若き日のホーチミンも身を潜めた街。ウドンターニーの「歴史教育センター」で知るベトナム系住民との深い関わり
TALAT編集部の西尾です。
現在、新雑誌『TALAT』の取材でタイ東北部(イサーン)の都市、ウドンターニーへ来ています。
滞在期間は5日間ほど
今回の取材テーマは「現地ならではの食」なのですが、街を巡る中でどうしても気になって仕方がなかった場所がありました。
それが市内中心部から車で20分ほどの場所にある「ホーチミン歴史教育センター」です。
ウドンターニーの街を歩いていると、本格的なベトナム料理店がたくさんあることに気づきます。
街中の食堂や屋台では、米粉の生麺を使った麺料理「カオピアック」、蒸し春巻きの「パークモー」、薄いせんべいのような「カオクリアップ」など、ベトナム由来の食文化が日常に溶け込んでいて、今回の取材ではそれらの料理を深掘りし、いろんな店を紹介する予定です。



これは、かつてフランスの植民地支配や戦争から逃れるため、多くのベトナム系住民(越僑)がこのタイ東北部へ移住してきた歴史があるためです。
そうしたベトナム人コミュニティが形成されていたこの地に身を潜め、人々の支援を受けながら独立運動の基盤を作ったのが、後に「ベトナム建国の父」と呼ばれるホー・チ・ミンでした。
食の背景を探るうち、「なぜタイにこれほどベトナムの文化が根付いているのか」「ホー・チ・ミンとタイの間にはどんな関係性があったのか」をもっと知りたくなり、足を延ばしてみることにしたんです。
タイとベトナムの友情の証「ホーチミン歴史教育センター」とは
この歴史教育センターは、ホー・チ・ミン潜伏期の足跡を後世に伝え、タイとベトナム両国の友好関係を象徴する場として誕生しました。


かつてフランスの植民地支配下にあったベトナムの独立を目指し、世界中を渡り歩いていた若き日のホー・チ・ミンは、1928年から1929年にかけてタイに潜伏。
このウドンターニーの地に身を潜めながら、同胞たちのコミュニティに支えられ、独立運動の基盤作りに励んでいたと言います。
敷地に到着すると、ここで働く男性スタッフが「案内するよ」と声をかけてくれました。

詳しく話を聞くと、彼はベトナム人の父親を持つ越僑2世の方。
彼によると、この施設は15年ほど前、銀行の力を借りて資金や協力を得ながら建設・設立されたのだそうです。
彼のようなルーツを持つ地元の人々の思いと協力があったからこそ、ホー・チ・ミンが実際に暮らし、運動を行っていた敷地が綺麗に整備され、当時の住居の復元模型や展示館を備えた歴史施設として形になったんでしょう。
敷地内には彼が暮らした高床式の素朴な家や農具が再現されているほか、展示館では彼の生涯と両国の深い関わりを示す資料を見ることができます。
展示資料から読み解く「タイでのホー・チ・ミン」と革命の歩み
案内していただきながら巡った展示パネルには、彼がタイでどのように過ごし、どのような足跡を残したのかを示す貴重な写真と解説(タイ語・ベトナム語・英語)が並んでいます。

1. タイ各地を潜伏した「1928年〜1930年」の足跡
資料によると、ホー・チ・ミンは1928年7月にバンコクのクロントーイ港からタイに入国。
その後、ウドンターニー県ノンオー村をはじめ、サコンナコーン県やナコーンパノム県などを巡回しました。
タイのイサーン地方はベトナム国境に近く、多くのベトナム系住民が暮らしていたため、革命の支援組織を広げる格好の拠点だったんです。
彼はこの地で農作業を手伝いながら、現地の人々にタイ語・ベトナム語・英語などを教え、密かに独立運動の仲間を増やしていったと言われています。
2. 独立への道と「ディエンビエンフーの戦い」
展示では、タイでの潜伏期だけでなく、その後のベトナム独立に至る歴史も紹介されています。

1945年「八月革命」と独立宣言: 第二次世界大戦末期、ベトミン(ベトナム独立同盟)を率いて立ち上がり、9月2日にハノイでベトナム民主共和国の独立を宣言。
対仏抗戦(第一次インドシナ戦争): ジャングル(ベトバク拠点)で馬に乗りながら指揮を執り続けた様子が写真に残されています。
1953年12月: 軍指導者たちと「ディエンビエンフー作戦」の発動を決定。
1954年5月7日: 58日間に及ぶ激闘の末、ディエンビエンフーでフランス軍司令部を攻略し、完全独立への決定的な勝利を収めました。
彼の没後、悲願だった1975年の南北統一(サイゴン解放)が達成され、ハノイには「ホーチミン廟」が建設されましたが、その原点とも言える熱量の足跡が、ここタイのウドンターニーにしっかりと刻まれています。
おわりに
5日間のウドンターニー滞在の中で、「現地ならではの食」の背景にある歴史の一端に触れることができ、施設で案内してくれたスタッフの方のおかげで、ホー・チ・ミンとタイの関係性についても理解を深めることができました。
ウドンターニーで味わうカオピアックやパークモーなどの現地ならではの料理。
その深い背景にあるストーリーを知ると、旅の味わいも一層深まります。
ウドンターニー県の食の魅力については、新雑誌『TALAT』の中でたっぷり深く紹介する予定ですので、どうぞお楽しみに!

