメントとしては一流だが、投資のガイドラインとしては三流かもしれない。自分にとっての適正なリスクや、心地よい保有期間は、他人のブログには絶対に書かれていない。まずは自分の性格という、世界で最も予測不能なバイオハザードを観察することから始めるべきではないだろうか。
心理テストが暴く、投資家としてのあなたの正体
本書の最もユニークな点は、現代心理学で信頼されている「改正NEO性格検査」「五因子モデル」を用いて、投資家の内面を解剖していくアプローチにある。投資に必要なのは、直感や度胸ではなく、徹底的な自己分析なのだという。
特に面白かったのは、「神経症傾向」という指標である。
神経症傾向とは、簡単に言えば「不安やストレスの感じやすさ」だ。これが高い人は、日々の株価のノイズに過剰に反応してしまう傾向がある。毎分ごとにスマホの画面をチェックし、一喜一憂している人は、おそらくこの傾向が高いのだろう。
素晴らしいトレーダーたちも、期待したほど冷静沈着ではなかった。彼らは、神経症傾向が高くてベスビオ山のように爆発するタイプでもなかったが、感情が最も安定しているタイプでもなかった。
私の場合はどうだったか。自己分析をしてみると、神経症傾向が高いという結果が出た。つまり、放っておくと小さな値動きにパニックを起こす可能性が高い。
この事実に気づいたとき、私はこれからのバーベル戦略の10銘柄の厳しさに気づいた。値動きの激しい新興企業の株や、レバレッジをかけた取引は、私にとって毒薬でしかない。
自分を「意志の強い人間」だと信じるのは、砂漠の真ん中でオアシスの幻影を追いかけるようなものだ。私たちは、自分が思っている以上に脆く、不完全である。だからこそ、心理テストという冷徹な鏡を使って、自分の醜さや弱さを直視する必要があるのではないだろうか。
一回も負けたくないという病が破滅に導く
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