眺める中庭から、過ごしたくなる中庭へ
三鷹市の戸建て住宅で、中庭に木目調タイルを張らせていただきました。
施工が終わった時点でも、落ち着きのある中庭に仕上がっていました。

その後、植栽が入った写真を見たとき、
空間がもう一段完成したように感じました。
葉の間から光が差し込み、
タイルの上に影が落ちる。
夏の日差しの中なのに、
どこか涼しげに見えます。
木目調タイルのやわらかな表情と植物の緑が重なり、中庭全体に静かな心地よさが生まれていました。

木目調タイルの魅力は、見た目だけではありません。
中庭では、植栽への水やりをします。
土がこぼれたり、雨によって泥汚れが付いたり、落ち葉がたまったりすることもあります。
そうした場所では、床材の美しさと同じくらい、手入れのしやすさが大切です。
タイルは水や泥汚れに強く、汚れたときにも洗い流しやすい素材です。
天然木のように腐食したり、ささくれが生じたりすることもありません。定期的な塗装が基本的に必要ないことも、屋外で使ううえでの利点です。
木の温かみを感じながら、タイルの耐久性を生かせる。
そこに、木目調タイルの大きな魅力があります。
割付は、見た目だけで決めていません
今回の施工では、タイルの割付にも理由があります。
使用したような細長いタイルは、製品の特性として、わずかな反りを持っていることがあります。
そのため、隣り合うタイルを半分ずつずらす一般的な馬踏み目地にすると、反りの大きい中央部分と、隣のタイルの端部が重なることになります。
すると、タイル同士に高さの差が生まれ、床の不陸や段差が目立ちやすくなります。
見た目だけでなく、歩いたときの感触にも影響するため、長物タイルでは割付に注意が必要です。
300ミリずらしも検討しました
反りによる段差を抑える方法として、300ミリずつずらす馬踏み目地も考えました。
ただ、今回のテラスは横方向に広く、タイル自体も細長い形状です。
一定の寸法でずらし続けると、広い床面の中で目地の位置が繰り返され、特定の場所に縦目地の流れが集中して見える可能性がありました。
そこで今回は、目地の位置を少しずつ変える「ずらし目地」で施工しています。


タイルの反りによる段差を抑えながら、広い床面を見たときにも目地が一か所へ偏らないようにするためです。
近くで見たときに段差が気にならないこと。
離れて見たときに目地の流れが自然に見えること。
その両方を考えた結果が、今回の割付です。
一枚ずつ違うから、全体を見る
木目調タイルは、同じ製品でも一枚ずつ表情が異なります。
明るいもの。
少し濃いもの。
木目がはっきりしたもの。
比較的おとなしいもの。
その違いを確認せずに並べると、同じような色が一部に集まり、床全体が不自然に見えることがあります。
施工時には、一枚ずつ色や模様を見ながら、濃淡が自然に混ざるように配置を調整しました。
近くでは、一枚ごとの木目を楽しめる。
少し離れると、床全体が一つの自然な面として見える。
タイル工事では、目の前の一枚を見ることと、空間全体を見ることの両方が必要だと感じます。
タイルデッキが変えるのは、床だけではない
中庭は、室内から眺めるだけの場所になることがあります。
しかし、床が整うと、使い方が変わります。
植物の手入れをする。
椅子を置いて休む。
朝の光や、葉が揺れる様子を眺める。
家の中にいながら、少しだけ外の空気を感じる。
タイルデッキにすることで、中庭は「眺める場所」から「過ごしたくなる場所」へ変わっていきます。

タイルの良さは、丈夫で汚れに強いことだけではありません。
その場所を使いやすくし、そこで過ごす時間を増やせること。
そこにも、タイルの価値があると思っています。
今回の中庭を見て、施工中に考えていた割付や色の配置が、植栽や光とともに一つの景色になっていることを感じました。
タイルを張るときに見ているのは、目の前の一枚だけではありません。
完成したあと、その場所に何が置かれ、どのように使われるのか。
近くで見たときに美しいか。
離れて見たときに、空間として自然に見えるか。
そこまで想像することが、タイルで空間をつくるということなのだと思います。
ありがとうございました。

