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【ロラン・ギャロに響いた男泣きと、超一流が贈った「ふさわしい初優勝」の意味】


グランドスラム)全仏オープン

男子シングルスの決勝…いやぁもう…なんというか…試合の内容がどうこう言うよりも、まず今回はお祝いを言いたい!

ズベレフが悲願のグランドスラム初優勝を遂げました!
おめでとうございます!!
正直僕は無理かもと思ってたけど、やっと優勝できましたね!

スコアはフルセットにもつれ込む 6-1, 4-6, 6-4, 6-7 (5-7), 6-1 という大接戦!
コボッリのスマッシュがアウトして優勝が決まった瞬間に、ズベレフはコートに倒れ込み、仰向けになりながら男泣き…それにつられてこっちまでホロリとしてしまいましたよ!

準優勝のコボッリも立派なプレイぶりでした。
第1セットは初の決勝から来る緊張で明らかに硬いプレイぶり。あっという間にズベレフに6-1で奪われてしまいますが、ここで逆に腹が座ったのでしょうね。

「もう良い。勝ち負けよりも自分のテニスを思い切りやるだけだ!」
…という感じで、武器であるフォアの強打をいけると思ったときには思い切り強打し、見事にそれが決まり始めます。まさにあたって砕けろの精神。ミスもしますが積極性を失わず、大事なところでネットに出たり、ドロップショットも決まるようになって第2セットはコボッリが取る。

しかし自力でまさるズベレフ。
今までの「相手のミスを待つ」イメージを払拭するような、積極的なプレイが目立ちます。バックハンドを中心に、しっかり強いボールを打ちながらも安全な選択をして、ボールの威力とミスの少なさでコボッリをジワジワと追い詰めて第3セットはズベレフ。

そして第4セットでのコボッリのプレイが、本当に素晴らしかったと思います!
ズベレフのサーブはこの日非常に出来が良く、試合を通して8割以上のイン率でしたが、それを2回もブレイクしたことは本当に素晴らしい! バックハンドはつなぎに徹し、フォアで余裕が少しでも作れれば即強打! 返ってきてもまた強打! そして意表をついたドロップ、といった展開が続き、観客の応援もコボッリ寄りの雰囲気に。必死にタイブレイクに持ち込み、第4セットを奪い返します。

そして勝負は運命のファイナルセットへ入りますが、どうもズベレフは糖尿病からくる体調管理に問題が出始めたようで、試合前半よりも動きに切れがくなります。それでも踏ん張り、回復を待ちながら試合している様子でした。

対するコボッリもここまでずっと全力でプレイし続け、極限の精神的緊張からか、足が痙攣し始めてミスが多くなってしまい…結果論ですが、このコボッリの痙攣がなければ、結果は違っていたのかもしれません。
ズベレフの揺さぶりについていけず、それほど難しくないスマッシュでも足がとまってミスを連発し、そのことがさらに緊張を強めてしまいました。

そしてズベレフには、今までの決勝の終盤で見えていた消極性や迷いのようなものがなかった事も、とても印象的でした。
コボッリの強打に体をつらそうにしながらも必死に食らいついた。
ロブで粘りスマッシュミスを引き出した。
ドロップショットも一度も諦めずに全力で追いかけて逆襲した。
無我夢中で拾い続け、僅かなチャンスには強打とネットプレイで攻撃し続ける姿は「ひたむき」という言葉でしか表現できないものでした。

そして最後のマッチポイントでも、諦めずに必死に上げたロブを――コボッリがスマッシュミスし、優勝を決めたのでした。

◆   ◇   ◆

ズベレフは4度目のグランドスラム決勝進出にして、ようやく初優勝を成し遂げたことになります。
そして過去のテニスの歴史を振り返ってみても、こうやって何度も悔しい思いをした後にようやく優勝を勝ち取って、素晴らしい成績を残したチャンピオンたちが何人もいた。そのことを、僕は脳裏に想い描きながら表彰式を観ていました。

――イワン・レンドル。
ボルグ、コナーズ、そして後輩のビランデルにも負けた悔しい経験を経て、全仏で初優勝を果たし、そこからの戦績はレジェンドとして申し分のない成績を残した。

――アンドレ・アガシ。
若くして全仏決勝に進出。当然優勝するものと期待されながら、伏兵のゴメスにまさかの敗退。そしてジュニア時代はアガシの影に隠れていたサンプラス、クーリエにも負けた悔しい経験を経て、ウィンブルドンで初優勝。ビッグサーバー全盛のこの時代、ベースラインプレイで芝のウィンブルドンを制する選手が出てくるとは誰も予想しなかったはずでした。

――ゴラン・イワニセビッチ。
190km/hのスライスサーブとそれを超えるフラットサーブでウィンブルドンで無敵を誇り、決勝に進出しながらアガシ、サンプラスに3連敗した後に怪我で低迷。ワイルドカードを貰った2001年のウィンブルドンでまさかの初優勝したのも感動的なものでした。

――アンディ・マレー。
ビッグ3全盛期に何度も決勝に進出しながらもフェデラー、ジョコビッチの壁を越えられずに4連敗。全イギリスの期待を背負ったウィンブルドン決勝でフェデラーに敗れ、負けた後のスピーチで言葉を詰まらせながら涙した。そしてその悔しさをバネに、同じ2012年、4週間後の同じコートで行われたロンドン五輪でフェデラーを圧倒して金メダルを獲得。その後の全米で初優勝を果たしたその姿も強く印象に残るものでした。

――ドミニク・ティーム。
全仏で2度ナダルに破れ、全豪でもジョコビッチに破れて3連敗。特に全盛期のクレーで無敵の存在だったナダルに対し、がっぷり四つで戦った激闘を覚えている人も多いのでは。そして2020年、コロナ禍で無観客の異様な雰囲気の全米決勝で、ズベレフを破り初優勝を遂げたことは記憶に新しいと思う。

今回の全仏でグランドスラム制覇を成し遂げたズベレフも、ティーム、そしてアルカラス、シナーに負けて3連敗した後の、初優勝だったのです。

あと一人。現役のプレイヤーでグランドスラム決勝で3連敗を経験しているプレイヤーがいるのです。
キャスパー・ルードがそれで、今回は若手のフォンセカの爆発力の前に敗退してしまいましたが、チャンピオンカップを掲げるズベレフを見て、彼もまた捲土重来を誓っていることだと思います。

◆   ◇   ◆

話をズベレフに戻しますが、彼のこれまでのキャリアを振り返りながら、かつて苦労の末にグランドスラム制覇をなし得たチャンピオン達を思うと、ズベレフの成し遂げたこの優勝は称賛に値するのは間違いないと改めて思うのですよ。

幼少期から糖尿病を抱え医師から、
「アスリートとして世界で活躍するのは無理だ」
…とまで言われ、でもその言葉に負けずに自分の体と向き合い続けた。
チームと一緒にたゆまぬ努力を続けてきたことはテニスファンなら分かっているはず。

今まで何度も届かなかった優勝までの道のり。
そして今年のパリの異常な暑さ。

その高い壁を、一つ一つ積み重ね、やっと乗り越えるだけの高さにズベレフは到達した事は、本当に素晴らしいと思う。

でも試合の結果が出た後、SNSで、
「去年の試合の後、今年の決勝を見るとあまりにもつまらなく感じる」
「シナーとアルカラスに比べると、明らかにレベルが低い決勝だった」
…などとケチを付けるコメントも多数見かけて悲しくなったのです。

ズベレフのこれまでの悔しさや悲しさ、大怪我を乗り越えてきた努力。
そういった試合だけでは見えない部分を理解したうえでも、そんなことを言えるのかと問いたくなります。

確かに今回はドロー運に恵まれた部分もあったと思うけれど、運だけで勝てるほどプロの世界は甘くない。まずあれだけのパフォーマンスが出来る土台に立って、その上でズベレフ以上の結果を持っている。そういう立場の人間だけが、もしかしたらそんな言葉を口にできるのかもしれない。でもそういう一流の選手たちは、決してそんなことを言わないものです。

引退したナダルが、ズベレフの優勝後にいち早くお祝いのコメントを出していました。

「おめでとう!これまでのハードワークと粘り強さが報われましたね。心からふさわしい初優勝だと思います!」

…超一流は、同じ超一流を知るのでしょうね。
短いけれど心のこもった、温かい言葉だと思う。

そして心無いコメントを書いている人は、ナダルのこの言葉も否定することになる。
そんなことを出来る立場の人が、果たしてこの世界にいるのだろうか。
それだけは一言申し上げておきたかった、というのが正直な気持ちです。

世界は、頑張って凄いことを成し遂げた人が素直に称賛される優しいものであるべきだ。
そう感じつつ、今回は筆を置きたいと思います。

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