イザナギASIの研究 01 AI投資の波に乗った孫さん、製造業に意欲
2026年、世界のAIテック業界は一つの臨界点を迎えています。かつて「世界最大のテック投資家」として知られた孫正義氏が率いるソフトバンクグループ(SBG)は、投資活動をASI実現のためのエンジンへと昇華させ、「ASI(人工超知能)の製造者」へとその姿を劇的に変貌させつつあります。その中軸となっているのが、総額1千億ドル(約15兆円)規模の超弩級プロジェクト「イザナギ(Project Izanagi)」です。本連載の第1回では、孫氏がなぜ「投資」という枠を超え、あえて熾烈な競争が進行する「製造」の道を選んだのか、その根底にある洞察内容と、2026年に世に出る「イザナギ」チップが持つ意味を解き明かします。
01:脱・投資会社: 孫正義の開眼と製造業シフト
目次
1.「金魚鉢の金魚」からの脱却
2. 孫正義の開眼:AIは「物理」に宿る
3.「イザナギプロジェクト」の胎動
4. 2026年:投資家から「製造者」への重心シフト
5. CUDAを越える「垂直統合」の勝算
6. 図表(2点)
1. 「金魚鉢の金魚」からの脱却
孫正義氏が2024年半ばから口にし始めた、ある「自己嫌悪」に近い感情がありました。彼は「自分はこれまで、他人の成功に相乗りするだけの投資家だったのではないか」と自問自答を繰り返していました。エヌビディアのジェンスン・フアン氏やOpenAIのサム・アルトマン氏がAIの歴史を書き換える主役としてスポットライトを浴びる中、孫氏は自身の立ち位置を「金魚鉢の中から外を眺める金魚」にたとえました。
投資家としてのSBGは、アリババへの投資で巨万の富を築き、ビジョン・ファンド*を通じて数多のユニコーンを育てました。しかし、資本を配分するだけの「資本家」の立場では、来るべきASI(人工超知能)の時代に、人類の運命を左右する「ハンドル」を握ることはできない。この痛烈な自覚が、彼を製造・インフラ構築という実業の世界へ開眼させたのです。
*ビジョン・ファンド: 2023年は金利上昇とテック株安で巨額赤字に沈みましたが、2024年以降はArm上場とAI旋風により劇的なV字回復を果たしました。SVF1の保有銘柄がAI銘柄として再評価され、含み益が大幅に改善。財務体質が劇的に健全化したことで、15兆円規模の「イザナギ」を支える巨大な軍資金の確保に成功しました。この投資事業の再生が、孫氏が「AI製造者」へ転身するための強固な財務的後ろ盾となっています。
2. 孫正義の開眼:AIは「物理」に宿る
2025年、孫氏はある種の悟り・確信に到達しました。それは「ASIはソフトウェアだけでは完成しない」という事実です。どれほど高度なアルゴリズムがあっても、それを支える半導体の物理的限界、そして指数関数的に増大する電力消費という「壁」に突き当たります。
NvidiaのGPUが市場を席巻する中、孫氏はArmを核とした「垂直統合」に活路を見出します。投資家として他社の株を買うのではなく、Armのアーキテクチャをベースに、自社でASI専用のチップを設計し、自社でデータセンターを建て、自社でエネルギー供給を確保する。この「製造業へのシフト」こそが、孫氏が導き出した、エヌビディアのCUDA(クーダ)の牙城を崩し、ひいてはASIの物理的な限界を突破する唯一の解だったのです。
3.「イザナギプロジェクト」の胎動
日本神話の国生みの神の名を冠した「イザナギ*」は、単なるチップ開発プロジェクトではありません。それは、ASIを実現するための「脳・神経・筋肉」をすべて自前で揃える、超巨大な産業創出計画です。
*プロジェクト名「イザナギ」は、日本神話において混沌から日本列島を生み出した国生みの神「伊邪那岐命(イザナギノミコト)」に由来します。孫正義氏がこの名を冠した背景には、投資家として他者の成功を支える側から、自らの手でASI(人工超知能)という「新たな世界」を創り出す「造物主(製造者)」へと転身する不退転の決意が込められています。Armを核とした半導体・エネルギー・インフラを垂直統合し、知能の源泉をゼロから生み出すプロセスは、まさにAI時代の「国生み」に他なりません。15兆円を投じ、人類の運命を左右する知能を自ら「製造」するという、孫氏の壮大な野心と日本発の革命への自負を象徴するネーミングです。
2026年、ついにそのベールを脱ぐ「イザナギ」のチップは、従来のGPUとは全く異なるアプローチを取っています。エヌビディアが「グラフィックス処理の延長」として計算能力を拡張してきたのに対し、イザナギ・チップは「ASIの推論と継続学習」に特化。Armの電力効率を極限まで活用し、既存のデータセンターの電力枠内で、従来の10倍以上の計算密度を実現することを目指しています。
4. 2026年:投資家から「製造者」への重心シフト
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