01 アマゾンが追う電源主権
マグニフィセント7(M7)各社が、自社の命運を握る「電子・電気」を奪い合う時代が幕を開けました。本シリーズ「パワーハンティング」では、巨大テック企業がどのようにエネルギーの主権を握ろうとしているのか、その最前線を追います。記念すべき第1回は、世界最大のクラウド王者であり、今や「エネルギー企業」としての顔も持ち始めたアマゾン(Amazon/AWS)の、2026年初頭における最新動向を解説します。
01:アマゾンの電源確保戦略
AI革命の進展とともに、データセンター(DC)は単なる「計算拠点」から「巨大な電力消費体」へと変貌しました。アマゾンはこの変化をいち早く察知し、2024年までに「100%再生可能エネルギー利用」を前倒しで達成。しかし、彼らの真の狙いはその先にあります。24時間365日、一瞬の途切れも許されないAIの計算負荷を支えるため、彼らは今、「次世代原子力」と「垂直統合型エネルギーインフラ」の構築へと舵を切っています。
1. 概況:100%再エネの「勝利」と、ベースロードへの「飢餓」
アマゾンは2024年までに、自社の全事業で使用する電力を100%再生可能エネルギー(太陽光・風力など)で賄うという目標を達成しました。しかし、生成AIの爆発的普及はこの「達成感」を即座に打ち消しました。太陽光や風力は天候に左右される「間欠性」という弱点を持ち、1GW(原発1基分)級の電力を常時消費する最新AI DCの要求には応えきれなくなったのです。
現在のアマゾンの戦略は、従来の「証書を買って再エネを網羅する」段階から、「物理的にDCの隣で、24時間稼働するカーボンフリー電源(CFE)を確保する」段階へ移行しています。2025年から2026年にかけて、彼らはSMR(小型モジュール炉)への巨額投資を行い、送電網(グリッド)を介さない直接給電(ビハインド・ザ・メーター)の実現に全力を注いでいます。
2. 注目すべきプロジェクト、重要パートナー
アマゾンの「パワーハンティング」を象徴する、2026年時点での最重要トピックは以下の3軸です。
① 「カスケード先進エネルギー施設(Cascade)」とX-energy
ワシントン州で推進されている「カスケード」プロジェクトは、アマゾンの原子力シフトの旗印です。
パートナー: X-energy(次世代原子炉開発)、Energy Northwest(公営電力事業体)。
内容: 高温ガス炉「Xe-100」を最大12基設置し、最終的に960MWの出力を確保する計画。
最新動向: 2025年後半に運用訓練用シミュレーターが稼働。2026年初頭現在、SMRの商用化に向けたサプライチェーン構築のため、韓国の斗山エナビリティ(Doosan Enerbility)や韓国水力原子力(KHNP)とも「チーム・コリア」として連携を強化しています。
② サスケハナ・原子力DCキャンパスの拡張と規制の壁
ペンシルベニア州のサスケハナ原子力発電所に隣接するDCの買収(タレン・エナジー社との提携)は、業界に衝撃を与えました。
重要性: 既存の原発から直接電力を引き込むことで、送電ロスと送電網の混雑を回避。
現状: 2025年、米連邦エネルギー規制委員会(FERC)が「一般世帯への負担増」を懸念し一部計画を差し止めましたが、アマゾンは法廷闘争と並行して、グリッドを経由しつつも実質的な専用電源として機能させる新スキームを構築中です。
③ サプライチェーンの川上へ:Rio Tintoとの提携
2026年1月、アマゾンは資源大手Rio Tintoから「低炭素銅」を調達する2年間の合意を発表しました。
狙い: DCの送電ケーブル、変圧器、さらにはAIチップのヒートシンクに不可欠な「銅」を確保すること。電力そのものだけでなく、電力を運ぶための「素材」から抑えにかかる徹底した垂直統合戦略です。
3. 電源確保関係の財務数値
アマゾンのエネルギーへの執着は、その異常なまでの設備投資額(CapEx)に表れています。
インフラ設備投資額(2025年Q3実績): 四半期で約314億ドル(約4.7兆円)。この大部分がAWSのデータセンター拡張と、それに伴う電力インフラ整備に投じられています。
原子力直接投資額: 2025年10月時点で、SMR開発支援に5億ドル(約750億円)以上の投資を表明。これは一過性のPPA(電力購入契約)ではなく、技術開発そのものを買い支える「開発資金」としての性質を持ちます。
再エネ・ポートフォリオ: 全世界で500以上のプロジェクトを展開し、確保済みの容量は28GW超。これは中規模国家の総発電容量に匹敵する規模です。
4. 特記事項:グリッド・ナショナリズムと「電源の主権」
アマゾンの戦略を語る上で欠かせないキーワードが「電源の主権(Power Sovereignty)」です。
① 脱・既存網への挑戦: 従来の電力網は老朽化し、AIが必要とする膨大な負荷に耐えられません。アマゾンは自ら発電所を建て、あるいは買い取り、公的な送電網に依存しない「自家用エネルギー帝国」を築こうとしています。
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