見出し画像

みゅとすの衝撃(S2-02):原則排除されたアンソロピックだが、連邦政府はMythosを幅広く使用中

この件はその後、結局、Mythosのリリースを原則止める、から一歩踏みだし、当局や金融機関にはある程度リリースし、ディフェンスに活用する方向にpivot(転回)しつつあります。あくまでも善意者連合を組んでいこうという方向です。この意味でのセキュリティは装備必須(mandatory)となるので、Mythos を有するアンソロピックや、同等の製品リスクをはらむ他の企業は、must needsを満たす特権的なプロバイダーになることを意味します。

アメリカ連邦政府におけるMythosの扱い

アメリカ連邦政府は、アンソロピックの「Claude Mythos(以下Mythos)」に対して複雑な対応を取っています。国防総省(Pentagon)はアンソロピック社全体を「供給網リスク(supply chain risk)」に指定し、原則として排除する方針を示しましたが、Mythosの高度な脆弱性発見・修正能力を国防・サイバー防御に活用する動きが並行して進んでいます

具体的には、国家安全保障局(NSA)がMythosを実際に使用しており、ペンタゴン内でも幅広い活用が報じられています。MythosはProject Glasswingという限定プログラムの下で、信頼できる組織に提供され、数千件のゼロデイ脆弱性(未知の深刻な欠陥)を特定・修正する実績を上げています。財務省もリスク評価のためアクセスを求め、連邦政府全体でサイバー防御強化のツールとして評価されています。

一方で、ホワイトハウスはMythosのさらなる拡大アクセスに慎重で、悪用リスクを懸念しています。アンソロピック自身が一般公開を控えた理由も、攻撃者側に悪用される可能性が高いためです。政府はこれを「国家安全保障の転換点」と位置づけ、公私連携を強化しつつ、ネットワークの強化(hardening)を急いでいます。事実として、排除方針と活用の両立という現実的な対応が取られている状況です。

日本の対応とメガバンクの動き

日本では、米国財務省などの警鐘に遅れて対応し、片山さつき金融担当大臣が2026年4月24日に日本銀行総裁や3メガバンク(三菱UFJ、三井住友、みずほ)幹部らと緊急会合を開きました。Mythosを「今そこにある危機」と表現し、金融システムへの影響を共有しています。

金融庁は5月12日に官民共同ワーキンググループ(WG)を正式設置し、36団体(メガバンク、日銀、JPX、楽天銀行、アンソロピック日本法人など)が参加。みずほFGのCISOが議長を務め、安全活用のガイドライン策定を進めています。3メガバンクは5月末頃にMythosへのアクセス権取得を目指し、専門チームを立ち上げて自社システムの脆弱性診断・改修に活用する方針です。場合によっては勘定系システムの一時停止も視野に入れた根本対策を検討しています。

この動きは、日米財務当局の連携(ベッセント米財務長官来日時の会合など)で加速しました。Mythosを攻撃ツールではなく、能動的サイバー防御の武器に転用する戦略です。「止めてでも守る」という従来の金融インフラのタブーを転換する大きな変化と言えます。

ここから先は

1,678字

Bマガジン

¥888 / 月

AIと電力エネルギー分野(AI&E)のキープレーヤーや重要テーマをケーススタディ形式で深掘りします。例えば以下のような連載投稿を行います(…

応援、どうぞよろしくお願いします。